W.ユージン・スミスを主人公にした映画『MINAMATA-ミナマタ-』をいつ見るか、ずっと迷っている。というのも、しばらく前にAmazon Prime Videoの見放題入りして、無料で見ることができる状態になっているからである。
映画は公開時に劇場で見るのが一番いいのはわかっているが、タイミングを逃してしまうことがある。昔なら、DVD化やレンタル解禁が次のタイミングになっただろう。現在は、契約している映画のサブスクリプションサービスに登場したときが、次のタイミングだろう。
ところが、タイミングといっても、サブスクリプションの見放題期間はけっこう長い。『MINAMATA-ミナマタ-』の場合、昨年8月に見放題入りして、まだ無料期間中だ。レンタルの場合は数日以内に見なければならなかったが、サブスクリプションの場合は、そのうち、そのうちと、先延ばしにしがちになるのである。
映画を劇場で見るよさは、スクリーンが大きい、集中できる、といった点以外に、ソーシャルメディアでのさまざまな感想、評価を読む前に見ることができることにあると思う。逆にいうと、サブスクリプションの見放題入りするころには、感想、評価がほぼ出尽くしたあとに見るので、それを確認するような見方になってしまうということでもある。
いま流行りのタイパ(タイムパフォーマンス)的には、どちらがいいのか。
面白そうな感想や、高い評価が多い映画を選べばタイパがよさそうだが、そのように考えるなら、長期的にはほとんどの映画が話題にならなくなるわけで、極端にいえば評価が定まったクラシックだけ見ればいいことになってしまう。
見たい映画はいち早く劇場で見て、感想、評価などは気にしないのが、存外タイパがいいのかもしれない。
そういった一般論は別として、『MINAMATA-ミナマタ-』を見るのを先延ばしにしているのには、ほかにも理由がある。
私がW.ユージン・スミスを知ったのは、1980年代初頭だったように思う。新宿西口の小田急グランドギャラリーで開催された展覧会を見た記憶があり、検索したところ、これは1982年の開催だった。業績を知ったのが先なのか、展覧会を見たのが先だったのか思い出せないが、フォト・エッセイの可能性を探った表現と生涯に興味を持ったのだった。
ところが、そのころ、いわゆるフォト・ジャーナリズムの黄金期はすでに過ぎ去っていた。W.ユージン・スミス自身が1978年に他界していたこともあり、1980年代の終わりには、すでに彼は歴史的な人物になりつつあったように思う。
いや、逆に、歴史的な人物になるには、まだ生々しすぎたのかもしれない。
1980年代という時代は、W.ユージン・スミスに限らず、多くの作家の位置付けが変わっていった時代である。いずれにせよ、そのなかでのW.ユージン・スミスの位置付けの変化が、私にはうまく飲み込めなかったということだったのだろう。
その感触はいまも残っている。おそらく映画を見たら、その感触は映像によって上書きされていくことだろう。それはどうなのだろう。
——どうなのだろうもなにも、こんなふうにうだうだと迷っている時間があれば、さっさと見てしまえばいいのだろうが。
見放題期間が終わりになるまで、ずっと迷い続けるのかもしれない。
ところで、いつ見るかずっと迷っているといえば、ゴジラもそうである。じつは私は、ゴジラの映画をなぜか一度も見たことがない。意思を持って決めたことはないので、ほんとうにたまたまなのだが、ゴジラの新作が登場するたびに、それに乗れない寂しさを感じている。こんなことになるなら少年時代に見ておけばよかったと思うが、まさに後悔先に立たずである。
と、そんなことを思っていたら、先日話題になっていた『ゴジラ-1.0』が、このゴールデンウィークに早くもAmazon Prime Videoの見放題入りするというニュースが目に入ってきた。しかも同時にゴジラ邦画実写全30作品も見放題になるという。
これを機に一気見すべきなのか、なにを先に見るべきなのか。まずは『MINAMATA-ミナマタ-』なのか。悩みはつきない。
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