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第35回 「ジャミラ」型のフォルムがいい「キヤノンフレックスRM」

2025/08/14
赤城耕一

一眼レフのペンタプリズム部分は目立たせる方向と、ボディ内に埋め込むように目立たせなくする方向と2通りあります。後者は「ジャミラ」型といわれたりしました。怒肩のデザインだからでしょうぁ。ちなみにウルトラマンに出てきた「ジャミラ」は悲劇の怪獣でしたから、筆者としては、少々フクザツな思いがあります。

 

一眼レフ黎明期のキヤノンの各機種は中古市場でも不人気ですね。いや、現役時代から不人気だったのか。中古カメラって、製造台数が多いと価格が安かったりするんですが、今回紹介します、キヤノンフレックス系の一眼レフはいずれも製造台数はそんなに多くなさそうなのに、今はジャンク箱の中にいるのがデフォルトみたいになっていませんか。調子悪い個体が多いのも理由でしょうか。
 

筆者くらいのヘンタイになりますと、キヤノン一眼レフといえば、F-1だぜ、みたいな方向に素直に落ち着かないのです。結局は寄り道をしたくなるわけです。いや、寄り道をすることでキヤノン一眼レフの進む道がみえてきます。嘘です。単なる個人的興味です。
 

で、いきなりなんですが、1962年に登場するキヤノンフレックスRMの話をします。理由は単純ですデザインが好きだからです。

 


やたらとデカいメーター指針窓。設定シャッタースピードに対する適正F値を表示します。ゼブラ模様が目立ちますが、デザインと思えば許されるのかな。

 

ペンタプリズム部分の飛び出し方は控えめなところにまず惹かれます。そうです、俗に言う「ジャミラ」型ですね。とはいえ、ボディシェルはキヤノンフレックスと同じということなので、これは素晴らしい工夫ですね。
 

この当時評価されたのはボディ内にセレン光電池式のメーターを内蔵したことであるようです。これはシャッタースピードに連動しており、設定シャッタースピードに対応する適正絞り値を表示します。シャッターダイヤルは不当なほどデカいのですが、フィルム感度表示窓は小さく、老眼には辛いものがあります。
 

うちにある個体はとりあえずメーター指針が振れるみたいですが、精度は知りません。と、いうか気にしたことがありません。使わないので当然です。
 

ボディ右前にはセレン用のデカい受光窓があります。これがデザインを乱しますし、表面の連続の凸凹が着色悪いんですが、この存在はやむをえないわけですね。もし、メーターを省略したモデルがあったら面白いと思うのですが、そういう企画は上がらなかったんでしょうか。

 


不必要なほど大きなシャッタースピードダイヤル。たしかに回しやすいです。その大きさに対して、フィルム感度窓が小さく、老眼なのでまるで見えず。メーターは使わないからべつにいいんですが。フィルムカウンター窓はレンズがついているので拡大されて見えます。

 

また、デザイン的に面白いのはフィルム巻き上げレバーがボディ上部ではなくて、右側面に埋め込まれるようにして存在していることです。レバーの長さやデザインは違うけど、オリンパスペンFみたいな感じを想像してください。
 

小刻み巻き上げができないのは残念ですが、巻き上げレバーの角度は120度ということなので、これはかなり小さいですね。ニコンF2と同じくらいじゃないですかね。当時はこれを特徴としなかったのでしょうか。当初、本機を使い始めたころは、巻き上げ角が小さいので、コマ送りの不安があったのですが、実際にはコマが重なるなどの事故が起きるような問題はありませんでした。機構的に優れているからでしょう。
 

レンズは「スーパーキヤノマチックR」なる名称です。絞り環がふたつあるのは片方がプリセット用、片方が実絞りのためのものだからです。実絞りを開放F値設定にして、プリセットでF値を決めれば、ファインダーは明るい視野のまま、シャッターを切ると設定値まで絞り込まれるという仕組みですね。被写界深度を確認するためには実絞りを使用します。

 


フィルム巻き上げレバーですが、大きなプラスチックの当てがついています。のちのキヤノンFTや初期のキヤノンF-1だってこんな立派な形状ではありませんでした。巻き上げ角度は120度とすばらしく小さいです。ただし、小刻み巻き上げはできません。

 

マウントはリングの締め付けで固定されるスピゴット方式で、キヤノンFLとかFDレンズも装着できるものがありますが、装着できても動作しないとか、相互互換は考えられていないようです。無理に装着して、カメラやレンズを壊さないように注意しましょう。
 

この時代の一眼レフですから、ファインダー視野は暗いですね。中央には大きなスプリットイメージがあって、邪魔くさいですが、この切れ込みの悪いマット面でフォーカシングするのは相当な困難を伴います。とくにF値の大きなレンズでは面倒でしょう。
 

シャッター音は意外にも大きくはないですね。「バサッ、バサッ」と聞こえます。ミラーショックも気になりません。シャッターブレーキやダンパーがうまく機能しているのでしょうか。

 


いわゆるビルドクオリティは良好です。シャッターは布幕の横走り。左のシルバーの蓋の下にはメーター指針のゼロ点調整用のネジがあります。この時代の一眼レフは相当な高級品だったと思うのですが、この程度は自分でヤレということなのでしょうかね。

 

機能上は大きな問題はないキヤノンフレックスRMなのですが、ボディがデカくて重たいためでしょうか、一連のシーケンスはなんとなく、象のような、もっさりした印象を受けてしまいます。
 

これはいま現在受ける印象だからでしょうか、それとも往時は、このフィーリングで許されたのでしょうか。ニコンFのほうが、シャープな印象なんですけどねえ。

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