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カメラ悪酔強酒

第50回 前回の東京オリンピックの年(1964年)に登場した「キヤノンFX」

2025/11/28
赤城耕一

キヤノンFTbにデベソをつけましたみたいな。キヤノン7Sの受光部にも似ているかな。西荻窪に仕事場があった頃、近くのDPEショップのようなカメラ店に並んでいたものを見つけて救出。やはり当時はブラックが良かったわけ。意外と数はないみたい。

 

 あらかじめおことわりしていたとおり、本連載は時系列に沿ってカメラが登場してくるように見えて、実はそうではないわけです。気分というか、ロッカーの隅に隠れていたカメラを引きづりだして、なるべく順番になるように語っているだけです。今回少し時代を巻き戻したカメラが出てまいりました。
 

はい、唐突ですが、1964年登場のキヤノンFXの話をしますね。おお、前回の東京オリンピックの年であります。どこか意識しての登場なんでしょうか。でもこの頃、オリンピックではキヤノンのカメラはあまり使われていないんじゃないかなあ。報道畑ではニコンF一辺倒だったと思いますけどね。

 


フィルム巻き上げレバーには指当てとかないですね。華奢なようでいて、しっかりしてます。巻き上げフィーリングは新品のものを知らないから評価できませんが悪くないんじゃないかな。

 

まあ、いいでしょう。FXはそれまでのキヤノンフレックスよりもずいぶんと洗練されたデザインになりました。ぱっと見は、FTとかFTbに似ているのです。何が異なるのか。
 

よく見ますと、ボディの左になにやら丸窓がありますね。これ、内蔵Cdsメーターの受光窓であります。そうですTTLのメーターではなく外部測光方式のものであります。
 

このメーターはシャッタースピードのみに連動しています。測光後に読み取ったf値と同じ数値のf値を、絞り環に設定すれば、はい適正露出になります、という仕組みでありますね。本当にそれで適正露出になるのか?

 


H/L切り替えは巻き戻しノブの基部ですね。デカめですね。メーター窓があるので、巻き戻しノブが小さくなったわけね。

 

いや、そうまでしてカメラにメーターを内蔵したいのか!なんだか無理に搭載したようにも思えてきます。ところがこの左肩の受光窓、けっこう邪魔くさいんですよね。なんかデベソみたいで、いじめたくなりますね。
 

それでもいちおう高低二段階切り換え機能を内蔵しています。EV1~10、EV9~18の二段構えです。だからどうした触って楽しいものじゃないけど。ま、切り替えておかないと測光域に限界があるんでしょう。

 


ボディ背面のメインスイッチ。キヤノンはこの位置にスイッチを持ってくるのが流行っていたのかねえ。F-1とかもそうだもん。

 

本稿執筆も遊んでいるわけではなくて、いちおう仕事ですから動作の確認で、久しぶりにバッテリー入れてみたんですよ。

 

そうしたら指針が見えないわけ。あ、これはメーターが壊れているのかなと思いきや、よーくみると細〜い指針が明るさの変化でぶらぶらしているわけ。これだけで疲弊しました。なんせルーペを取り出して指針があることを確認しましたからね。

 

ボディ左前にミラーアップのノブがあります。キヤノン19mmとかつけちゃう人とかいたのかな。外部測光だからミラーアップしても、メーター動くし。

 

追い打ちをかけて絶望するのはメーターの表示窓の指針が細くて見えないことですね。これ老眼ジジイには絶対に見えません。間違いありません。
 

正直暴れたくなりますが、普段はバッテリーを入れないので、静かに平和に暮らすことができるわけです。もう今日はこのまま帰りたいです。ダメでしょうか?
 


メーター窓をドアップにしてみましたが肉眼では指針もよく見えません。EV値切り替えで表示はオレンジと白に変わるわけです。適宜なシャッタースピードを選択した後に指針のf値を見て、絞り環に同じ数値をセットします。

 

気を取り直して続けますけど、前機種のCanonFlexシリーズは、一眼レフであることを体現しているようなネーミングでした。今回のFXは一眼レフであることを意味する英文字のFlexの頭文字のFと末尾のXをとっただけのものですね。ネーミングも知恵がないというか、ごく単純なものでありますね。もうちょっと意味深かと思ってたけど。なんか当てはめる言葉ないのかねえ。繰り返しますが「Foreign exchange」のことでもありませんから念のため。

 

で、使い心地です。ファインダーは暗いです。暗いレンズをつけるとより暗く、明るいレンズをつけると明るくなります。当たり前とは言わずミラーレスに慣れた目には新鮮かもしれません。
 

横走り布幕のシャッターですが動作音がデカく、しかも残響しますね。これはうちにある個体だけなのでしょうか、残念な点です。時節柄、街で撮影しているときにデカい音を響かせると、悪いことしているような気になりますぜ。スナップは難しいかもしれませんね。諦めましょう。

 


シャッタースピードダイヤルもどアップで撮影してみます。フィルム感度の窓なんか蟻よりも小さいんじゃないかなあ。装着レンズをルーペ代わりにして設定したり。ま、実際の撮影ではメーターなんか見ないから、バッテリーは抜いてあります。

 

フィルム装填はまだQLシステムは採用されていません。フィルムカメラを使用するWSをやると、必ずスプールにフィルムのリーダー部が入らない人が出てまいります。これはもう練習あるのみですね。頑張りましょう。装填したら、巻き戻しノブが回ることを確認してください。おねがいします。
 

ファインダーは、同時代のニコンとかと比較するとフレンネルの同心円が見えづらくていいですね。フォーカスの頂点の見極めはまずまずです。中央に必要以上にデカいスプリットイメージがあります。邪魔です。ファインダースクリーンの交換はできません。やりたいけど。

 


5年前くらいの写真です。キヤノンFXは愛でるだけではなく屋外に持ち出して使用していましたね。装着レンズがNew FD 50mm F1.4だったりするところがいいでしょ。実用本位で考えています。

 

と、いうことで、キヤノンFXは今後の人生の時間に余裕がある人にはおすすめできます。お楽しみください。

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