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考へるピント

58 四文字言葉

2025/01/20
上野修

四文字言葉、といってもあっちの話ではなく、こっちの話、日本語の話である。
 

今年はじまった大河ドラマのタイトルは『べらぼう』で、「江戸のメディア王にまで成り上がった蔦重こと蔦屋重三郎の波乱万丈の物語」という内容も興味深いのだが、それはそれとして、今やっている朝ドラこと連続テレビ小説のタイトルは『おむすび』で、どちらもひらがな四文字である。
 

次の朝ドラのタイトルは『あんぱん』、次の次の朝ドラのタイトルが『ばけばけ』とのことなので、ひらがな四文字タイトルが続くことになる。前の前の朝ドラのタイトルは『らんまん』だったし、これは間違いなく、ひらがな四文字タイトル時代が到来している。
 

と、思ったのだが、もう少し遡ってみると、2000年以降の朝ドラだけでも、『まんてん』『だんだん』『おひさま』『ひよっこ』『まんぷく』『なつぞら』といったタイトルがあり、そもそも1963年度の第3作が『あかつき』、1965年度の第5作が『たまゆら』なので、朝ドラでは四文字タイトルはまったくめずらしくなかったようだ。
 

とはいえ、TBSラジオでは、2022年から『ふらっと』、2023年から『こねくと』と『えんがわ』という番組がスタートしており、やはりひらがな四文字タイトル時代を感じてしまうのだが、これはラジオリスナーだからであろうか。
 

ところで、写真表現でひらがな四文字タイトルといえば、やはり川内倫子の『うたたね』が突出しているだろう。2001年に出版されたこの写真集は、時代の変わり目を照らし出したのか、この写真集自体が時代の変わり目を作り出したのかわからないくらい影響力があったといえよう。内容はもとより、タイトルもまた、必然的に思えてしまうし、そう考えると、四文字タイトル時代を予言していたようにすら感じてしまう。
 

と、これだけでは、ちょっとまとまりすぎなので、いささか無理矢理ではあるが、四文字をカタカナにも拡大して、最近のできごとに触れてみたい。
 

昨年の12月16日に、昔の名前と化していた「ミクシィ」が、最新のソーシャルメディア「ミクシィ2」として突然復活、というか新登場した。一週間で登録者数が120万人を突破し、スタートダッシュには成功したようだ。しかし、注目されるのも早いが、忘れ去られるのも早いのがソーシャルメディアなので、今後どうなっていくのかは、まだまだわからない。
 

「ツイッター(Twitter)」が「エックス(X)」にブランド名が変更されたのは2023年7月。同月に競合サービスの「スレッズ(Threads)」が登場した。写真・動画系ソーシャルメディアの定番「インスタグラム(Instagram)」は略して「インスタ」だし、「ツイッター」も音引きしなければ「ツイッタ」なので、ソーシャルメディアといえばカタカナ四文字、というのは強引にすぎるというか、たんに日本語の略称としてカタカナ四文字は語呂がいいというだけのことかもしれない(「ツイッター」の代替として注目された「ブルースカイ(Bluesky)」がいまひとつ広まらないのはカタカナ四文字の略称がないからと考えるのは、こじつけが過ぎるだろうか)。
 

それにしても、遥か昔に思える元の「ミクシィ」のサービス開始が2004年だということを考えると、この20年は果たして長かったのか短かったのか。
 

その間、ぬくもり、よりそう、といった、やわらかなひらがな四文字が、ふんわりと広がり、いろいろな身体を包み込んでいったような気もするが、その実態はばらばらだったのだとすれば、こっちの四文字言葉も、あっちの四文字言葉に負けず劣らず尖ったものだったのかもしれない。

 

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