110カメラの多くが、フラットで似たような形状で、安っぽいものが多かったのですが、本機には高級感がありますし、大口径のレンズを搭載しています。登場時は未来志向カメラに見えました。TVでCMも打たれてましたし、カメラ雑誌の広告にも出てきました。しかし、キヤノンは本機を持って110市場からは撤退してしまいます。売れなかったんですね。
今年も残すところあとわずかでございますが、読者の皆さまいかがおすごしですか。大掃除とか終わったのでしょうか。
で、その大掃除ですが、先日、筆者も自宅でイヤイヤ、ちまちま、だらだら戸棚を拭いてましたら、奥から何やら、平たい羊羹型のカメラが出てきました。
これがですね、キヤノン110ED20というカメラでございました。
そうです、110フィルムを使用するカメラで、現行機としてはロモグラフィーにあるのかな。ポケットインスタマチックカメラとも呼ばれました。ロモにしてもこの110ED20にしても、ポケットに入れたら垂れ下がりそうですねえ。
せっかく発掘されたのですから、今回はもうEOSはやめて、このカメラの話をしますね。ええ、悪酔強酒ですから仕方ないですね。

絞り優先AE を搭載。これだけでもエントリー仕様ではありません。青ライン表示がF値でお天気のアイコンです。距離表示は赤ライン表示、距離刻みは粗いですが、昼間ならば目測で撮れます。オレンジ色のボタンがシャッターボタン。
20数年前、筆者はデジタルカメラの黎明期ですけど、カメラメーカーのエンジニアにカメラデザインの将来について質問をしていました。デジタルカメラはレンズとセンサー、メディアスロットの位置をどこにするかは自由自在なはず。だから将来的にはものすごく斬新なデザインのカメラが出てくるのではという話をされていました。
でもね、実際にはどうだったかというと、みなさんのご承知のとおりのありさまです。
ミラーレスカメラはもっとデザインの自由度が上がったはずですが、フィルムカメラ時代からそう大きく変貌を遂げたという感じはしません。カメラ好きは保守的なデザインが好きなんでしょうね。これは筆者も含めてですけど。
そういう意味では110カメラって、それなりの自由度はあったかもしれませんね。

カメラ背面。右がファインダーアイピース。カートリッジ式なのでフィルムとポンと入れるだけで失敗しません。感度も自動設定されます。専用スピードライトはフラッシュマチック方式でしたから正確だと思います。使ったことないけど。
筆者が好きなのは小型軽量で、フラットなカメラが大好きなんですが、この好みに110ED20は適合していたわけであります。
110フィルムは1972年にコダックが提唱した規格で、画面サイズは17×13mm。そうですマイクロフォーサーズ規格とほぼ同じなわけです。一時は大変よく売れたのです。
キヤノン110ED20は1975年に登場するキヤノン110カメラの初号機の110EDの改良型で1977年に登場しております。ASA(ISO)400フィルム対応としていました。

ロモグラフィーから発売されている110フィルム。Color Tiger 110 ISO200のカラーネガ。24枚撮り。カメラにISO200の感度設定があるのかしら。でも普通に写りますけどね。他にモノクロやカラーエフェクト再現のフィルムの用意もありますけど、お好きならどうぞという感じかなあ。
当時でも天下のキヤノンが110カメラにまでも参入しちゃうのかということで驚きましたね。
でもね、そこはさすがのキヤノンです。エントリー機中心の110カメラで、110ED20は高級感を演出しました。本機に搭載されたレンズは大口径のキヤノン26mm F2。4群5枚構成と、このクラスにしては贅沢な高級レンズを搭載。筆者は萌えた記憶がございます。
それにね、びっくりなのは、フォーカシングにレンジファインダー機構を内蔵したことです。この理由はおそらく搭載レンズのFナンバーがF2と大口径レンズだったこと。レンズのポテンシャルを引き出すには正確にフォーカシングされていなければ意味がありません。

この当時のカメラはデート機能必須という感じですが、アナログ設定ですからねえ。面倒ですね。ちなみに写し込むことのできる西暦は87年までしかありません。カメラの寿命は10年とかされてたのかしら。
バッテリーは4LR44を1個。露出制御は絞り優先AE。キヤノン自社製の電子制御のレンズシャッターが搭載されていました。シャッタースピードは2秒~1/1000秒間を無段階制御し、1/125秒をメカシャッターとしています。
絞り優先AEなのですが、絞り値の指標はなく、カメラ上部にあるスライダーを使用して絞りを設定します。当時のコンパクトカメラでは珍しくなかったのですが、撮影者は撮影時の条件とか光の強さを考えて、窓(室内)、雲(曇り)太陽(晴れ)のアイコンで合わせくださいということですね。当然、室内なら絞りは開かれ、晴れならば絞り込む設定をすることになります。

バッテリーは4LR44です。下手するとカメラ本体よりも高くついたりしますから、購入は密林などでよく調べることをおすすめします。バッテリー室はわかりづらいところにあり、収納方法もヘンです。ニコマートELと並んで、カルトクイズにできそうです。
フォーカシングも絞りと同様にスライダーを使うのですが、これはちょっといただけないですね。搭載レンズの焦点距離が26mmと短いのですから、屋外の青天時など絞り込める条件では目測で撮影した方が素早く撮影できるのではないかと。
ファインダーはボディの端にあります。その昔のスパイカメラで有名なミノックスっぽいですよね。ホールディングは慣れないうちですと、それなりの違和感があります。巻き上げは下部にあるレバーを親指で一度だけ押し込みます。でも作り込みは良いんですよ、この時期、ボディは金属皮質なので冷たいです。
110ED 20は新しい規格のフィルムをカメラデザインとメカに生かそうと挑戦したエンジニアの英知を結実させています。デジタルでも似たようなカメラはできればいいのに。
ただし手ブレ補正入れてください。


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