イーロン・マスクによるツイッターの買収は、昨年(2022年)4月から話題になっていて、紆余曲折を経て10月27日に買収が完了した。
今年(2023年)1月には、突然サードパーティー製アプリが使えなくなり、開発者規約を更新してサードパーティー製アプリを正式に禁止したことが発表された。古くからのツイッターのユーザーは、それぞれ愛用しているアプリがあるので、さぞかし問題になるだろうと思ったが、それほどでもなかったようだ。
その後、7月頭には、突然一日当たりの読み込みが制限され、新規のツイートが閲覧できないユーザーが続出した。そして、7月下旬には、前回書いたようにツイッターという名称がX(エックス)に変更された。
もうなにがあっても驚かないという雰囲気になりつつあるが、それでも、過去の画像が表示できないとか、ブロック機能を削除する予定だとかといった情報が出てくるたびに、驚きと諦めがじんわり広がっているように思える。
とはいえ、多くの人にとって、このようながっかり感を味わうのははじめてではないだろう。インターネットのコミュニケーション空間の栄枯盛衰もまた世の習いであって、パソコン通信時代の会議室から、インターネット時代のBBS、mixi、Myspace等々、その後どうなったのかわからないようなサービスがたくさんある。
かつては、某巨大掲示板で通じた2ちゃんねるも、権利関係の問題でいつの間にか5ちゃんねるになり、ツイッターが改変されたのと同じ今年7月に突然大手の専用ブラウザがサポートを終了してしまったが、こちらもほとんど話題にならなかったようだ。
写真共有サイト、ウェブアルバムと呼ばれるサービスもすっかりなくなってしまった。現在、写真関連のサービスといえばインスタグラム一強だが、共有やアルバムという概念とはちょっと違ったものだろう。
さて、ツイッターなき後、ユーザーはXについていくのだろうか、あるいは新天地を目指すのだろうか。
混乱の最中の7月上旬、インスタグラムやフェイスブックを運営するメタ(Meta)が、類似のテキストベースSNS、スレッズ(Threads)をリリースし、一瞬、移転先の本命かと思われたが、あっという間に忘れられてしまった感もある。一昨年(2021年)に、彗星のように現れ消えていった音声SNS、クラブハウス(Clubhouse)を思い起こすまでもなく、こうした現象もまたよくあることである。
魅力的なコミュニケーション空間を作り出すことは難しい。なぜなら、活気が生まれるのは、よくわからないけれど人が集いつつある、なんとなく面白そうな空間だからだ。完璧すぎてもいけないし、人為的に活気が作られていてもシラける。ツイッターのクローンのようなサービスで、うまくいったものがひとつもない理由がそこにある。
いうまでもなく、これはバーチャル空間でもリアル空間でも同じことだ。子どものころ、きちんと整備され管理された校庭ではなくて、わざわざ原っぱに行って遊んだのは、なにが起きるかわからないところが面白そうだったからだ。その原っぱが、突然廃材だらけになったり、有刺鉄線で囲まれてしまって遊べなくなることもよくあった。そうでなくても、やたらに独自ルールを作るリーダーが生まれたり、別のグループが占領してしまって、自然と行かなくなることも多かった。そんなときは、ウロウロしつつ、他の場所を探すだけだった。
要するに、コミュニケーション空間は自律的に機能しているときが一番魅力的だが、その自律性は長くは続かない、ということである。
もちろん、昔のリアル空間と、現在のバーチャル空間は同じではない。そこでの自律性も、根底的に変わっていることだろう。この自律性の夢が破れても、きっと次の自律性がある、という終わりなき自律性を夢見ることは、今日でも可能なのだろうか。
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