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カメラ悪酔強酒

第6回 愛しいオリンパスPEN FT

2025/01/25
赤城耕一

PEN FTはこうして見るとけっこう佇まいがいいですよね。程度の良いボディが少なくなりました。

 

忙しさだけは芸能人並み、生活は困窮を極める底辺写真家のアカギでございます。こんにちは。今回もアップが遅れました。
 

今回のネタなんですが、再びのオリンパスの登場でPEN FTのお話をします。
 

またかよと言わないでね。本機は言わずと知れたハーフサイズの一眼レフであります。なんかいつも文句を言いながらこのモデルを取り上げちゃうのは、告白します。本心では好きだからですね。

 


フィルム巻き上げレバーをボディ側面に入れたのは英断です。使いやすいですし、小刻み巻き上げはできないんですがなぜかレバーの途中収納が可能です。

 

前回の連載でも書き忘れたことを思い出したこともあるので、また登場をお願いしたというわけであります。
 

流行りの言い方をすれば、昨今はPEN Fシリーズ界隈の人気の乱高下が大きくなっているようにも見受けられますが、最近は落ち着いた感じがします。入手のチャーンスではありませんか?。OM SYSTEMからPEN-Fの次機種が登場したりすれば、また注目されることになるかもしれません。
 

PEN Fシリーズは初代のPEN F、TTLメーター内蔵のPEN FT、メーター非内蔵のPEN FVの3機種しかありません。
 

カメラ好きの皆さんはご存知かもしれませんが、そんなにメジャーなカメラシステムでもないと思いますけどね。でも、これだけフィルムが高騰しますと、36枚撮りで72枚撮れるわけですから、ズバリ、半額みたいな計算ができるわけで見直されて然るべきであります。

 

と、なればこれはもっと人気が出ていいはずですよ。

 


フィルム巻き戻しクランクもボディから突出させないように頑張ったみたいですね。どうせなら上部のツラ位置まで低くして欲しかったぜ。

 

カメラを構えると、縦位置になるのは気に食わないと思っていた「横位置写真家」の筆者ですが、それだとかつてのエディトリアルの仕事では通用しませんから、縦位置練習をPENシリーズで行い、現場での対応能力を身につけました。かつてはアサインメントの撮影に持ち出したこともありますね、数回だけだけど。とはいえカメラの人気と同様に、一時的にひとりで盛り上がり、やがてプッツリと何も言わなくなるのはいつものことであります。要するに飽きやすいわけです。
 

でも昨今のスマホやらインスタの仕様では縦位置がデフォルトですから、世界を縦位置に見て、物事を“断定”  していくのがいいみたいですね。本当か?
 

と、なればこれはまたPEN Fシリーズの時代が来たように思うわけです。まあ、そういう時流に流されない人はカメラのほうを縦に構えて、撮影すれば横位置になるわけですからそうしましょう。ユージン・スミスもそうしています。
 

何を当たり前のことを言っているのかと、でもデジタル時代ですからね、わからない人がいますので仕方なくというか念のために。

 


ファインダーアイピースですね。あまり縦位置を意識させない形状なんだけどね。こんなものでしょう。

 

PEN Fシリーズでどの機種を選ぶかというのもよく相談されますが。これね、こだわりのある人ならばPEN FTのブラックなんでしょう。けれども高いですよね、ムダに、ヤメたほうがよくないすか。ええ、ここだけの話ですがブラックの方がよく写るんですけどね(笑)。
 

PEN FTにはシリーズ中で唯一TTLメーターが内蔵されています。便利だと思いきや、受光素子に光を送るので、当時としては頑張ってハーフミラーを採用したのはいいんですけど、ファインダーが暗いですね。とくにズイコーW25mm F3.5とか装着したPEN FTのファインダーを見ると、自分の人生と同じくらい先行きが不安になります。それほど暗いのです。
 

復讐じゃない復習の意味でPEN FTのメーターの話もしておきます。PEN  FTはメーターに装着レンズの開放Fナンバーを送る機能がないため代わって「TTL ナンバー」方式が採用されました。

 


シャッター幕はチタン製でした。ロータリーフォーカルプレーンシャッターの動作音はけっこうデカいです。“ジャッ” という感じに聞こえます。ストロボは1/500秒でも同調します。

 

理屈は長くなるから省略しますけど、基本的には開放測光ではあるものの、メーターはシャッタースピードにのみ連動するわけです。簡単に言えば画面全体の明るさが、装着レンズの開放絞りの明るさより何段暗くなっているかを単純に数字で示す、相対値の絞り表示ですね。
 

通常はファインダー内で指針表示されたTTLナンバー数値を記憶し、絞り環のTTLナンバーを同じ数値に合わせてくださいというやり方になるわけです。
 

理屈でいえば絞り環で先に合わせたTTLナンバーを覚えておいて、ファインダー内に表示されたTTLナンバーと同じ数字になるまでシャッタースピードダイヤルを回せばいいわけですだけど、まあ1000人に一人くらいですかねこのやり方で適正露出に導く方は。どのみち筆者はPEN FTにバッテリーを入れたことないので使い心地を論評する立場にはないわけです。すみません。

 


PENFマウントというのでしょうか。OMズイコーレンズを装着できる純正のアダプターありましたよね。今回探しても出てこなかったんです。

 

ではPEN Fシリーズの中でどのモデルを選べば良いのでしょうか。
 

筆者的には初代Fのあの花文字のあの大げさ感が少し嫌いですね。
 

さらに、どんなカメラでも小刻み巻き上げが好きな筆写ではあるのですが、Fのあの強制される2回巻き上げってのもね、少しイラっとするわけです。お前はライカM3の初期型かよと叫びたくなるわけです。ハーフサイズのコマ送りの量はそんなに多くなかろうに。
 

やはりFTかFVなのかな。FTもメーター使わないけど。残りはFVですね。TTLメーター入ってないし。ちなみにFVはメーター入ってないから全反射ミラーで、ファインダーが明るいみたいに言われるけど、筆者には大して変わらないように見えます。(個人の感想です)

 


シャッターダイヤルの位置関連はスクリューマウントライカ系のパク理なんですか?知らんけど。

 


セルフタイマーついてます、大げさな大きさですね。

 

FVがシリーズの中でも中古で人気なのは、生産台数が少ない、メーターが非内蔵だから、故障の心配をしなくていいということなんでしょうが、素直(じゃないか)にFTにバッテリー入れないで使えば同じことになるのではないのかなあ。
 

はい、みなさんが好きなモデルを選んでくださいというのが結論ですけども。
 

あとね、PEN F系のボディは放置されていたものが多いから、巻き上げ関連などの動作がシブいものが多く見受けられます。調整してもらうとゴリ感はなくなりはしませんが、素晴らしくフィーリングは上がります。

 

PEN FVです。シリーズ中ではFTのブラックと並んで人気ですかね。意外に数はないけど、無理して探さなくてもいいと思うぞ。

 

交換レンズは絞りの故障が多いから注意した方がいいですね。

これ、初めて書きますけど、PEN FTを使用した数少ないアサインメントの一つにオリンパスの神様である米谷美久さんを撮影するミッションがありました。PEN時代から米谷さんは設計に携わっていたからです。
 

具体的に言いますと、「季刊クラシックカメラ」の特集取材で、オリンパスの米谷美久さんを撮影することになり、PEN FTとズイコー70mm F2を使用することにしました。ところが撮影し始めたところ挙動がヘンになりました。前日のテストでは大丈夫だったのに。ご本人の目の前ですから、久しぶりにあれれれとなりました。焦ってあれこれレンズを外したりいじくり回していたらシャッターまで落ちなくなり。

 


メディカルのPEN Fです。セルフタイマーレバーが省略されているのがカッコよくないですか。

 

その時、米谷さんは少し困った顔をして曰く、「油切れ」だな。とボソッと残念そうにつぶやいたのでした。こちらはロータリーフォカルプレーンシャッターの全速同調機構を見越して、日中シンクロしようと大げさなストロボまで用意したというのに(笑)。
 

結局撮影はOM-3Tiでこなしましたので、仕事は無事に終わり、米谷さんの機嫌を損なうことはありませんでしたが、どうにもヘンなエピソードになってすみません。あ、故障したPEN PEN FTはその後修理して元気で活躍中ですので念のため。

 

で、現行品のPEN E-PL7とメディカルのPENを並べてみます。こういう姿をみますとPEN E-PL7も悪くないけどファインダーがないんです。ペナルティです。

 

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