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カメラ悪酔強酒

第45回 1985年発売のオートフォーカス35mm一眼レフカメラ「キヤノンT80」

2025/10/25
赤城耕一

ボディはコンパクトで良い感じです。グリップの穴のデザインがユニークですが、ゴミが入りやすいんじゃないかなあ。コブつきの標準ズームですが、これも愛嬌があります。レンズ前のオレンジのリングを見ると、某社を思い出しますけどもちろん40年前ですから関係ありません。

 

また不人気キヤノン一眼レフの登場です。EOS登場前のFDマウント互換のAF一眼レフの話をしようと思います。
 

取り上げるのは1985年登場のキヤノンT80であります。そうですね、ミノルタα-7000登場した年に出てきた、キヤノンのAF一眼レフというわけであります。ええ、あのαショックの最中なのですからご苦労さまです。

 


AC35-70mm F3.5-4.5レンズには距離のリミッターがありますね。これがないとエラーした時に復帰が遅いのかしら。

 

この当時、AF化するにはミノルタみたいにマウントを変えてしまうという手法がもっとも手っ取り早い方法でしたけど、キヤノンは粘ったというか、時期的にEOSの開発研究は当然完成時期に近づいていたことは間違いないわけですけど、FDマウント互換機でもAF化はいちおうやってますアピールはやらねえとまずいんじゃね?ということで作られたんじゃないのかなあ。それでも、いちおうコンシューマモデルとしてはT80がキヤノン初のAF一眼レフということになるわけです。愛称は「アートロボ」でしたかね。
 

AF方式はCCDラインセンサーを利用したTTLコントラスト検出方式を採用しています。ご存知のとおり、位相差AFとは異なりますし、AFの速度についてはいまひとつでありますが、この当時としては精度的には安定していたのかもしれません。40年前ですもんねえ。
 

いま使ってみると「おまえのフォーカスしやすいところにこちらが合わせてやるぜ」くらいの気持ちで使う必要があります。暗くなると合わないし、コントラストの低いところでは絶望的です。AFの合焦音もあるのですが、年寄りには聞こえづらいですね。

 


ズーミング用のレバーです。シネカメラ用のレンズみたいでなかなか良い感じで操作性も悪くないんですよね。

 

撮影モードはマルチプログラムAEを使うのが基本。測光は中央部重点平均測光を採用していますからビギナー向けなことは明らかです。使いやすいですけどね。
 

撮影モードはLCDに表示される撮影目的別のアイコンを選ぶという考え方がとられています。ピクチャーセレクトとか呼ばれたらしいですね。
 

LCDに走っているヤツが表示されたら、スポーツモードだぜ、とか。3人の黒い人が並ぶのは記念写真用とか。黒い人とが一人白い人がいるのは被写界深度が浅いとか?もしかすると違うのか。調べるのが面倒なので興味のある人はお願いします。
 

おじいさんになると、プログラムAEそのものの考え方はいいけど、こうしたアイコンの表示は少々イラっとします。どこかの洞窟から発見された、旧石器時代の狩猟の画みたいじゃないですか。違うのか。当然、実際に設定されるシャッタースピードとか絞りとか撮影者に知らされることはありません。すごい割り切りですけどね。被写体の挙動とアイコンが一致しなくても当然撮影ができます。いちいちピクチャーをセレクトなんかしていられねえよ、という人も多かったと思いますけどね。

 


基本はプログラムで全部撮れますのでどうぞよろしくです。あまり触らないように。いや、触るところは本体にはあまりありません。

 

でもね、「マルチプログラム」はT80の最大のアピールポイントですから、その目的は撮影者をいかに簡単な操作でラクさせて、キレーな写真を作ることができるのかということが目標とされています。
 

なんか機能的なツッコミ入れると悪口ばかりになりそうですが、実は筆者は本機のデザインとか、けっこう好きなんです。あ、人にあまり言わないでください。
 

つまりFDマウントを変えずにAFにするために、レンズにモーター仕込んだら、コブができちゃいました。みたいな。なんか使いもしないスイッチとかあるし。

 


でもまあ、なんか設定したい人はこういうピクチャーセレクトによるプログラムシフトのモードがありますけど、人が走っていて、後ろに線があるということは流し撮りしろってことですかねえ。この理屈でいうと、被写界深度は深めになるから風景にもいいんじゃねえかな。「30」の数字はシャッタースピードらしく、このモードのみ選択できます。

 

本機のレンズに限りませんが、AFの黎明期にAF駆動用のモーター仕込んだレンズ見て思うに、二人羽織の芸を思い出すというか、コブの中に人がいて、人が見えないとこと働いているみたいな健気な感じがするわけであります。我ながら愛のある言い方です。
 

T80をAFで動かすためのレンズはFDマウントながら信号伝達とモーターが仕込まれて、「AC」と呼ばれました。AC50mm F1.8の他に、標準ズームのAC35-70mm F3.5-4.5、AC75-200mm F4.5のレンズがあったそうです。望遠のズームはまだ見たことないんですが。

 


DX対応していないから、ISO感度は自分で合わせます。モードダイヤルを押して、右側のレバーをカチカチ動かすと、プログラムモードが切り替わります。何か設定をしているヲレを気取りたい時はお使いください。

 

T80は、なにかと評判がいまひとつなAF一眼レフです。これもあまり人に言いたくはないのですが、正直に告白すると、けっこう筆者は好きだったりするわけです。安いツクリで、思い切りプラスチッキーなチープなトイカメラ的にも見えますけども、ボディカラーはグレーで、意外とよい感じです。
 

数年前T80を見せた若い女の子に可愛いカメラですねと言われて、おじさんは思わずプレゼントしそうになったことがあったのですが、踏みとどまりました。だって、もう程度の良い個体ないですぜ。今さら探すの面倒だし。

 

背面です。なんかEOSっぽい感じもしなくはないですね。親指のところにグリップありますね。シャッター音とかいかにも安い感じがしてステキです。

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