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カメラ悪酔強酒

第39回 アーミーカラーの「キヤノンF-1」Olive Drab(オリーブ・ドラブ)モデル

2025/09/12
赤城耕一

キヤノンOD F-1にFD24mm F2.8 S.S.Cを装着してみます。ライカR3のように鏡筒をオリーブドラブにしたレンズは登場しませんでした。なんとなく覚悟が足りない感じがします。塗装の質はとてもいいですね。

 

「軍用カメラ」は文字通り軍隊が記録用に使用するカメラのことですが、ボディカラーや仕様、刻印は市販モデルと異なり独自なものが採用されていることが多いようです。
 

ボディカラーはブラックだったり、オリーブだったり、グレーだったりと様々です。でも、重要なのはカメラメーカーが軍隊から発注されて、少数生産したモデルであるということです。
 

当然のことながら軍用カメラは個人所有のものではありませんし、その活躍する場も限られておりますから、一般の人たちには見ることも稀で、縁遠い幻のカメラでありますね。門外不出のカメラですから、何らかの理由でシャバに出てくれば珍品扱いになり、当然高値で取引されることになります。

 


シャッタースピードダイヤル周りのギザギザもオリーブドラブですね。ただ、黒のままのパーツも結構残されています。

 

説明する必要もなく、これがライカだったりすると、ちょっとした高級車が購入できるくらいのお値段がつけられていたり。はい、一般市販モデルより、軍用カメラのほうがよく写るわけですから、これは仕方ありませんね。

 

ただライカの軍用モデルは軍への納品のほかに少数が一般市販されたり、流出したりするからまた話がややこしくなるわけで、その真贋をふくめて、取り扱いが難しくなります。
 

今回、ご紹介するのはキヤノンF-1のオリーブモデルであります。略称でOD F-1と呼ばれたりします。ODはオリーブドラブの意味ですね。。もしかするとF-1 ODかもしれませんがウラがとれないのでこのままいきます。

 


巻き戻しノブあたりです。徹底したオリーブドラブ塗装というよりも締めるところは黒色のパーツを使うというのがミソか。

 

OD F-1のオリーブカラーはアーミーカラーで、文字通り米陸軍を意識したものなんでしょうけど、いまふうにいうとサファリモデルに近いファッション性が強いものなのではないかと。似たような一眼レフのサファリモデルではライカR3がありますが、これも軍用カメラではないようです。米軍でOD F-1が使われていたのかどうか筆者は当然知らないのです。
 

生産は限定数ですから、本来は中古市場でも人気になってプレミア価格がついてもおかしくはないのですが、OD F-1はこの種のカメラにしてはお安い設定のように思います。筆者が持っているくらいですから、通常モデルよりも少しだけ高いくらいじゃなかったかなあ。手に入れた個体が汚いという理由もあるかもしれませんが、不人気ということであります。

 


裏蓋を開くと、フィルム室もオリーブドラブです。20年前、OD F-1のフェイクモデルはそこそこに作られたらしいのですが、これらはフィルム室は黒のままだったそうです。

 

なぜ不人気なのかはよくわかりません。現在の中古市場では、F-1は同時代に登場したニコンF2よりも人気がないことは存じていますが、その理由を明確に説明してみろと言われても自信はないですね。もとの通常市販モデルのF-1が不人気だから色を変えたくらいでは、ユーザーは動じないのかも。
 

筆者の想像では、OD F-1は軍隊で使用されたとか、戦場で活躍したなどの背景にある“物語” が希薄だから人気がないのかもしれません。キヤノンはこの時代、プレミアムな特別仕様のカメラを出すという雰囲気がなかったこともあります。

 


フィルムメモホルダーは黒々としています。フィルムホルダーに罪はないんですけどね。せっかくフィルム室までオリーブドラブにしたのに、このあたり、徹底した感じが薄れますね。

 

たしかにOD F-1はアーミーカラーではあるけど、ファッションのように思えるわけです。それにいきなりというか、気まぐれに登場してきた感があるわけです。ノーマルのF-1の人気が薄れてきたのか、それとも部品などがダブついていたのでしょうか。

 

ホンモノの軍用のモデルだって、オリーブドラブのようなカラーバリエーションのものがあったとしても、そのカラーには必然はないのですが、慣例のような意識で、このオリーブドラブカラーが採用され、実際に軍隊に納品され使われたから箔がついたのかもしれません。

 


「Canon」ロゴは真っ白な塗料ではなくて、少し黄色いような薄い茶色かなあ。確かに白のままだと目立ちますもんね。

 

まったくの記憶で話をすると、OD F-1が出た時のカタログって、チラシ1枚みたいな感じで、砂漠の背景の中にOD F-1があるみたいなものではないかったかと、たしか化粧箱もマシンガンの弾丸を入れるような箱のイメージじゃなかったですかね。ストラップの色もOD F-1に合わせてあったかと。

 

オリーブドラブは軍用色ではなくて、「サファリ」であるとライカ社あたりは強く主張しているように見えます。でもことさら神経質になっても意味ないかと。
 

カメラや写真趣味は平和な時代だからこそ楽しめるものでありたい。ボディカラーで印象が変わるものでもないでしょう。

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