パンケーキのsmc PENTAX40mm F2.8を装着しちゃうところが、なんかMXに気を使っているわけですよ。でも、このレンズ、他のテッサータイプを基本としたパンケーキタイプのレンズよりよく写るよね。
「アカギさんはあまりいいこと言わないですが、ペンタックスMXが好きなので購入したいと思います」というメッセージをいただきました。
いやいやいやー、人の意見なんか気にしないで好きな機種を購入してくださいまし。私ごときが何を言っても重要な意味を帯びてはいないですぜ。マジでそう思います。
ただ、アカギが特定機種の良し悪しを言っていたというのはかなりの誤解で、筆者は、ご存知だと思うのですが、カメラ博愛主義ですし、あまりスペックで大騒ぎすることはありません。
むしろ重要なのはフィルムカメラならば、巻き上げの感触とかシャッター音とか、モーターの動作音、ファインダーの見え方です。
どのみちプライベートではフィルムカメラを持ち出して、街角の古びた板塀とかヤレたお地蔵さんなんかを撮影しているのですから、高速連写とかいらないというか関心がないんですよね。つまり筆者がカメラの良し悪しを基準としているのは、ほとんどデザインと、動作感触とか動作音などの情緒的な部分、あとはファインダーの性能なのであります。
カメラを小さくしてもシャッタースピードダイヤルを小さくしてませんよと言いたいんだろうなあ。でも巻き上げレバーはもう少し長くてもいいんじゃないのか、無理ですかね。
ペンタックスMXは全体的にみてカメラとしては好きですよ。ただね、巻き上げレバーの華奢な感じとか、巻き上げの感触とか、シャッター音の軽さや、残響する音とかが生理的にいまひとつな感じがするわけです。だから常に共にありたいという気持ちが少々弱いんですね。いずれも個人の感想です。
ただ、オリンパスOM-1よりも小さいですから、これなら、仕事の合間の移動時間にも小さなショルダーバックからすっと取り出して、軽快に撮影できるよなあとか、ちょっとした飲み会に行くついでに夕暮れの街なんかをサクっと撮影するのにいいんじゃあないかとか妄想しちゃうわけです。そうです、使用にあたって、妄想を持つことが持できるカメラが重要です。
ということで、MXを久しぶりに取り出して、シャッターを切ってみましたが、うーむ。やはり感動が希薄なんですよね。“ カターン” という軽薄なシャッター音、滑らか感には欠ける巻き上げレバーの動作も耳と親指の記憶のままでした。
筆者はヲタクですからもちろんMXのモータードライブも所有しています。これもけっこう小さくできていて、フォルムとしてはお気に入りです。
最高5コマ/秒くらいですが、ヒステリックな動作音はシャッターを切ったあとに、思わず周りを見渡してしまうくらいです。油が切れているのかなあ?でもこのモードラはコマ速度が任意に変えられるので、機能的にもお気に入りなんですよね。
モータードライブMXを装着、コマ速度を任意選択することができます。バッテリーはLXの専用のモータードライブ用のニッカド電池を装着してます。互換性がありますので使えるんですが、カタチ的には出っ張りますね。
先にMXは優れた携行性であることも魅力のひとつであると言いましたが、長焦点レンズや重量級レンズなどを装着すると、ボディだけでは不安定感が増してしまうので、グリップのあるモードラは実用的です。でも中古カメラ店ではMXのモードラをあまり見ないですねえ。
ボディは小さいけれど、ファインダー倍率が0.95倍と大きく視野率が95パーセントと高いとか、ファインダースクリーンも交換できちゃうとか、これもエラいんですが、筆者の老眼+近視の矯正視力では、マット面での切れ込みがいまひとつに感じます。もちろん個人の感想です。ボディを低くするため、ファインダーの光学系に一部なにかを負担させているのがその理由でしょうか。
ファインダー内にはシャッタースピードや光学式読み取りの絞り値表示窓がありますが、これらはなくても、筆者の残り少なくなった今後の人生も不満なくやってゆくことができると考えています。
メカニカルカメラですから、例のごとくバッテリーを抜いて使用しています。あの信号機みたいなメーター表示を見なくて済みます。でも、受光素子はSPDですよね、応答速度速いですね。お好きな方はバッテリー入れましょう。
デザイン的には“一眼レフ” であり続けることの重要な意味を主張しているペンタプリズムの三角屋根まわりが好きですし、OM-1と違っていカメラの軍艦部にシャッターダイヤルがあります。これは操作性の問題というよりも“いつもの位置” にあるという気持ちですね。安心感でしょうか。
狭いスペースの中に思い切り機能を詰め込みましたという精神は筆者も好きでありますが、“本気撮り” の時にはMXは避けたくなるのです。
フィルム室をみると、いかに小型化に頑張ったかがわかるわけですね。パトローネを見ながら、汗水と鼻水垂らしながら懸命になって仕事をしたであろうエンジニアの姿が思い浮かびます。
これ、はじめて書きますけど、MXをアサインメントに使用した時のエピソードを思い出しました。たしかJリーグのスタート時期だと思います。とある有名なサッカーの選手の特写のためにMXを持って仕事用に使いました。
なぜ、この時にMXを選んだのか、記憶が薄いんですが、たぶんグラウンドと室内で、短時間の間にそれなりのカット数を撮影することが必要で、しかも、珍しく、単独で撮影行わなければならない仕事だったから、できるだけ機材を軽くしようと考えたんでしょう。
ところが撮影がはじまるとMXの調子が悪くなりました。こうしたお仕事の撮影では機材トラブルがあっても涼しい顔をして対処するのがプロなんですが、もしかすると、周りにトラブルがあったことが伝わったもかもしれません。筆者も若いころがあったんですぜ。後の撮影は予備のMXで続行したのか、ペンタックスLXで撮影したのか覚えていないんです。こうしたネガな印象というのはどうしても鮮明に覚えています。ちなみに撮影した写真の出来がどうだったかという記憶が少々薄いんですよね。困るなあ(笑)。
いちおうフルメカニカルシャッターなのになあという残念な印象のみがその後強く残って、この後に長くネガなイメージが引きづられて残されているのかもしれません。
もっとも今なら、MXを仕事に持ち出すこともないわけですから、故障しても諦めることができます。仕事の責任もありませんから、近々に、MXを持ち出してスナップに使用して、魅力あるものかどうかを再度、検証してみようかと考えています。
前回の連載でも書いたかな、MXの製造中止が発表された時に、写真家の大倉舜二さんが、半ダースくらいMXを購入したという話を聞いて、これはご本人にお会いした時も確認して、MXを見直したんです。大倉さんには動作感触とかを聞き忘れてしましました。怖くて聞けなかったのかもしれませんが(笑)。
ペンタックスMXにはきっとこれまで気づかなかったよい部分があるに違いありません。どうぞ気にせずにお買い求めくださいませ。
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。