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第23回 ライカMマウント互換のレンジファインダー機 「ZEISS IKON」

2025/05/23
赤城耕一

Mシリーズライカよりも端正な顔立ちです。ツァイスの品を感じさせるにはどうしたらいいか考えられています。

 

自分でも年寄りだなと思うのは、ZEISS IKON(ツァイス・イコン)の35mmカメラいえば、思い出すのはコンタックス、スーパーネッテル、ネタックスなどのフォーカルプレーンシャッター搭載のカメラ、レンズシャッターではテナックス、イコンタ35、コンテッサ35あたりでしょうか。
 

お金持ちの皆さんだと「世界の殿様カメラ」と呼ばれた35mmフォーカルプレーンシャッター搭載の一眼レフのコンタレックスのことを思い出すのかなあ。

 


メインスイッチはシャッターボタン周りにあります。巻き上げレバーは軽く動作し、小刻み巻き上げも可能。シャッタースピードダイヤルも上部に突出しない厚みですね。露光補正はシャッタースピードダイヤルAポジション位置から設定します。

 

ツァイス・イコンでのカメラ自体の製造は1972年に打ち切られ、ヤシカとツァイスが提携して、新生「コンタックス」となり、これも会社が京セラとなって、最終的にはカメラ事業は終焉してしまいます。
 

2005年、突如として、ライカMマウント互換のレンジファインダーカメラ 「ZEISS IKON」が、コシナとカール ツァイスの提携の象徴的なカメラとして登場します。
 

これはかなり大きな事件だと思うのですが、すでに世の中はデジタル一眼レフが主流の時代になっていましたので、新たにフィルムレンジファインダーを発売するのは、かなりの冒険と受け取られました。ライカMの初のデジタルライカM8の登場は2006年のことです。

 


フィルム室です。このまわりは平凡ですが、ベッサとも異なります。

 

ちなみに今回、当時の資料とか執筆した記事を探すためにフォルダをあれこれ探ったところ、この時代の記事の画像のほとんどはデジタルデータになっておりました。でもZEISS IKONに敬意を表して、ブツ撮影は4×5カメラで撮影した記憶があるんですよね、今回、整理が悪くて、出てきませんでしたけど(笑)。
 

ZEISS IKONの特徴はMマウント互換カメラでもトップクラスの長さを持つ75mmの基線長。レンジファインダー時代のコンタックスが、ライカよりも基線長の長さを誇っていましたが、それを想起させるものであります。
 

ZEISS IKONはコシナでの製造であり、登場の経緯からすれば、フォクトレンダーBESSAシリーズの発展型カメラとして受け止められてしまうかもしれませんが、共通なのはシャッターユニットくらいかも。デザイン、動作フィーリングともに違いますし、初号機から絞り優先AE機構を搭載していました。

 


フィルム巻き戻しクランクは下部にあります。ライツミノルタCLやミノルタCLEの雰囲気に似ています。

 

ファインダーが美しいのがZEISS IKONのファインダーを覗いた時の第一印象です。とにかく素晴らしき透明感、好みが分かれそうだけど、フレームの線が細いことも品格を感じさせますね。
 

手にした時の軽さも感激します。マグネシウム合金ですから、当然でしょうけど、ボディサイズに対する重量感の背反した印象がとても強いのです。これならどこにでも連れて歩くことができるでしょう。
 

先にシャッターユニットはベッサ系のそれかもしれませんと書きましたが、シャッター音は縦走り金属のフォーカルプレーンなのに小さいし、ショックもない。フィルム巻き上げもトルクが軽く、小刻み巻き上げも可能です。
 

ZMマウントと呼ばれるMマウント互換の交換レンズも15〜85mmまで豊富に用意されました。

 


ZEISSエンブレムが貼られていますが、ZM(Mマウント互換)マウントという不思議な感じがあります。
シャッター面での測光のため、幕の中央位置がグレーになっています。

 

その昔、「カメラボディはライカがいいけど、レンズはツァイスだ!」という人って少なからず存在していたわけですが、ZEISS IKONとZMレンズシリーズの登場でMシリーズライカとレンズの相互互換が実現し、そこにフォクトレンダーレンズ各種やBESSAも加わることになるので、もう選択と組み合わせに困るくらいの、レンジファインダーカメラ好きには酒池肉林ともいえる世界が実現したわけですが、これはすごいことでした。
 

カール ツァイスとコシナの提携時に、筆者は『アサヒカメラ』の取材でツァイスの聖地、オーバーコッヘンとイエナに訪れたのですが、オーバーコッヘンの雰囲気は協業するコシナのある長野県、中野市の雰囲気に似ていたことを思い出します。

 


ZMシリーズレンズはツァイス的な特徴がよく感じられます。このCゾナー50mm F1.5は復刻といってもよいものです。レンズの加工や組み立てに手間がかかります。普通のレンズメーカーは手を出したくない仕様ですが、ガウスタイプのプラナーとは異なる描写をするのが特徴です。

 

イエナはいかにも学術系の人が集まりそうな品格のある街でしたが、当時は東西ドイツの統合から10年と少しの時間を経てはいたものの、旧東側に位置していたこともあり、工場の雰囲気に「東」の雰囲気を強く感じました。
 

ZEISS IKONは2012年くらいまで販売されていましたが、今はなく。ZMレンズシリーズが頑張っています。同スペックのレンズがライカレンズよりも遥かに廉価に入手できる強み、光学性能に対する信頼も厚く、人気が継続しています。筆者は純正ライカレンズよりも使用ZMレンズ使用の頻度が高く、愛用しています。
 

ZEISS IKONはAE機ということもあり、今後のメンテナンスの問題もあって、中古を強くお勧めはしませんけど、もしお手頃価格で販売されていたら、使用してみるのもいいかもしれません。ライカMとは全く異なるコンセプトに魅了されます。

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