全体はプラスチッキーですね。でもね、そんなに安い感じはしません。しばらく使用していないと電源を入れる方法すら忘れますが、単純です。キャップを開ければOK。
今回はですね、その名もキヤノンオートボーイJETという、見ての通り、円筒形の魔法瓶(今は言わないですね、ボトルか?)みたいな変わったフォルムのコンパクトカメラを取り上げてみます。
オートボーイシリーズはフィルムカメラ全盛時代に大ヒットしました。筆者もいくつかのモデルを所有しておりましたけど、ウチに現存しているのはこのJETだけです。
バブル期の1990年に登場したというだけでもうなづけるんですが、ビデオカメラのようにもみえますよね。発売時にはオートボーイシリーズの最上級機の扱いでした。
搭載レンズは35-105ミリF2.8-6.6のズームレンズ。ワイド端では大口径仕様です。レンズ構成は9群10枚、コンパクトカメラの部類としては頑張りました。
しばらくすると使い方を忘れます。もちろんレンズはこの円筒形の中入っていて、レンズキャップを手動開閉すると電源はONになります。キャップ側にはかなり強力なスピードライトが仕込まれています。

前キャップは蝶番式ですから、スプリングの力で、ぱかっと開く感じです。スピードライトの発光部デカっ!ガイドナンバーは12~25(ISO 100/m)でズーミング連動する可変式です。
発光部の前にフレネルレンズが装備されていて、ズーミングによって発光部の位置を変えて光量と照射角度を変化させるという素晴らしいメカニズムが採用されています。内蔵スピードライトでここまでこだわっているのは珍しいですが、テレ端側のFナンバーを見ればスピードライトの使用頻度は高くなりそうです。
少し話がそれますが、先日、大手カメラメーカーのエンジニアと話をしていて、デジタルカメラならセンサーやレンズの配置の自由度があるから、どんな形をしていようとも設計はできるのに、今のカメラは保守的すぎるという話になりました。
JETはフィルムカメラですから当たり前ですが、フォルム給送の仕組みを考えて、内蔵せねばなりません。しかも旧態依然とした35mmフィルムを。

レンズ前面から見てみます。ワイド端では開放Fナンバーは2.8ですから実用的にはいいですね。
スペース的にやむを得ないのでしょう。底蓋開閉でフィルムをドロップインする方式を採用しています。でもこの知恵はさすがですよね。オートローディング機能を採用していますのでフィルム装填の失敗はほとんどありません。こうしたメカニズムって、いま作れと言われても難しいであろうことが素人にも想像つきます。つまり、フィルムコンパクトカメラとしてかなり頑張っってこのデザインにしたのです。
AFは3点式で中抜けは少ないとされています。シャッターボタン半押しで測距開始ですね。いちばん惜しいのは最短撮影距離が0.8メートルと遠いことです。専用の近接撮影用アクセサリーも用意され、同梱されていたようにも思いますが、筆者は見たことがないのです。どなたか、いらないなら筆者にください。
個人的に驚きというかたまげたのは、JETにはアイレベルファインダーとともに、ウエストレベルファインダーを装備していることです。

筆者は取り説見ないものですから、ここにウエストレベルファインダーを見つけた時に興奮してしまいました。いちおう実用にはなります。
ボディ上部のそこそこ大きなレバーをスライドさせると、ウエストレベルファインダーに切り替えることができます。
もっともウエストレベルファインダーは井戸の底を覗くような像の小ささで、実用にはかなり厳しいものがありますが、切り替えることができるという事実の前に、文句は封印されてしまうわけです。じつにアイディアが素晴らしい。
設計者と握手して、ハグして背中を叩きたい。イヤがられる可能性はありますけど。ウエストレベルファインダーはローアングルとかマクロ領域には有用ですけど、ファインダー小さいし、この最短撮影距離ではあまり意味がなく。だからスナップなんか撮影しちゃうのはいいかもしれませんけど、そうなるとノールック撮影の方が効率はいいかなあ。

セルフタイマーの棒?シャフト?なんていうのかな。普段はボディのツラ位置にありますが押すと上に出てきます。すごいギミックです。リモコンを使うときも使用するようです。
そういえばJETを使っていた頃、銀座でこのウエストレベルファインダーを使用して中腰で撮影していた筆者を見つけた知人がいて、忠告されたことがあります。かなり怪しいからやめとけと。被写体から怒られるんじゃなくて、知人から忠告されたので、逆に疲れてしまいました。いやあ、楽しいからいいんですよとその場で曖昧に答えた記憶があります。
でもねJETはどのように撮ろうが目立つので、スナップ向きではありませんが、この変なカメラで撮られていることがわかっても、逆に面白がられて怒られることは少ないかもしれません。これまでの経験上知らない人から声をかけられることが多かったように記憶しております。

カメラの背面(で、いいんだよね)設定ボタンありますね。デート写し込みとか、連写設定とか、使わないのであまり見てないんですが。デジカメならLCDつけられるのにね。
旧態依然としたフォルムのデジタル一眼レフやコンパクトのそれを軽く超越していますから、目立ちたがり屋さんに向いたカメラですね。ジジイにはもう恥ずかしいけどね、でもそれを超越したいわけさ。
JETが現役当時だったころ、世間からどのような評価がなされてかは覚えていません。たしかにデザインを最優先させた遊び心に溢れていますが、周りのみなさまも忙しかったので、振り返ってくれませんでした。たしかに本機が現役当時って、筆者もまた超絶に忙しい時代で、プライベートの時にも戯れている時間が少なかったのでしょう。

フィルムはボディ底蓋を開いてから入れます。ドロップインでS字に巻くオートローディング方式。当初は不安ですが、一度もトラブルないし。よくできてます。バッテリー室も同居。バッテリー室は単独で蓋があり、フィルムが装填されていても問題なくバッテリー交換をすることができます。バッテリーは2CR5です。
それに筆者は、若い頃からカメラデザインに対してかなり保守的な面がありまして、ジジイになった今に至るまで、JETのデザインを完全に受け入れてはいないですね。
いや、ちっとは頭も軟らかくなったはずなんですがねえ。好みですから仕方ないけど、これ、もう少し小型化してデジタルカメラにしたらけっこう欲しいような気がします…。いや、どうかなあ。

ズームレバーは手前、奥がシャッターボタンです。つまりカメラを脇から鷲掴みにすると自然に人差し指やら親指が位置するところ用意されているわけです。
でも経験からすれば、JETを現代の若者にみせると最初はウケますね。しかもフィルムカメラだぜというと「すげえ!」といわれて、さらに高い評価をされます。でもフィルムが高くなりすぎたので、最近は尊敬が持続されることはなくなりました。
これからもJETと静かに余生をすごしたいです(嘘)。


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