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考へるピント

17 ミラーレス

2023/06/12
上野修

昨今のカメラ関係でレスが付く言葉といえば、ミラーレスだろう。経緯はともあれ、ミラーレス一眼という名称は、新鮮味を感じないいくらい、すっかり定着しているといえよう。
 

ミラーレス一眼のミラーレスとは、いうまでもなく、一眼レフのレフがないということだが、レフレスではなくて、ミラーレスというところがわかりにくい。カメラについているときはレフで、なくなるときにはミラーと呼び方が変わってしまうので、カメラになじみがない人は、このあたりでさっそく混乱するのではないだろうか。
 

また、一般的に、一眼レフという言葉は、レンズがひとつで鏡ありという字義どおりの意味のほかに、本格的なカメラという意味も孕んでいる。このへんも混乱のもとだろう。たまに、ミラーレス一眼レフという間違いを見かけるが、最新型本格的カメラというニュアンスだとわからなくもないわけで、これを笑うのは、ちょっと意地悪な感じもする。
 

そもそも、一眼レフのレフがないというのは、一眼レフがあってこその表現なので、一眼レフが主流でなくなると、なにがレスなのかわかりにくくなってくる。ならば、ミラーレス一眼のミラーレスをとって、たんに一眼と呼べばいいような気もするが、それではレンズひとつのカメラ全般になってしまうし、一眼だけでは名称として物足りないだろう。本格的カメラはたいていレンズ交換式なので、レンズ交換式一眼という名称なども考えられると思うが、高級感がないし、なんだかパッとしない。かといって、ラグジュアリー一眼というわけにもいかないだろう。
 

このように、ほかの名称が考えられなくなるくらい、レスという言葉には力がある。しかし、その分、もとのものの存在感が薄れてくると、意味がぼんやりしてきてしまう。
 

いま、もっとも浸透しているレスが付く言葉は、キャッシュレス決済だろうが、もし現金をほとんど見ることがなくなってきたらどうなるだろう。たんに決済と呼ぶようになるのだろうか。ミラーレスにせよ、キャッシュレスにせよ、あまり先のことを考えていなかったというか、こんなに早く主流になるとは思っていなかったのかもしれない。
 

名称の混乱といえば、たとえば、Suicaが登場したときはどうだったのだろう。切符レスカード、みたいな呼び方はなかった気がする。いや、切符は英語でチケットだと考えると、チケットレスという表現はあるが、それは指しているものが違うだろう。一般名称としてはICカード乗車券らしいが、日常でこの名称を聞くことはない。首都圏ではSuicaとPASMOがあまりに普及してしまったので、SuicaやPASMOみたいなアレ、のような表現をすることが多いのではないだろうか。さらに、最近ではスマートフォンで使用するカードレスなSuicaも普及している。これはモバイルSuicaという名称であり、カードレスSuicaやデジタルSuicaと呼ばれることはない。デジタル時代の名称は、どうも場当たり的な感じがする。
 

脱線して関係ない話になってしまった。カメラの話に戻そう。
 

わざわざレスという言葉を付けて呼ぶことはなかったが、デジタル化によってカメラからレスになったものは少なくない。デジタルカメラはフィルムレスであり、ということは巻き上げレス、巻き戻しレス、現像レスであり、すぐ確認できるので、失敗レスである。そうなってほしくはないが、プリントレスも招き寄せているのかもしれない。
 

では、これからカメラからレスになっていくものはあるだろうか。レンズレスカメラ、シャッターレスカメラなどは、思いのほかあっさり実現していくのかもしれない。さらにその先に、カメラレスカメラなどもありうるのだろうか。言葉遊びのような話になるが、次回はそのあたりについて考えてみたいと思う。

 

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