top コラム考へるピント52 左側に気をつけろ(続々エックス)

考へるピント

52 左側に気をつけろ(続々エックス)

2024/10/28
上野修

MacでX(エックス)を見ようとしてアプリケーションを立ち上げると、「このアプリは旧バージョンのため利用できません。Xを引き続き、またできる限り快適にご利用いただくためにアプリを更新してください。」というアラートが出てくる。
 

その下に表示されている「今すぐ更新する」をクリックすると、今度は、「アップデートしましょう。機能向上のお知らせです。アップデートすると、すべての新機能をご利用いただけます。」というアラートが出てくる。
 

その下に表示されている「今すぐアップデート」をクリックすると、App Storeアプリが立ち上がり、「このデバイスには対応していません。互換性のあるデバイスの完全なリストをご覧ください。」というアラートが表示される。
 

なぜアップデートできないのだろうと、評価とレビューを見ると、アプリをアップデートしてログインしたらアカウントが凍結された、という低評価のレビューが並んでいる。
 

どうやら、8月にMac向けのバージョンが出たものの、バグがあった、というか、動作しないものであり、公開が停止されたままになっているようである。
 

立ち上げようとしたアプリをあらためて見てみると、なんとTwitterのままであった。このアプリは、2022年10月にTwitterの買収が完了し、2023年7月にブランド名称がXに正式変更されてからも、ずっと放置された末にようやくアップデートされたものの、不具合のため再度放置されているということだろう。
 

このTwitterのまま放置されているアプリも、きちんと動作するわけではなく、ハッシュタグやキーワード検索が機能しない。おそらくその他にも不具合はあるのだろう。他方、iPhoneのアプリはとっくにTwitterからXにアップデートされているわけで、パソコンの時代は終わりつつあることを感じる。
 

そのiPhoneのXアプリだが、立ち上げると、右側のタブが「フォロー中」、左側のタブが「おすすめ」となっている。「フォロー中」を見ているつもりが、「おすすめ」を見ているということがままある。
 

情報収集などの具体的な目的ではなく、なんとなく暇つぶしで見ることが多いので、別にどちらでもいいのである。適度にホウホウ、フムフムと納得しつつ、たまにイラッとするくらいがちょうどいい。
 

「フォロー中」のアルゴリズムはよくできていて、ホウホウ、フムフム、ホウホウ、フムフム、ホウホウ、イラッ、フムフム、ホウホウ、イラッ、イラッ、ホウホウ、フムフム、イラッくらいのバランスで感情を動かしてくれる。ちょっとしたタップなどによって、さらに私向きのストリームにチューニングされているのであろう。
 

流行ることもなかったが、それゆえに廃れることもなかった、メタ(Meta)が公開したXによく似たテキストベースのソーシャルメディア、Threads(スレッズ)の仕様も、右側のタブが「フォロー中」、左側のタブが「おすすめ」だった時期もあった(現在は「おすすめ」がデフォルトになっている)。
 

こちらの「おすすめ」は、フム?、え?、おお、イラッ、んー、んー、え?、うむ、あ……、くらいの感じで、これはこれでそれなりに読んでしまうバランスになっており、なかなか絶妙である。
 

こうしてThreadsをたまに見てしまう理由は、メタがInstagramやFacebookのタイムラインに、Threadsへのリンクを挟んでくるからでもある。さすがは巨大IT企業のメタ、といったところか。
 

リンクをタップしてつい見てしまう、ということでいえば、Facebookのリール、YouTubeショートといったショート動画も、ちょっとした中毒性がある。さすがにTikTokまで見たりはしないが、左側のタブをはじめ、さまざまなリンクに気をつけていないと、ちょっとした誤タップをきっかけに、どんどん指先から時間が吸い込まれていってしまう。
 

さて、こういったあれこれを見ているデバイスのiPhoneだが、例年どおり9月に新しいiPhone 16シリーズが発表、発売された。例年どおりカメラも進化していたが、例年とは違った新しい機能としてカメラコントロールが搭載されていた。
 

どこが新しいかというと、これがハードウェアのボタンであることである。簡単にいうと、露出や被写界深度やズームなどもコントロールできるシャッターだ。少し触ってみたが、いつの間にか背景のボケ具合を調整する被写界深度エフェクトが、被写界深度という名称で定着しつつあることに、いまさらながら複雑な感慨を覚えた。
 

それはそれとして、カメラコントロールボタンは定着していくのだろうか。ソフトウェアのアップデートによって使い勝手が向上していくハードウェアのボタンは、とてもよさそうなものにも思えるが、最近では、MacBook ProのTouch Barのように定着していくことなく廃止されたハードウェアもある。
 

だんだん話がずれてきたが、こうしてさまざまなものが、指と時間(とまなざし)を奪い合っている、という2024年秋の雑感である(と書いていたら、Xから、ポストを公開に設定している場合、ブロックしたアカウントでもポストを表示できるようになるという仕様変更が発表されたので付け加えておこう)。

 

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