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第32回 デザインがキレイなコンパクトカメラ「キヤノネットGIII QL17」

2025/07/25
赤城耕一

今回はまたしてもキヤノンレンジファインダーカメラの話をする予定で準備しておりましたが、目的のあのカメラが機材庫から発見できないので、急遽予定を変えて、キヤネットGIII QL17の話をします。
 

あのカメラですけど、うちから持ち出した方はすみやかに返却してください。今なら怒りませんので。いや、待てよ、お金に困って売り飛ばしたのかな。記憶が曖昧です。まあ、とにかく今回は予定を変更して進めます。
 

キヤノネットGIII QL17の話とかやめろよ、ったく、フィルムコンパクトのカメラなんかするんじゃねえよ、の声が聞こえてきそうですが、もうね、こう暑いと、プライベート時期にフラッグシップ機なんか持ち歩く気にはなれませんしね、もしかするとちょうどいいかもしれません。 それに最近はフィルムコンパクトカメラってそこそこ人気なんですよね。本機はもちろんAFではないけど、基本機能はかなりしっかりしています。
 

フィルム巻き上げレバーは大型です。少々、細身ですが、スムーズな動き。惜しいのは小刻み巻き上げができないことです。

 

キヤノネットGIII QL17 は1972年登場ですね。フラッグシップのキヤノンF-1よりも後ですね。デザインがキレイなコンパクトカメラです。レンズはキヤノン40mmF1.7  4群6枚構成。最短撮影距離は0.8mです。ハーフサイズになびくということもなく、35mmフルサイズ機ですぜ。

 

カメラ名にあるGは、品質の向上を意味するグレードアップの頭文字、-IIIは初代のキヤノネットシリーズ、次はニューキヤノネットシリーズ、そして、第3世代というところから付けられていたとキヤノンのサイトに書いてあります。なるほど、高級コンパクトカメラだったと。でも10年くらい売られていたロングセラー機だったようです。すごいですね。

 


専用フードもあります。厚みのあるプラスチック製で視野がケラれないように切り欠きがありますが、ファインダーでは邪魔くさいです。でも装着した姿は美しいですね。

 

過去、中古市場で、ものすごく廉価だった頃ですが、本機を買い集めていたことがあります。コレクションではなくて、予備機のつもりで買ってたのですが、あまりに廉価だったのでついお店で見つけると買ってしまったり。

 

それから、写真制作のココロザシの高い少年少女に差し上げたりもしました。おそらく現在まで半ダースくらいは購入しておりますね。

 


QL方式です。フィルムのリーダー部を右の赤線のところに置いて、裏蓋を閉めれば装填完了です。うまくいくといいけどね。

 

コンパクトと侮ってはいけません。そんなに小さいカメラじゃないけど、初代のブサイクなキヤノネットと比較すると3代めにして、だいぶ洗練された印象ですね。少し重たいですが作り込みがけっこういいわけです。
 

ブラックペイントボディは使い込むと真鍮の地金が出てきます。これがまたいいわけです。搭載されたキヤノン40mmF1.7は仕事のサブカメラとして使用しても問題ないくらい素晴らしき性能です。ほんとです。過去、アサインメントのモノクログラビアの撮影にも使用したことありますが問題ありませんでした。
 

大袈裟なバッテリーチェックボタン。ファインダーアイピースの脇に置くってのは少々、デリカシーに欠ける感じですよね。

 

40mmって、いまけっこう見直されていて、用意しているメーカー多いけど、かつてはフィルムコンパクトカメラの代表格の焦点距離でしたね。35mmと50mmの中間を埋めるという。別にズームでサクっと設定すりゃいいじゃねえかよと言われそうですが、んなことはないですね。本レンズはF1.7の大口径ですぜ。
 

高感度フィルム入れて、闇夜のカラスも写せます、くらいの勢いです。あ、このキャッチは他のメーカーだったか。
 

本機は自分でシャッタースピードと絞りを決めるマニュアル露出可能です。電池なくても機能しますぜ。

 

基本はシャッタースピード優先AEですが、メカによる駆動ですから電池なくてもイケます。シャッタースピード、絞りそれぞれ単独設定できます。災害時に持ち出しても記録できます。
 

機構的にシャッターストロークが長くて、これが本機の大きな欠点ですね。だからシャッターを切る場合にはゆっくりとじわじわシャッターボタンを押しつつ、焦らず撮影します。少し緊張します。

 


MADE IN TAIWANの文字あり。キヤノンは昔から台湾の協力工場でカメラ作っています。今も一部のデジカメやレンズがそうですね。

 

フィルム装填はQL方式ですので、カーリングの強いフィルムの場合は少し困るぜ、という話は前にもしましたが、簡単に考えずに十分に気をつけてください。フィルム高いですからね。
 

極端な逆光でなければ、搭載されたキヤノン40mm F1.7の写りには感動します。先に書いたようにアサインメントにも使いました。カラーですと少しあっさり感ありますが、モノクロの階調の再現は決して悪くないですね。

 


珍しく作例が出てきましたのでアップします。斜光線の条件ですが、よく階調を繋いでくれています。合焦点のシャープネスは十分。一眼レフで撮影したと言っても誰もわからないでしょう。

 

【撮影データ】キヤノネットGIII QL17・キヤノン40mm F1.7・絞りF8・1/500秒・コダック トライX

 

AEの精度はポジフィルムを使用したことがないのでよく分かりませんが、マニュアルでの露出設定ができるので、とても安心です。
 

キヤノンはフィルムカメラ時代は「高級コンパクトカメラ」の分野には参入していないのですが、なるほど本機で撮影してみると、そんな区分は不要だったなと思うわけです。

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