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カメラ悪酔強酒

第31回 今も根強い人気! 1958年登場の「キヤノンVI L(6L)」

2025/07/19
赤城耕一

全体としてはだいぶ洗練された感じにはなりましたが、ファインダー周りの処理にVの亡霊が残っていることを感じさせます。スッキリ行こうぜ。

 

 1958年登場のキヤノンVI L(6L)は一時ほどではなくなりましたけど、今も根強い人気がありますね。
 

よく比較されるのはライカM4だったりしますが、登場時の年代はかなり離れていますから比較のしようもありません。雰囲気が似ているとか、フレームの対応レンズが多いとかつまらないところから来ているんでしょうねえ。
 

VTとかL1とかと何が大きく違うかといえば、まずは不回転シャッターダイヤルになったことでしょうね。カメラのホールディングが悪いと、撮影時にうっかりシャッターダイヤルに触れる原因となり、正常なシャッタースピードは望めないのです。
 

内蔵ファインダーは変倍式だから、前機種と似ているようでいて、これも違います。35mm・50/100mm・RFと3段階に分かれていますが、50/100mm時にはブライトフレームが同時表示されます。少しじゃまくさいですが、仕方ありません。ファインダーの倍率は35mmで0.65倍、50/100mmで等倍、RFでは1.55倍になりフォーカスの精度は信頼が置けます。

 


巻き上げレバーとかシャッタースピードダイヤルとか。巻き上げレバーはのちの7に似ています。少し野暮ったい感じですが、L1よりも指に優しいです。シャッタースピードダイヤルはやっと不回転になりました。

 

すばらしいのは内蔵ファインダーを搭載しても50/100mm枠はパララックス自動補正機構が採用されています。さらにL1やVTの時に申し上げた外づけのファインダー装着時のパララックス補正装置も採用されております。

 

いまとなってはVL Lは中古品で手にいれるしかありませんが、現在市場にあるVI Lのブライトフレームは経年変化によるものでしょうか悪い虫が食べたみたいにフレームのエッジがボロボロなものが多くて、ファインダーを覗いた瞬間に萎えてしまいます。それでも、どなたか、あるいは修理会社でしょうか、フレームを独自に再制作していただいたようで、最近のVI Lは再生されたフレームを内蔵したものが多く、よい感じのファインダーに蘇りました。
 

40年くらい前でしたか、この世界の先達のカメラマンが酒席で、若い頃欲しかったのはこのキヤノンVI Lだったとえらく力説していて、筆者はそんな良いものかしらと訝しく思っていたんですが、この当時から中古のVI Lって、程度のよいものだと8万円くらいの値札がついていましたけどね。今の相場よりも高いですね。

 


変倍ファインダー採用。もはや伝統ともいえます。以前は距離計のみの表示は「RF」でしたけど「Mg」に変わりました。マグニファイヤーの略でしょうか。ご存知の方お知らせください。

 

ほどなくして、この先達カメラマンとお会いする機会がありまして、この時はVI Lを見せびらかされました。筆者はすでにこの当時、生意気にもライカM2を使っていましたから、VI Lを見せられても「へー」としか思いませんでしたが、世界の平和のために具体的な言葉は忘れたけど、VI Lを絶賛した記憶があります。こうみえて気を遣うタイプなんで覚えておいてくださいね。
 

とはいえカメラ博愛主義である筆者ですから、それから数年して、VI Lもうちの子になるわけですが、個人的には名機とまではいかずとも、メーター非内蔵であることで、デザインがスマートでありよくできていると思いました。

 

キヤノン7からは外部測光の露出計を内蔵したことでそのルックスを弁当箱のようににしてしまうわけですが。このVI Lと7の関係はライカM4とM5の関係に似ているかもしれないですね。そうでもないかな。

 


ビルトインされたフィルム巻き戻しクランクです。L1やVTよりも細身になりましたねえ。理由は分かりませんが少し華奢ですね。

 

うちにあるVI Lは購入時にキヤノンF-1のシャッター幕に貼り変えられていました。あのステンレススチール幕が絶望的にシワシワだと、撮影意欲が減退するし、実用派の筆者にはありがたかったですね。

 

ファインダーは変わったけど、VI Lでは筆者の好きな35mmフレームが内蔵されていないことは正直イタい感じがしました。あと35mm時のファインダー内のタル型の歪曲がデカめです。脳内でこれを補正せねばなりません。
 

フレームがなければパララックス補正も良好に作用するとは思えません。もっともレンジファインダー機のフレーミングなんてだいたいでいいんですけどね。だから最終的にはVI Lにも外づけのファインダーをつけまして、距離によってわずかにお辞儀するそれをみながら悦に入るわけです。はいヘンタイですね。

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