あけましておめでとうございます。2025年がはじまりました。昨年末から突然スタートした「カメラ悪酔強酒」今年もどうぞよろしくお願いいたします。
第3回目はキヤノンF-1のお話をしようかと。New F-1ではありません。1971年登場の古いほうのモデルの話でありますから念のため。
キヤノンは先進技術をもって、常に業界をリードする立場でしょうから、社内でも古いカメラ、昔の話をしてくれるなと思っている方も多いはず。ユーザーもそういう人多いですよね。常に最新機種を手にしていないとイヤという人。経済貢献してますね。
超絶不人気なキヤノンF-1の初期型ですね。S.S.Cコーティング前のFD50mmF1.4を組み合わせて時代の整合をとってみましたよ。
こちらは1976年バージョンのF-1Nですね。ま、外観はそんなに違わないしね、大したことありません。レンズがS.S.Cになったから、少しキレーな感じですね。
とはいえ、昔があるから今があるわけですから、昔の話もないがしろにはできないというのが筆者の考え方であります。とくにF-1のことは無視はできないわけです。ええ、半分以上、EOS R1を買えない年寄りのひがみも入っております。
キヤノンは「1」の数字を重要視しています。常に業界的にも1番をとらなければイヤなメーカーであります。EOS R1が注目されているのも1の冠がふさわしいものなのか、みなさん注目してみているからでしょう。
F-1Nの巻きあげレバーです。プラスチックのアテをつけました。ニコンF2のそれとか意識したようなデザインですが、どうなんですかね。巻き上げ角は小さいのですが、少しゴリ感が出ました。
キヤノンF-1もレフレックスカメラで1番という意味があるのかもしれません。それまでニコンFにずっとヤラれてきた悔しさもあったんだろうなと。ユーザーも1の数字を気にしている人は多いでしょうね。それにしても、なんでニコンはフラッグシップカメラ名に「9」をつけてしまったんだろうなあ。
キヤノンF-1はFTやペリックスなどの絞り込み測光方式から、いきなり開放測光方式を採用し、しかもフラッグシップモデルなわけです。
その昔は絞り込み測光と開放測光のどちらがエラいかという話もカメラ雑誌方面からよく聞こえてきました。実絞りで測光するから、露光値は絞り込み測光のほうが精度が高い正確だという話もありました。まじかよ。キヤノンはFTあたりの広告で、TTL絞り込み測光のことを焦点測光とか名づけて、カメラ雑誌の広告ではPRしてたなあ。
うちにある個体の中ではマシなアイレベルファインダーですね、そんなに目立った凹みないし。それにしてもアクセサリーシューって、ホントにデザインを乱しますよね。
昨今はマウントアダプターでお古レンズを楽しまれている方も多いと思うので絞り込み測光って身近なのかもしれませんが、当時でもなんか古臭くね?みたいな感じもしましたけどね。
で、結局は開放測光を採用しちゃうんですから、裏切りだよなあ。あれだけ絞り込み測光の優位さをアナウンスしていたのに、当時のキヤノンFTとかペリックスのユーザーはF-1登場時には怒らなかったのかねえ。
F-1は 発売当初に『10年は不変』とブチ上げたと言われます。
メインスイッチです。べつにメーターを使わなければOFFのままで大丈夫です。青数字はバッテリーチェック時の設定が書いてありますが、どうでもいいですね。
最新のTTL開放測光方式採用で、FDレンズは色再現に偏りがなくて揃っていて、カラーでのお仕事には向いていると言われました。
たしかに当時のFマウントニッコールなんかレンズごとに色は違ったしね。だからF-1は広告系とかファッション系の写真家に使われて、ニコンは報道に使われるとか自然に分かれたとかいう話をなんかの雑誌で読みましたね。
どうなんですかね、往時のことを知る方のご意見は。ニッコールでファッション写真を撮影すると石を投げられたとか逸話がある人はお知らせください。
アイレベルファインダーを外してみました。レール式で良い感触ですね。各部の仕上げも見事です。掃除する時しか外さないけどね。
でも、初期のFDレンズはS.S.C(スーパースペクトラコーティング)じゃありませんよね。前枠なんか銀色でピカピカ光るから、反射の多い被写体では映り込みありそうだし。高屈折ガラスの黄変によるものかもしれませんが、古いFDレンズは色再現怪しいですよね、
レンズフードは前期の方がいいですね。金属製でした。少し重たいけどね。のちのプラスチックフードなんかバヨネットのツメが削れて、ユルユルになって脱落するしね。
そういや初期の金属フードもバヨネットのパーツはプラ製のためか壊れているのが多いですね。いずれもフードに関しては暴れたくなる要件ですね。どなたですか、これを考えた方は?
でもキヤノンユーザーは紳士が多いので、何も文句は言わずにフードが削れて外れやすくなったら買い直していたのでしょう。そうに違いありません。
フィルム室を見るだけでも高級感ありますもんね。見えないところも手を抜きませんということです。
F-1は各種の交換ファインダーが用意され、モータードライブの無調整互換も可能にしていました。モータードライブなんか底蓋取り外して装着するんですぜ。これで底蓋をなくしてしまう人がいて、底蓋だけ作っていたサードパーティありましたよね。
外装なんかブラックペイントだけなんですよ。プロはブラックボディを使うというのが定説だったのでしょうか。この塗装は「虎屋の羊羹」とか言われたもん。塗りに厚みがあって。光沢感がいいわけです。でもずいぶん昔ですがキヤノンに取材に行った時に試作のF-1シルバーボディを見せてもらったことがありましたね。けっこう良かったですね。
同時期のニコンF2がTTLメーターをファインダーに内蔵したことに対して、F-1はボディ側にメーターを内蔵していました。
FDマウントですね。スピゴットマウントですのでレンズ側のリングで締めつける方式であります。右側の開いた蓋はサーボEEファインダーと連結させるアームを差し込むためのスペースです。
スピードファインダー、ウェストレベルファインダー、サーボEEファインダー、ブースターTファインダーが用意されたけど、みんなTTLメーターを使うことができます。
ま、使えると言っても例によってプロはTTLメーターなんか使わないけどね。筆者もF-1にバッテリー入れたことは数回しかないですね。いつものように、おー、動くぜーとかやって、おしまいにします。
ファインダー交換って、なんかパフォーマンスに近くないですかねえ。F-1の場合、通常のアイレベルファインダー以外、あまり市場では見ませんからね、大して売れなかったんでしょうねえ。
そういえばシャッタースピード優先AE化できるサーボEEファインダーとかもありますね。ニコンも同時期にF2フォトミックSにEEサーボコントロールユニットをつけてシャッタースピード優先AEを可能にしました。
いずれもモーターで力づくで絞り値を動かし適正値まで持ってゆこうという考え方は似ていますが、まさかウラで示し合わせていたということはありませんよね?
両者ともにサーボEEでAEの動作を見せるのは、宴会でのパフォーマンスだけにとどめておいた方が無難です。これを実用として使う人は写真表現を捨てた人と見られてしまう可能性があるので注意したいところです。
F-1初期の巻き上げレバーですね。先がギザギザしてますが、フィルムを入れてもスムーズなトルクなんで気にならないわけです。
ファインダースクリーンも交換できて、最終的に9種になりました。いずれも明るいとは言いませんが、マット部の切れ込みが良く、周辺部でのフォーカシングも容易でした。これは素晴らしい性能です。
で、1976年にはF-1は通称でF-1Nと呼ばれる改良型が登場します。外観はほとんど変わりませんからマイナーチェンジの部類には入るんだろうけど、かなり気合い入った改良でした。
巻き上げ角度を180度から139度と小さくして、最高ISO感度を2000から3200へ拡大。巻き上げレバーにプラカバーを追加など。多重露光もやりやすくなったとか。裏蓋にもメモホルダー追加とかありましたよね。
たしか、当時は旧F-1を有償にて限りなくF-1Nに近づける改造とか正式に行なってましたね、キヤノンは。こういうところはかなりエラいなあ。最近ではこうした改造を引き受けたカメラって、ペンタックスK-1くらいしか思い浮かばないもんなあ。
サーボEEファインダーを装着してAE化してみます。ボディはF-1のサファリです。いわゆる変態同士の組み合わせですね。ものすごくバランス悪くて、なんでこんなものを買ったんだろうと必ず後悔しますから注意してください。でも沼に落ちるというのはこういうことです。
例によってスペックはどうでもいいのですが、筆者は食わず嫌いだったF-1の初期型を最近は評価しています。つまり1971-1975年に製造された初期型のF-1を推すわけです。F-1Nよりも。
もうね、よく調整された巻き上げレバーなんか、巻き上げ角度は大きいですが、おまえミノルタXEかよってくらい、フィーリングが滑らかでいいですね。
レバーの先にプラのアテがなくても親指が痛くなったり擦りむいたりしないと思います。大丈夫です。
しかもF-1はXEでできない小刻み巻き上げができますし。このあたり官能的ですらあります。F-1Nなんかフィルム巻き上げ角を小さくしたら、なんかゴリゴリするんですよね。ムリさせたんじゃないですか。その後のNEW F-1なんかもっと酷くなりましたから、手巻きでなんか使いたくなかったですね。
ニコンFやF2の交換ファインダーは上からぎゅうぎゅう押し込んで無理やり固定するようなところがありますが、F-1はレールに載せて、滑らせ、カチっと入るわけです。
ファインダー装着部のレールの仕上げなんか、初期のものなんか神々しいですね、美しくピカピカしていてね、指先で何度も撫でたくなりますね。工芸品に近いです。ロック方式なんかもおしゃれですね。
ファインダースクリーンの枠とかも、開口部にすっと入るわけです。ニコンなんかファインダースクリーン交換時なんかファインダーの着脱ボタンを押しつつ、ボディを逆さまにしたくなりますからねえ。お願いしますよ。
サーボEEファインダーを上からみます。装着レンズの開放Fナンバーの設定ダイヤルがありますね。なんで自動セットされないんですかねえ。ニコンのガチャガチャよりも面倒じゃないですかね。
ただね、ことアイレベルファインダーに限っては、カバーが薄いんですかねえ、うちにある個体なんか小さい凹みがあちこちにできて泣きたくなりますね。こういうところからも質実剛健感が薄まってしまいますね。チタンボディとか作れば良かったのにね。
F-1はシャッター音にも品格があります。高級車のドアを閉めるような落ち着いた音なのです。ニコンF2とかボディ内部から残響音を発しますからねえ。それはそれで存在を主張しているのだ、撮影時のパフォーマンスになるのだと好意的に解釈はしておきますねここではね。
だいたいこの時代のメカニカルカメラって、ロングセラーになると内部は外見からわからないところで次第にコスト下げてゆくわけです。
金属パーツだったものをプラにするとかさ、それまで塗装していた箇所をメッキから塗装にするとか。
調子悪いのはコストダウンが原因じゃねえのか?と疑いたくなりますもん。明らかにフィーリングの違いとか、耐久力の違いとかありそうですぜ。知らんけど。ま、とにかくキヤノンF-1は初期に限るのです。しかも不人気ですからお安く入手できますぜ。
なんか、新年から飛ばしすぎてしまったのでおしまいにして一杯やります。また次回ね。
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