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考へるピント

18 レンズレス

2023/07/10
上野修

デジタル時代になって、一眼レフからレフが消え、ミラーレス一眼が生まれた。レスになったのはミラーだけでない。フィルムや現像もレスになっている。
 

ミラーレス一眼では、光学ファインダーもレスになっている。というか、電子ビューファインダー(EVF)が登場する前は、たんにファインダーと呼ばれていたわけで、電子ビューファインダーとは、はたして本当にファインダーなのかと思わなくもない。
 

デジタルカメラの後ろについているアレは、背面液晶、液晶モニターなどと呼ばれているが、はじめは撮影した画像の確認用で、アレで撮影するのは、ちょっと邪道だと思われていたように記憶している。
 

電子ビューファインダーというのは、ようするに覗けるアレのことである。
 

ファインダーの定義は知らないが、あれほど世界との関係がどうの、現実との関係がどうのとファインダーを軸に議論していたのに、電気仕掛けで現実をディスプレイに映したものを、ファインダーと呼んでしまっていいのだろうか。
 

などといっても、じっさいに定着してしまったものは仕方ないし、光学ファインダーは生の現実を見ているが、液晶は目の前にある世界や現実を映してない、ともいえないだろう。
 

一番の違いは、液晶の場合、撮影される画像そのものを見ていることである。デジタル化によって、ファインダーで見た現実と写真とのずれがどうのとか、そうした言説が一切成立しなくなってしまった。
 

こうして、カメラと呼んでいたものとその言説は、どんどん変化してきている。今後、大きな変化があるとすれば、どのような変化だろうか。
 

レスつながりで考えてみると、まず思いつくのが、レンズレスカメラである。
 

もしレンズレスが実現するとしたら、どのような方向性なのか。ひとつは、レンズはあるが、限りなく存在がわからない形だろう。現在のスマートフォンに内蔵されているカメラが目立たなくなったら、そうなるかもしれない。レンズの存在がわからないと、撮影時に指がかかったりしそうだが、複数内蔵しておいて、自動切り替えにすれば大丈夫だろう。
 

レンズのような光学的な物体ではないが、なんらかのセンサーのようなものがレンズの代わりになるという方向性も考えられる。レンズレス、という言葉を検索すると、レンズレスカメラの研究開発(2017年)や、レンズレスカメラの新たな画像再構成手法(2022年)などがヒットするのだが、それがこの方向なのかもしれない。が、ここで書いているのは、もちろんそうした専門的な話ではなく、言葉遊びのような空想なので、ごめんなさいしつつ、この方向の話は、ここでやめておこう。
 

別の方向性としては、最近注目されている、画像生成AIが考えられるかもしれない。画像生成AIは、かなり画期的なレンズレスなのではないだろうか。なにせ生成するのだから、レンズレスなだけでなく、シャッターレスだし、さらにカメラレスで、オールレス、フルレスである。
 

しかしこのようなカメラレスカメラ、フルレスカメラを、カメラと呼べるだろうか。難しいことは抜きにして、カメラ愛好者にとっての一番大きな問題は、それでは撮った気がしないということだろう。撮っていないのだから当然である。
 

カメラの外装、デザイン、ルックス、いわゆるガワは、思いのほか保守的で、なかなか変わらないが、内部はどんどん別物になっている。一眼レフのシンボルともいえる上部の突起は、ペンタプリズムのためのスペースだが、ミラーレス一眼になってそれが不要になっても、相変わらず突起部があるガワもある。
 

同じように、レンズのような突起がある従来のカメラのようなガワの、画像を生成するカメラのような物体を考えることはできるだろうか。夕暮れの富士山にこのカメラレスカメラを向けると、各種センサーでそれを検知して、夕暮れの富士山の画像を生成するというのは、現在の技術でも十分できてしまうのかもしれない。かなりナンセンスな行為なので、必要とされるかはわからないが。
 

こう空想してみると、カメラ愛好者にとってもっとも大切なのは、撮っているという気分なのかもしれない。画像生成AIは、この気分を生成してくれないのである。とすると、ポイントは、むしろシャッターレスカメラの実現にあるのかもしれない。引き続き次回は、レスな連想で、シャッターレスについて考えてみることにしよう。

 

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