デザインはAE-1からのそれを踏襲しているように見えるのですが、なんかさらに廉価なカメラに見えるのはなぜでしょう。思い切りプラスチッキーだからかな。
今回は1982年登場の絞り優先AE+フォーカスエイド搭載の一眼レフ、キヤノンAL-1の話をします。
本題に入る前に AL-1のモトネタとなったAV-1の話をします。キヤノンの公式アナウンスでは1970年代のカメラ海外市場では「絞優先AE一眼レフ」が多数を占めていて、キヤノンの海外販社から、絞り優先AE一眼レフ開発の期待の声が出て、これに応えざるを得なくなり開発されたのがAV-1だというのです。FD系レンズを使用する一眼レフとしては初めての絞り優先AEオンリーのカメラであります。
まぢかよ。なんかね、海外に言われたからって、キヤノンAE制御の根幹となるシャッタースピード優先AEを捨てていいのかよ?あ?って、ことになるわけであります。カメラ雑誌でさんざっぱら、シャッタースピード優先のAEの有利さを説いていたライターさんの中には暴れ出す人まで出ました。嘘ですけど。
フィルム感度ダイヤルですが、見づらいですね。巻き戻しクランクの基部にあります。取り説みたら、露光補正をこれでやれと書いてありました。
でもお客さまの数が日本国内の何十倍、何百倍ある海外でそう言われたら開発せざるをえないわけですね。
すでに両優先AE機のA-1の技術もありますし、絞優先AE機なんて、キヤノンのエンジニアにとっては、絞優先AE一眼レフなんか、寝ながらでも開発できそうです。
とはいえ、筆者はAV-1を見たときイラついた理由は、絞り優先AE機になったことではなくて、カメラ上部にあるシャッタースピードダイヤルが恐ろしく簡易的なものになったからであります。
だって、ダイヤルにはAと1/60秒とBとセルフタイマーのポジションしかありません。マニュアル露出のことなんか一切、考えられておりませぬ。すべての条件でぜんぶ絞優先AEで撮影してね、という意味ともとれます。
低速シャッタースピードを省略しますと、コストを下げられんでしょうかねえ。Aのポジションを外すには中央のボタンを押します。フィルム巻き上げはAE-1より滑らかかもしれません。それでも不満ですけどね。
筆者はこれだけで暴れたくなるわけです。逆光とか被写体とかの反射率で露出がヤバすともなれば、即刻マニュアル露出に切り替えて撮影するのですが、AV-1ではムリです。ラチチュードの広いカラーネガフィルムを使いなさいということなのかな。いちおう、逆光補正ボタンはありますね。+1.5とかになるのかな。えらくテキトーですよね。露光補正するときはフィルム感度ダイヤルを使えばいいわけですけどね、面倒ですね。
ほぼ同時代に登場するニコンEMもそうだけど、絞優先AEオンリーって、ビギナーがその意味がわからなくても、とにかくまず「よく写る」一眼レフを持たせちゃえとしたんじゃないんですかねえ。
筆者みたいに、取り説読むのがキライで、絞はF16でいいやとか適当に設定して、撮影したらどうするんでしょうねえ。手ブレ続出とかならんのかしら。ま、一眼レフに興味あるやつは、そのうち上級機種やレンズ買うんじゃねえのかなという期待も含まれているのかもしれません。勉強せえってことか。
バッテリーは単四を2本使います。この蓋の爪もプラスチック製で折れやすく、慎重に蓋を閉める必要があります。こんなことに気を遣うのは疲れます。どなたですか?こういう仕様にした設計者さんは?
元は海外向けのカメラということもあるし、ビギナー向のくせに思想をひっくり返した機種ということで、評判にもなりませんでした。
と1979年登場のAV-1の話をここまで書いていたのですが、ウチあったAV-1を探してもついに出てきませんでしたで、急遽AV-1をベースにしたAL-1の話に変更したというわけであります。すみません。AV-1をウチから持って行った方、怒らないので申告してください。
気を取り直して、AL-1の話をします。AL-1は絞り優先AE機なんですが、AV-1と異なり、わりときちんとしたシャッタースピードダイヤルを備えています。つまり、マニュアル露出設定時にもシャッタースピードが選べるわけです。これだけでも評価したいと言いたいところですが低速側のシャッタースピード設定は1/15秒までで、あとはBはあるけど省略されています。少しイラっとします。測光素子はSPC、シャッターは測光は中央部重点平均測光ですね、この辺りの仕様もなんかユルい感じです。
AL-1の大きな特徴はCCDラインセンサーによるコントラスト検出を行うフォーカスエイドを備えていること。最初のキヤノンAF一眼レフEOS650登場の5年前のことです。フォーカスエイドが当てになるのかどうかという話ですが、まあ、使えなくはないは思います。
それよりもたとえばスプリットマイクロプリズムで確認した上下分割や、像のチラチラを▶︎⚫️◀︎で表示しているようなものです。フォーカスが外れている場合は矢印の方向にフォーカスリングを回し、中央の緑の丸が点灯した時に合焦となります。困るのは中央の緑の⚫️が点灯することばかりが気になり始めてしまうことであります。その合焦の様子ばかりに気を取られ、被写体の観察がおろそかになるわけであります。それにしても、えらく神経質なフォーカスエイドなんですよね。不安ならちょこっと絞ればいいんじゃねえのという経験則は認めて貰えないでしょうね。
ちなみにファインダー内の露出値を示すのは指針で、ここもLED表示にしてしまうととても煩わしくなると考えたのではないでしょうか。これ、フォーカスエイドを絶対的なものと頼りにして、撮影する人って、結構いらしたのかな?被写体が動いていたら、永久に合焦点は点灯しないと思うぞ。
銘板にはQFとありますが、Quick Focusの略なんだろうなと。緑の合焦マークを灯すにはそれなりに時間かかりますぜ。
全体はプラスチッキーでテラテラした、安っぽいモノでモノとしての魅力がまったくありません。バッテリーは単四電池を2本使います。ひどいのはバッテリー室の蓋のツメがプラスチックで折れやすいんです、中古カメラ店でみるAL-1はここにテープが貼られていたりしますからねえ。今ならリコールものです。
レンズはAV-1の頃からNew FDに切り替わりますね。FDはレンズ鏡筒基部にある銀色のリングをしめつけて固定するスピゴットマウントを採用していたので、レンズ装着時に鏡筒を回す必要はないのですが、リングが定位置にないと装着できなかったりすることありましたね。また車の振動でリングが緩んだりすることもありましたので、それなりの注意は必要でした。
New FDでは、レンズ鏡筒に着脱ボタンを設けた、なんちゃってバヨネットマウントになりました。ボディ側のマウント形状は同じですから、FDが装着できるカメラならばNew FDも装着できます。
同時に小型軽量化をはかり、標準のフィルターアタッチメントをFDの55mmから52mmにしました。これじゃ、宿敵ニッコールと同じになりますね。
New FDは鏡筒もフルブラック仕上げになって、小型化されたものも多く、見た目は悪くないんですが、実際の鏡筒の材質とか作り込みとかみると、FDより安い感じになったものも多くて、これも少々イラっとしますね。コストを思い切り下げてやる!という雰囲気がその姿とは裏腹にレンズ全体から強く感じられちゃいますね。
またレンズを後玉方向からみると、レンズ単体状態では絞り羽根が完全にひっこんでいないことがわかります。レンズ内部の状態を観察する時には、いささか厄介でした。
このため中古カメラ店の多くでは、リアキャップをくり抜いて、自作キャップを作り、レンズ内部を確認しています。ご苦労さまです。修理業者においても、メンテナンスのことが考えられていないとあまり評判がよろしくありませんでした。
ま、筆者みたいに、New FDが気に入らないからと旧FDに狙いを定め、さらにS.S.Cはよく写りすぎると、レンズ先端が銀色のシングルコートのものを選び、これにはフードも金属でなければならぬと探し回る人みたいにならないように、今後注意して行動してください。あ、うちからAV-1持っていかれた方、大事に使ってください。
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