キヤノン7ブラックボディです。少しだけ全体が小さくみえます。ネックストラップアイレットのみならず、本来はナス環までブラック塗装されていました。以前はそれなりに高価な設定でしたが、最近はずいぶん中古実勢価格が下がりました。
キヤノンって、過去を振り返らなず、常に先をみるイメージあるんですが、1970年代の初頭くらいまではレンジファインダーカメラを現役で販売しておりました。
ニコンSシリーズよりも長く販売していたわけです。私より少し先輩のカメラマン、とくに報道畑の方ですと、キヤノンPあたりを長く愛用していた人も少なからずいて、酒場でお仕事の武勇伝と共にキヤノンレンジファインダーカメラの優秀性を聞かされてたりするわけです。面倒ですね。
筆者は生意気でしたから、そんなにエラそうに語られても、ライカMシリーズのほうがエラいんじゃねえのか?あ?と内心は思っていたのですが、黙っておりましたよ、もちろん。平和を維持するためであります。大事なことです。カメラのランクで写真は決まりません。
でもね、時を経ると、キヤノンのレンジファインダーカメラの良さというか、面白さというか、存在感というか、独自性というか、これってけっこうイケるんじゃねえのかと思い直すわけです。こちらもトシを経るごとにカメラ博愛主義者になっていったわけです。
メーター指針です。低輝度と高輝度の切り替え式になっています。
で、今回はキヤノン7を取り上げてみます。反論を承知でいいますけど、本機はキヤノンレンジファインダーカメラの中の野暮ったさのデザインの代表格みたいな感じがします。
そう、“おっさん” カメラな感じですね。それもそのはず、キヤノン7は筆者のバースイヤーキヤノンでありました。おっさんどころか、とうに還暦は超えた機種であります。ただね、キヤノンPあたりと比較すると、中性脂肪が増し、血糖値が高いような自分の仲間を見るような感じで、若干の抵抗感があるわけです。
ところがですね、キヤノン7はブラックになると、わりとよい感じにみえます。昨今、カメラはブラックよりもシルバーボディのほうがいいんじゃんと最近思い始めていたのですが、こと、キヤノン7に限ってはブラックがいいですね。そうでもないですか。わりと塗装の塗りが厚い感じもいいんですよね。
キヤノンはVIまではローマ数字で、7からアラビア数字にしたわけですが、理由はあったんですかねえ。VIIのほうがカッコよかったんじゃないかなあ。
ブラックですと“おっさん”臭さ不格好さが少々薄まること、怪しい機関の人が持っていそうなカメラみたいにもみえます。はい、これはイメージです。
不格好になったのは、セレン光電池式のメーターを内蔵したからです。いや野暮ったいとか不格好というのは、筆者の判断でありまして、 いまの価値観とか、若い人からみると異なってみえたり、わかりませんけどね。
ちなみにセレンの中に距離系窓が備えてあり、基線長をできるだけ長くして、測距精度を稼いでいる知恵というのは、いま見ても大したものだと思います。
ブライトフレーム切り替え用ダイヤル。手応えは悪くないですね。
メーターは低輝度と高輝度の切り替え式で、手動で合わせます。ただ、メーター表示窓がボディ上部にあるためアクセサリーシューが省かれました。本機にフラッシュやストロボをつけるにはアダプターを必要とします。これは少々厄介ですね。
ファインダーを覗いてみますと、意外や意外なんですが、ブライトフレームがキレイなわけです。破線が多いのは少々不満ではありますけど、採光窓からの光の採り入れが大きな手助けになっているのでしょう。これが写欲湧きますね、まぢで。
内蔵されたブライトフレームの種類は35mm、50mm、85mm/100mm、135mmの4種から選択することが可能です。
背面からみると角張ったイメージがより強調されますが佇まいとしてはわるくないですね。
フレーム下部には焦点距離も表示され、パララックスも自動補正されるなど親切ですが、当然のことながらレンズに応じてフレームは自動切り替えするわけではなく、ダイヤルで手動セットします。
操作の楽しみと考えればこれもありかなと思いますが。そう気になるものでもないですね、急ぐ旅でもなし。
ファインダー倍率は0.8倍ということなので、そこそこに大きいですね。でも眼鏡をかけていると35mmフレームは破線でもあり、目玉を回したくなりますが、そこそこ適当にフレーミングしてもいいんじゃないかと思います。
大型のシャッタースピードダイヤルはよいのですが、フィルム感度(ASA)窓は小さいとか、このあたりはちぐはぐですね。フィルム巻き上げレバーの形状は抵抗感がなくていいですね。
惜しいのは距離計部分の周囲のエッジがシャープではないこと。二重像合致でのフォーカシングはほぼ問題を感じませんが、ライカMのようなスプリットイメージのような上下像合致では使用できません。
シャッター幕はステンレススチールで、やはり逆光時にできる太陽の穴あきの問題を避けるためでしょうか。ただし、現存する多くの個体は皺がよってボコボコしております。かなり見苦しいのですが、調整がきちんとしてあれば問題ないとカメラ店で言われました。
本当なのでしょうか?そう言われても半信半疑ですけど、たしかにこれまで実害はありませんし。でも、フィルムチェンジのたびにこの皺をみるのは気分はよくないのですが。あまり細かいことも言いたくはないですが、シャッター音は金属幕特有のもので、少しだけ気になります。
セレン式電池の中にぽっかりと空いた、距離計窓。距離計の精度を維持するのだという強い意志を感じます。
キヤノン7使用してみると、けっこう快適です。お弁当箱的な雰囲気がありますが、筆者はライカM5で慣れているので問題なく。メーターは使わないので無視しちゃっているので、精度的にはわかりません。でもバッテリーが不要なので、液漏れとかの心配はいらないのはいいですね。
キヤノン7ブラックは、写真家の牛腸茂雄さんの愛機です。本機にキヤノン25mm F3.5を装着、シューアダプターに、あの古いSF映画の宇宙服のヘルメットみたいなファインダーをつけ、こちらを見ている写真の印象が強いのです。この写真を見た時から、筆者は、キヤノン7ブラックの入手に全力を挙げることになったのです。
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