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カメラ悪酔強酒

第12回 ミノルタCLEを何度も何度も見直してます

2025/03/06
赤城耕一

もう何度となくネタに使っているウチのCLEなんですけどね、本当は爬虫類系の革とかキライなんですが、個体がまずまずだったので仕方なく、お越しいただいたんですが、一度調整していただいたのみで、いまも絶好調であります。

 

ライツミノルタCL(1973)を探しに中古カメラ店に行ったら、ミノルタCLE(1981)を購入して帰ってきたことがありました。
 

この2機種って、これまで懲りずに数回の売り買いを繰り返してます。繰り返すくらいなら、そのまま持っておけばいいのですが、使用頻度が落ちてくると、ほんとうにこれらのカメラを必要とする人のところにいったほうがいいとか思い手放したりします。エライでしょ?でも、気持ちはまた変わることになりますからね、こうした病気は寛解することはないのでしょうか。
 

ミノルタCLE登場時は筆者も写真を勉強する大学生、いや、研究生だったのかな忘れたけど、それなりに興奮したことを覚えております。
 

ライカMマウント互換のレンジファインダー機がミノルタ名だけで登場したことにです。ライツとミノルタの熱い関係がありながらも、これを許可したのはすごいですね。許可なしで突っ走ったのかもしれませんが。
 

だとすると、同盟国では下位にいるのに、親分の国を裏切る行為くらいのインパクトありましたけど、当時のライツはミノルタなしでは生きてゆくことができなかったから、ガマンしたのでしょうか。知らんけど。いまのライカとパナソニックの関係なら、パナソニックがCLEを開発したら、すぐにライカCLEとか登場しそうに思うわけです。
 

筆者のような、ホンモノのライカMが購入できない貧しい写真学生にとっては夢のようなカメラに見えましたよ。しかもその当時にはMシリーズライカにない絞り優先AE機構を装備していましたし。これはこれで目立つ存在でした。
 

ライツミノルタCLは品格は高いんだけど、外装が薄くて、すぐに凹むのが気にいらないですね。あとシャッター切った時に巻き上げレバーに響く感じとか、動作音とか、ライカの仲間なのに官能性に乏しいというか。少々建てつけの悪い建売住宅みたいな印象もあり、荒っぽく扱うとすぐに壊れるような。布幕で縦走りというよくわからないシャッターを採用していますが、特別にシンクロ速度が速いわけじゃないし。
 

シャッターダイヤルまわりは、まんまX-GEなんですよね。コストを下げたかったわけです。それでも長い間売っても販売台数3万台ほどですからねえ。一眼レフの仕組みをレンジファインダー機に応用したアイディアはよかったですね。コシナのベッサシリーズもそうでした。

 

フィルム巻き上げのたびにレンズの後ろにドンと出てくるCds受光部のついたアームは愛嬌あるように見える時もあるのですが、そこまでしてメーター使わねえんじゃねえかヲレみたいな気持ちになります。個人の感想です。
 

あと、CLでイヤなのはフィルムの送り、コマ間が一定にならない個体が多いことですね。
 

王道のMシリーズライカって、コマ送りもキチっと調整されていて、コマ間がパーフォレーションにかからないように完璧に調整されているものが多い、いやそれがデフォルトですが、CLはこの辺りも雑でした。小刻み巻き上げもできないし、フィルム巻き上げに気を使わせるんじゃねえという気持ちになります。
 

CLに内蔵されているブライトフレームは40mmと90mmのみ。ファインダー全体を見渡すと35mmレンズの画角相当になりますとかアナウンスされていますが、ざけんなよ、って感じがするわけです。
 

いくらアバウトで怠惰な日々を送る筆者でも、なんかね、こういうところが納得できないわけです。緻密性とか欠けるじゃないですか、ライカの仲間なのにさ。だからライツの35mmファインダーを装着したりします。これもいまひとつ似合わないんだけど。でも実用性としては十分であります。
 

CLにはキヤノン25mm F3.5を装着して、北井一夫さんを気取って、三里塚行くってのもいいかもしれないけど、令和のいま行ってもね、撮れるものはそんなになさそうです。

 


ライツの金属製35mmファインダーを装着してズマロン35mm F2.8を装着しました。ファインダーが立派すぎて、よい写真は撮れそうにもありませんな。

 

両機ともに懲りることなく、再びいま手元にある状態なのですが、違うカメラなのに、今でも持ち出す時に悩みますねえ。変わらないなあ。
 

この40数年の間、自身の使用頻度としてはCLよりもCLEのほうが多いのかなあ。CLEのあの「ジャッ」という安っぽいシャッター動作音のほうが気持ちが上がるようになりました。布幕横走りの味わいです。また、そのうちまた飽きるかもしれませんけど。
 

CLEの外装、プラスチックボディなのは今ひとつなんですけどね。ボディ右袖なんか、そのままミノルタXG-Eですわ。シャッターボタンの通電でファインダー内の赤色LED表示が開始されたりします、ろくに見てはいないんですけど。
 

CLEは全体にわりと仕上げは良い部類に入るように思います。プラスチック製であることは確かで、使い込むと次第に安っぽくなりますけど。
 

あと全面のデカいセルフタイマーとバッテリーチェック用の赤いLEDがイヤなんですが、これは諦めるしかないですよねえ。以前所有していた個体にはパーマセルを小さく切って貼ったりしました。すぐに剥がれてがっかりしますけど。
 

CLがAE化されたらCLEってネーミングにしてしまうのも安易といえば安易ですが、筆者はAEをあまり信用しておらず。
 

いや、信用していない、精度の問題というよりも、測光範囲のクセがカラダに合わないんですね。
 

画面内のハイライトに引きづられて、アンダー露光になることが多いような気がするからです。オマエはそんなに明るいところが好きなのかと文句をつけたくなるわけです。夜景なんかAEで撮るとみんな、どアンダーになったり。おまえさ、ダイレクト測光なんだし、そんなに明るい光源が好きなのか、誘蛾灯なのか?シャッター幕に刻まれたQRコードみたいな乱数パターンが泣くぜ。
 

ややアンダーめに向くといわれるリバーサルフィルムにイイとか言われますけどね。ちゃんと適正露出になるようにコントロールしたほうがいいですぜ。
 

意外に思われるかもしれませんが、筆者はモノクロでも自分の考えるネガ濃度にならなかったりするとね、がっかりするわけです。
 

これね、モノクロだからラチチュード広いから問題ないとする人いるんでしょうけど、最終的なプリントの落とし込みまで考えると、ネガの濃度の揃いがきっちりしていないのは気分悪いんですよね。
 

AEでは撮ることは少ないからこれでいいといえばいいんだけど、マニュアルだとLEDメーター表示を一切しませんよという潔さがね、また気にいらないわけです。
 

いや仮に点灯してもアテになんかしてないんだけどね。でもさあメーター動かないけど、バッテリーは要るわけ。電磁シャッターだからですよね。これがイラつくわけです。
 

メーターを使わないのならやはりフルメカニカルのライツミノルタCLを選ぶかライカCLでしょーという考え方も再びアタマをもたげてくるんですね。どうなんですかね、本当のところ。そんなに萌えないようにも思うのですが、これは時代とか自分の気持ちの変化なのでしょうか。でもね、コマ間の揃いは、CLよりもCLEのほうが良いんじゃないかなあ。

 


ライツの金属製35mmファインダーを装着してズマロン35mm F2.8を装着しました。ファインダーが立派すぎて、よい写真は撮れそうにもありませんな。

 

CLEは28mmのフレームが内蔵されてますよね。これは有用と考える人は少なからずいますよね。
 

ただですね、CLEに用意されたMロッコール28mm F2.8って、経年変化でズタボロになった個体ばかりじゃないですか?硝材は曇るわ、気持ち悪いブツブツは出るわ、レンズコバの墨ヌリとか剥がれますしねえ。これもなんかツメが甘い感じがするわけです。どなたですか、この仕様を選択した技術者の方は?
 

いや、ライカをはじめとする他のメーカーのライカマウントの28mmを使えばいいだけのことなのはよく理解しておりますよ。でもねMロッコール28mm F2.8はマトモなものだと、ものすごくよく写りますから、余計に腹立たしいわけです。CLE使うと毎度このレンズのことを思い出すから不愉快なわけです。我慢しますけど。
 

写真家の長野重一さんはCLE+Mロッコール28mm F2.8の組み合わせで「遠い視線」を制作されましたが、これは憧れでした。そんなこともあって、手放してもCLEはウチに戻ってくるようなのです。単純です。
 

CLEの基線長は49.5mm。ファインダー倍率は0.58倍だから、有効基線長は28.7mmmになります。CLの18.9mmよりも長くなりました。28mmよりも長焦点のレンズを使う場合のアドバンテージも向上しております。まあでも90mmレンズを使うのとかはヤメたほうがいいと思いますけどね。精度よりも使いづらいです。
 

CLEはAE機だから、長持ちしないといいますけど、いまでも専門でメンテナンスしてくれる会社もあるし、ライツミノルタCLを机の角なんかにブツけて凹ませ、気持ちを落ち込ませるよりも、少しスレたCLEを使い、町に斬り込んで行く方がよくないですか。メーターの傾向は気に入らないんですが、なかなかによい仕事をするカメラだと思います。

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