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考へるピント

14 写真とは何か

2023/02/27
上野修

写真とは何か。


幾度となく繰り返されてきたこの問いに対する、言説という観点からの答えは、はっきりしている。写真と呼ばれているものが写真なのだ。
 

では今日、何が写真と呼ばれているのだろうか。
 

この問いにも、ある程度明確に答えることができるように思う。手元にあるiPhoneの「写真」というアプリを開き、そこに入っているものが写真なのである。
 

そこにあるのは、自分が撮った写真、シェアされた写真、スクリーンショットなどである。というと単純明快だが、では、「写真」というアプリに入るものと入らないものの違いはどこかと考ると、その境界線はそれほど単純ではないことがわかる。
 

この境界線が、見えないくらいに広がっていったり、あるいは、見えないくらいにぼやけていったとしたらどうだろう。つまり、なんでも写真と呼べてしまったり、写真と呼んでも呼ばなくても変わらないような状況が訪れたとしたらどうだろう。
 

——と、今回はこんな話を書いてみようと思ったのだが、ちょうどChatGPTが話題になっているので、ChatGPTに「写真とは何か」と聞いてみた。するとこんな答えが返ってきた。

 

写真とは、光を使って物体や景色などを撮影し、それを感光材料(フィルムやセンサーなど)に記録することで、その瞬間の映像を残す技術や作品のことを指します。写真は、視覚的な情報を伝える媒体として広く利用されています。また、記念撮影や美術作品としての価値も高く、様々な分野で活用されています。また、写真は、歴史や文化、風景、人物などの記録にも用いられ、社会的な意義を持つこともあります。近年では、デジタルカメラやスマートフォンの普及により、写真を簡単に撮影することができるようになり、ますます身近な存在となっています。

 

評判どおり、それらしい答えである。続けて「写真表現とは何か」と聞いてみる。

 

写真表現とは、写真を使用して、撮影者の感性やメッセージを表現することを指します。写真表現には、様々な手法やスタイルがあります。例えば、風景や建築物、ポートレートなどの被写体を自然な形で撮影する「ドキュメンタリー写真」、被写体を撮影してその美しさや情感を表現する「芸術写真」、撮影技術を駆使して独自の世界観を表現する「表現写真」などがあります。

写真表現は、撮影者が自分自身の考えや感情を写真を通じて表現することで、観る人に共感や感動を与えることがあります。また、写真表現は、社会的な問題や時代の変化を映し出し、社会的な意義を持つこともあります。写真家の作品は、芸術作品として鑑賞されるだけでなく、社会問題の啓発や、歴史的な資料としても活用されることがあります。

 

こちらも、なかなかそれらしい答えである。もう一度「写真とは何か」と聞いてみる。

 

写真とは、光を利用して、被写体の映像を感光材料に記録することで、その瞬間の映像を残す技術や作品のことを指します。写真は、現実に存在する物体や風景、人物などを、光を反射している状態を記録するため、目に見える情報を映像化することができます。

写真は、人々の日常生活や社会、文化、歴史、芸術など様々な分野で活用され、多くの人々にとって欠かせない存在となっています。また、近年では、デジタルカメラやスマートフォンの普及により、手軽に写真を撮影することができるようになり、ますます身近な存在となっています。写真は、その瞬間の記録としてだけでなく、芸術作品や、歴史的・文化的な資料としても重要な役割を果たしています。

 

微妙に言い回しを変えた表現が出てきた。このあたりは、なんともむず痒いようなリアリティがある。さらに「写真は芸術か」という、古くからの問いを投げかけてみた。

 

はい、写真は芸術の一つとして認められています。写真には、芸術的表現手法や技法が存在し、それを駆使して美的な作品を生み出すことができます。芸術とは、美を表現することを目的とした創造活動のことであり、写真においても、撮影者の感性やメッセージを写真を通じて表現することができます。

写真の芸術的な価値は、撮影された被写体の美しさや情感、風景や人物の捉え方、独自の世界観など、様々な要素が関係しています。また、写真は社会的な問題や時代の変化を映し出し、社会的な意義を持つこともあります。

一方で、写真が芸術であるかどうかについては、時代や文化、芸術の定義によっても異なる見解が存在するため、絶対的な答えはないと言えます。しかし、写真において芸術的な表現を追求し、美や感動を伝えることができるという点において、写真は芸術の一つであると言えるでしょう。

 

このようなそれらしい答えは、言説的な境界線がぼやけていく様子と、どこか似ている。などと、それらしいことを書いてみたくなるが、それよりも興味深いのは、ChatGPTをネタにこうしてそれらしいことを書くのは、どのくらい許容されるのか、ということかもしれない。
 

ここまでの原稿の半分以上はChatGPTが生成してくれたものだが、このような書き方は、許されるのだろうか。ChatGPTの答えがそれらしいだけに、それらしさが飽和するのもあっという間だろう。おそらく許されるのは話題になっている今のうちだけで、許されても、せいぜい一回だけではないだろうか。
 

今回は、さっそくその一回を使って、それらしく脱線してしまったようだ。
 

——ということで、写真とは何かという問いが導く言説的な境界線については、また別の機会に考えてみることにしよう。

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