いよいよ本連載もEOSに突入しようとしております。ただ、最初にお断りしておけば、フィルム、デジタルに関わらず、ウチで生き残っているEOS一眼レフはわずかなのであります。
EOSはお仕事カメラとしての側面がかなり強いため、古いものは一部を除けばダイジダイジにはしていません。新しいものが出れば手放すのが当たり前になっていました。
だから生き残っているEOSはクセがあるか、売り飛ばしても冗談みたいな金額の査定がされたので腹が立って、それなら使わずばと持ち帰ってきた機種ばかりであります。あ、ちなみにEOS デジタル一眼レフは一台も手元にありません。もっとも昔のEOSに興味ある人はごくわずかだと思うのですが。したがって、今後の内容にはあまり期待しないでください。誰もしていないと思うけど。
今回はバブル時代の真っ盛りの1989年に登場しました「EOS RT」を取り上げることにします。
半透明のペリクルミラーを固定したAF一眼レフカメラです。本連載でも紹介しましたよね、ペリクルミラーを用いた一眼レフの初号機はキヤノンペリックスで登場は1965年です。ここからAE、AFと発展させたのが本機です。
RTは「リアルタイム」の略、つまりタイムラグかないことを主張しているようなのですが、これはコンタックスRTSのパクりかと思いましたぜ。

画面下にある電源スイッチを兼ねたダイヤルを「RT」にセットしますと、RTモードになります。シャッターチャンスに賭けるあなたのためにあります。うまくお使いください。筆者には無理っぽいです。
中古市場では冗談みたいな激安価格で販売されています。なんで不人気なのかよくわからないのですが。個人的に入れ込んでいるカメラなのですが、その不人気さって、納得できません。
一時、筆者は気に入って3台のRTを所有しておりました。それが2台になり、うち1台はお亡くなりになり。最後の1台が稼働中ですが、とはいえ、この1年は使用していないかなあ。でも、こうして久しぶりに取り出してみると、なかなかルックスがいいですね。美少年みたいな感じです。プラスチッキーですけど、仕上げには品があります。
そんなに軽量というわけじゃないですが、レンズ装着時のバランスは悪くないです。バッテリーは2CR5です。最近は入手は面倒ですかねえ。高額なバッテリーですが、ネットのほか、ハードオフみたいなリサイクルショップとかで安売りしていることがあります。

途中巻き戻しとか、巻き上げのシングルとコンティニュアスとかバッテリーチェックのボタンとかはボディ背面下のドアの下に隠され、ダイヤルと共に変更します。
ペリクルミラーは後にキヤノンF-1の高速モータードライブカメラとか、EOS1N RSにも採用されました。ミラーの駆動を考慮する必要がないため高速連写を実現できたからであります。報道とかスポーツ分野で使われる特殊仕様のカメラというイメージです。
このRTの場合はブラックアウトしないこと、レリーズタイムラグが大幅に短縮できることが重要なわけです。
EOS RTのベースカメラは「EOS 630 」ですね。したがって機能はほとんど同じです。ファインダー倍率は0.8倍で視野率94%と、ミドルクラスの部類に入ります。シャッター最高速は1/2000 秒です。

シャッタースピードを長時間露光に設定して、レンズを外して、裏蓋を開け、マウント面からアパーチャーを見てみます。意味はないのですが、カメラの背後に花を置いてペリクルミラーは素通しであることを証明してみました。
非常にユニークなのは本機のRTモードです。
一連の動作のシーケンスを見てみると、シャッター半押しを行うとシングルAFで動作し、設定した絞り値まで絞り込まれ、遮光用のシャッターが開いて、それから露光されます。なんだか通常撮影モードよりも時間がかかりそうですが、絞り込んだ状態で露光されるので、絞り動作のタイムラグもありません。当然ファインダーは絞りに応じて暗くなります。小絞りにしますとファインダーがかなり暗くなります。
レリーズタイムラグは0.0008秒とのふれ込みですから、まさにその名の通りのRTでの動作ですが、通常のミラー駆動の一眼レフの撮影では、撮影者がタイムラグをあらかじめ推測して撮影することがあたりまえなっています。つまり、RTモードに設定して、通常の一眼レフと同時使用しますと逆にタイムラグが短すぎるために、シャッターボタンを押すタイミングに狂いが生じて、混乱することになるかもしれません。
でもブラックアウトしないわけですからファインダー内で被写体を観察し続けることができます。絞りが小絞りだと観察が辛いかもしれません。
このあたりだけは、レンジファインダーカメラと考え方は似ていますがレンジファインダーは絞りの効果はわかりませんからねえ。実際この動作のシーケンスが被写体を捉えるのに役立つかどうかはわかりません。
正直、このRTモードのままで、AF追従し続けることができたならば、AF一眼レフの歴史はもう少し変わった方向にいけたかも知れないですね。今となってはわかりませんが。
筆者はなぜEOS デジタル一眼レフにペリクルミラーが搭載されないのか不思議でした。つまりペリクルミラーの露光のファクターなんかデジタルでは自動的に吸収できてしまうでしょうし、ペリクルミラーによる画像の色づきなども、補正できちゃうかもしれません。おそらくアイピースから逆入光が入ってしまうことがリスキーだったのでしょうか。

ペリクルミラーはしっかりと固定されております。もちろん動きません。けっこうマウント内に大きく貼り付けてある感じです。触ってはいけません。薄くてキズがつきやすいようです。
RTモードで実際に撮影してみると遮光シャッターが開閉する音をシャッター音と勘違いしてしまうことがあります。これは実は筆者も経験があるのですが、気をつけたいところです。撮影したつもりがされていないとなると失望が大きい。しばらく使用していないとこの感覚を忘れてしまうので特に注意は必要です。筆者はタイムラグが短いという問題よりも、ファインダーがブラックアウトしない方が重要なので通常の撮影モードを使用しておりました。
また先に述べましたように、ペリクルミラーのために露光のファクターが1/3絞りほどかかるので単体露出計とか外部調光のオートストロボ、大型ストロボでは、注意する必要があります。ファインダー視野の明るさも若干暗くなりますが、しばらくすると慣れてしまい、ファクターを忘れるのです。
いろいろツッコミどころは確かにあるんですが、レリーズタイムラグやブラックアウトフリーなどの果敢な挑戦をしたのに、この低い評価が納得できないですね。
なんだか疲れてしまいましたが、ただ、筆者もRTモードの機能がきちんと使いこなせていなかったということなのかもしれません。でも、今さら反省してもね、遅いですね。


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