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第42回 両優先AEを可能にしたキヤノンAシリーズ一眼レフのフラッグシップ機「キヤノンA-1」

2025/10/03
赤城耕一

キヤノンA1+FD50mm F1.4つき。レンズが時代にあいませんが、ロッカーから出すのが面倒なんで勘弁してください。フツーに使えますぜ。A-1をAEで使用するにあたっては絞り環をグリーンの⚪︎か、Aに合わせる必要があります。

 

キヤノンA-1はキヤノンAシリーズのフラッグシップの位置にあります。

 

古臭い言い方をすれば絞り優先AEとシャッタースピード優先AEの切り替えが可能の両優先AE機ということになります。少し時代が進むと、マルチモードAE機となるのかな。
 

35mm一眼レフでは両優先AEはミノルタXDに先を越されてしまいました。ミノルタはシャッター速度優先AEを実現するために、レンズ側に改良を加える必要があったのですが、キヤノンFDレンズはもともとシャッタースピード優先AEを基本としていたので絞り環にはこのための「A」ポジションが用意されています。だから、両優先AEは容易だったはずなのですが、キヤノンはさらなる先進性を求めたのかもしれませんね。

 


パワーワインダーA2を装着してみました。コマ速度は前機種より速いと思うけど、調べるのが面倒なんで興味ある方は調べて下さい。モータードライブもあったと思うけど、締め切りまでに見つかりませんでしたぜ。

 

筆者の勝手な解釈をさせていただくと、キヤノンA-1の凄さというのはFDレンズをAポジションにしたまま、絞優先AEを可能にしたことではないかと。
 

具体的にいえば、ミノルタXDでは絞り優先AE時には、絞り環を回して、任意のF値を設定するわけですが、A-1の場合には絞り環に一切手を触れずに絞り優先AEを可能にしたことであります。つまりUIが思い切り異なるわけですね。
 

シャッタースピードも絞りもその変更はカメラ上部のATダイヤルを回して行います。
 

シャッターボタン下のレバーをTVに合わせて、くるくる回すと、どんつきに「P」表示があります。もう何もしなくていいから私に任せてねというモードですね。

 

つまりATダイヤルにはシャッタースピード表記とF値の表記が両方あり、さらにシャッタースピード表記の位置にはプログラム用のP表記もあります。
 

カメラのモードを「TV」に切り替えると、シャッタースピード表示に「AV」にすると、F値表示に切り替えます。プログラムAEのときはTVに切り替えた時に「P」に設定します。
 

筆者がいちばん驚いたのはボディ側のみで各F値を変更、設定できるからであります。

 


レバーをAVに合わせるとF値表示がでます。開放FナンバーがF2のレンズを装着した時、このダイヤルをF1.4に合わせたらどうなるんでしょうね。フツーにF2の設定で露光されるのかな。されますよね(調べてない)

 

これって当時、筆者にはけっこう先進的にみえました。A-1をAEで使うかぎりは、レンズの絞り環に触れる必要はないわけであります。 
 

EOSになってからはレンズ鏡筒からは絞り環がなくなり、カメラボディ側からすべての設定を行いますが、A-1はこの先駆けともいえるUIということになります。
 

それにしても、表示は思い切りアナログなんですが、メカの切り替えで数値表示を変更できるなんて、007のゴールドフィンガーに出てくるアストンマーティン・DB5のナンバープレートがくるくる回って可変するさまを思い出します。年寄りですから例えが思い切り古くなりますが、昨今の液晶表示によるモード切り替えとか、なんかね、つまんないじゃないですか。
 

セルフタイマー設定レバー。2と10秒が選べます。ランプはLEDなのに設定はレバーというアナログですねえ。別にいいけどね。

 

絞優先AEかシャッタースピード優先AEどちらがエラいか論議というのはこれで終止符が打たれたわけでありますが、どうなんですかね、旧来のキヤノンユーザーはシャッタースピード優先AEを選ぶのでしょうか。

 

A-1のテレビCMに出ていた、浅井慎平さんは、望遠は絞り優先AEを選び、広角はシャッタースピード優先AEを選ぶとおっしゃっていましたが、これは望遠は絞りを開けたほうが好きだから、広角はもともと被写界深度が深いから絞りを気にするなみたいな理由だったかと記憶しています。広告の撮影で、AEで撮るとかふつうはありえないですけどねえ、この話はまた余計なことを言いそうなのでこれでヤメておきます。
 

正直なところ、どちらのAEモードがよく使われたのかよくわからないですが、筆者の認識では、そもそもA-1はプログラムAEの設定ができることがアドバンテージだったのではないかとも思うわけでキヤノンの技術陣の思惑もそうだったんじゃないかなあ。
 

AEの発展って、撮影者が何もしなくてもキレーに写ることが最終目標だと思うからであります。ATダイヤル前には不用意に動かないようにガードもできるもんね。だからダイヤル類には手を触れずにお使いくださいというのがA-1の正しい使い方なのかも。
 

フィルム感度設定ダイヤルですね。露光補正は1/3刻みです。でもさ、露光補正量って勘に頼るわけじゃないですか。補正量が見当もつかないような難しい光線条件では、単体露出計を用意して、普通にマニュアル露出で測光して撮った方がいいんじゃね?というと怒る人がいるのか。

 

こんなことを書くとプログラムAEを使うことを筆者が非難しているように思われてしまいそうですがそうではないのです。いまのカメラはプログラムシフトが容易ですから、AEモードの設定など、Pモードをはじめ、撮影条件に合わせるなんて格好をつけずとも、自分の好きなものを使用すればいいわけであります。
 

そういえば「現代語感」で有名な写真家の富山治雄さんがA-1を手にしている取材現場に筆者も偶然に居合わせたことがあるのですが、その時にちらっと見た富山さんのA-1の設定はPモードで、この時に驚いたことを記憶しているのですが筆者がPモードを見直すきっかけともなりました。
 

A-1のニックネームは「カメラロボット」でしたかね。でもね、自動化とトレードオフで、プラスチックカバーやパーツが増えたためか、高級感は今ひとつじゃないですか。なんか全体が変にテラテラ、ツヤツヤしていてね。ソソらないですね。

 


ATダイヤルカバー。基本的にはATダイヤルは右手の人差し指を使いますが、設定が不用意に変わらないようにスライドカバーがあります。Pモード愛用者はカバーをきちんとしましょう。

 

そういやA-1はブラックボディしかありませんが、ブラックの塗装が剥げると銅色の下地が出てきて、次に白い素材のプラスチックが見えてくるんですよ。
 

もうね、カメラを使用した“戦歴” ではなくて、角が“削れてゆく” 印象でありますね。でもね、「身を削る覚悟」とはほど遠いんですよ。こうなるとかなり恥ずかしいですぜ。見ちゃダメ。
 

根本のところでキヤノンF-1とは違う思想のカメラということをよく認識して使う必要があります。

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