いよいよ、本連載もオーラスです。え、デジタルになってもFマウント一眼レフあるだろ?って。
最近では古いデジタルカメラを愛でるなんて企画もあるらしいですが、正統派の写真表現者である筆者は、そんな信頼のおけないものは使えません。新しいデジタルカメラを導入すれば旧機種とはさよならしますね。最近は貧しいから古い機種も使うけど、壊れたりしたら値段がつかないから捨てます。マジで。あー環境に優しくないぜ。
うちに残っているニコンのデジタル一眼レフってD40とDfしかない(笑)ですね。D40はその昔、『アサヒカメラ』で、予算1万円で買う中古カメラみたいな企画にて買ったやつが、なぜかうちの本棚の脇に置いてあります。チャージャーとかどこにいったかなあ。それにしてもヨゴレ仕事でしたねえ。
Dfは好きですね。Z f登場のいま忘れられている感じしますが、Fマウント直結で使えますからねえ。アダプターのFTZがもうちょいマシになればもう少しZ fを推してもいいいかなと思ったけどね。現時点では気配ないもんなあ。そのうちお越しいただくことになるとは思うけどね、Z f。
で、すみません。ニコン最後のフィルムフラッグシップ機、F6の話をしようかと。
F5が登場したときに、おい、下(バッテリー室)は切れねえのかよ、と文句言いました。F6は“切れ” ますね。その前にF100が切れてたけどね。だから本当はF6は要らないような気がするんだけど、ニコンの心意気に賛同してお越しいただきました。たぶんアサインメントの撮影には数回しか使ってないと思います。
これね、とにかく出しただけでもエライとか思いました。登場2004年でしたから。つまりD2H登場の後でありますよ。AF関連とかはD2Hのそれを応用したという触れ込みでありまして、マルチCAM2000オートフォーカスモジュールは共通であります。
デジタル一眼レフの機能を応用した世界初のフィルム一眼レフというイメージでありました。いや、D2Hがあったからこそ、コストを抑えてF6を出すことができたのかもしれませんよ。
2004年はすでにアサインメント関連の撮影はデジタルになっていたので、さすがの筆者もF6を導入するかどうか悩みましたね。F6が発表されたときは、すでにメディアの間では「今さら(フィルム一眼レフかよ)」感ありましたからね。
でも、筆者は日々の発言の責任とって導入しました。仕事じゃ使えないけど。あくまでもプライベートでの使用、お遊びカメラということになります。価格はいまのZ fと同じくらいしたんじゃないかな。
導入に悩んだ理由は他にもあります。仕事カメラじゃないくせに、F6は趣味性に少し欠けるわけです。まずはその外観を見てみましょうか。なんだか全体に攻撃力が弱まっています。
またF5のような存在そのものに迫力がないのも当初は不満でした。デザイン的にはペンタプリズムあたりの処理が優しすぎますね。上部、下部カバーおよび前部ボディにはマグネシウム合金を、後部ボディにアルミニウム合金も使われて堅牢性を高めているといいますが、なんか説得力が薄いんです。
ペンタプリズムのココに測光方式の切り替えがあるのは、F4以降の伝統かしらねえ。これ逐一切り替える人ってどのくらいいるのかしら。
しかも、趣味的によろしくないのは、ファインダーが交換式ではないこと。つまり、ニコンフラッグシップ6代目にして、ついにファインダー交換ができなくなったわけです。これね、ふつうはファインダー交換なんかしないんだけどさ、ファインダーを外して、ブロアーでホコリを吹きたいわけ。これができないとなあ。次の日曜日にやることなくなるじゃないですか。あ、スクリーン交換はできますね。これもしぶしぶかなあ、でもフラッグシップ機の矜持というものじゃないのかな。交換することの実用性はともかく、できないよりは全然いいですね。
F6のファインダーを覗いたときはちょっぴり嬉しかったですね。すごい大きい、それでもファインダー倍率は、0.8倍を割っていたと思いますが、眼鏡使用者にもみやすくという配慮でしょうか。
D2Hなんか、ガタイはデカいくせにファインダーはフォーマットサイズに合わせて小さいわけ。これ、かなりがっかりしていましたけどね、F6のファインダーみて少し溜飲が下がりましたし、逆に早いとこニコンは35mmフルサイズフォーマットの一眼レフ出さなきゃだめだぜとも思いました。
みんな大好きな高速連写ですが、ボディ単体で5.5コマ/秒だったようです。マルチパワーバッテリーパックをつけると8コマ/秒。これでは不満ですか?フィルムがあっという間に終了する速度じゃないですか。
意固地だなあと感じたのはフィルム巻き戻しノブが残されたこと。これはもう、ほとんどパフォーマンスですよね。でも、ノブがフィルムに巻き上げや巻き戻しに合わせてくるくる回るさまは、年寄りには安心感がありますね。
巻き戻しノブ・クランクですが、おお、回っているなとフィルム給送の正常動作の確認をするくらいで、実際のフィルムの巻き戻しに使ったことは一度もないんじゃないかな。F5もそうだったけどね。
3D-RGB マルチパターン測光(1005分割RGBセンサー)はなかなかの高精度をみせましたが、ポジフィルムだと、中庸な仕上がりになると、さほど面白くはないものですが信頼の高いものであることは確かです。ブラケッティングも細かくできますが、フィルムが高価な今では使う気になれませんよねえ。
とても面白いと思ったのは、F6の背面には大型の液晶パネルがあったことです。まるでデジタル一眼レフであります。実際にF6を使うと、シャッターを切ったあとに、意味なく、この液晶を見つめ続けることになるわけです。もうこのころになるとデジタル一眼レフの動作がカラダに染み込んでいるわけです。で、ふと我にかえって、おお、F6はフィルム一眼レフだったことを再認識するわけです。
お前さ、ほんとはデジになりたかったんじゃねえのか的な背面のモノクロLCD。ファンクションなど各種設定に使うわけですが、フォントが美しくないので、どうかと思うけどね。
F6で趣味性が強いなーと感じたのは、非CPUのAIニッコール、AI改造のニッコールレンズ装着時にもレンズ情報をカメラに登録することでRGBマルチパターン測光を可能としたことであります。
また非AI方式、AI改造していないニッコールオートレンズを使用する場合は、サービスセンターでAI連動レバーを可倒式に改造することで装着可能にしています。さすがです、ここまでやるか!の面倒見の良さですが、さすがの筆者もこれは行っておりません。ニッコールオートレンズに関しても、AI改造を行ったものを使用するのが筋だと考えるからであります。
ボディ右上裏のAFオンのボタンとかAEロックのボタンとか。親指で押すんだろうけど、仕事が多過ぎて忙しくないか親指。たぶんこれらは1度も使ってない。
それと筆者がとても面白いと感じたのは絞り環のあるAFニッコール、CPUを内蔵したレンズを使う場合にも、F6のファンクション(f4-3)設定で絞り環を使用しての絞り設定を可能としたこと。
以前の本連載のF5の回で指摘したように、F5のウィークポイントを解決したわけで、筆者なんか涙出そうになりましたね。そういう人は少数だと思いますけども。ま、そうしたお遊びにも対応してくれるニコンの懐の深さを感じました。
コマ間のデータ写し込みにもデフォルトのボディのまま対応していることも素晴らしいですね。デジタルのExifのような細かさではないけど、十分整理には役立ちそうですし、意外とこれ、カメラのフィルム給送の精度が高くないとできないんですぜ。
F6の使用感触はどうでしょうか。AF測距点の反応や、精度的にはかなり高い方ではないかと。赤色LEDを採用したことも逆の安心感が生まれました。
シャッターのタイムラグもよく考えられており、一連の動作のシーケンスにまとまりがありますね。これがとてもいい。重厚さには少し欠けるけど、シャッター音も悪くないです。気持ちのいい動作音ということです。
いわゆる縦グリです。じつは、ボディ本体のバッテリーケースが見当たらないのでつけっぱなしなのです。重たいから持ち出さなくなるということもあるけど、単三電池が使えるって、やはりフィルム一眼レフでは意味あると思うんですよね。F100なんか単体でも単三で動いたんだぜ。
今回ね、久しぶりにF6を持ち出したんだけど、当時考えていたよりも良いカメラという印象を持ちました。真面目さが随所に感じられるし。でもね、どこか本気を出し切っていない感じはします。プロのためというよりアマチュアのためという感じで。
連載でも幾度となく述べていますが、プロ用カメラと銘打っても実際の大切なお客様はアマチュアの皆さんです。Z 9なんかもそうですぜ。私なんか多機能すぎて自分の仕事では不要だもんなあ。そういやD6ってのもありましたね。いや現行機ですね。これも最後のニコンデジタル一眼レフのフラッグシップ機ということになるわけですが、誰も話題にしないし。なんとなくその中途半端な立ち位置がF6と似ています。
と、いうことで一連の「推すぜニコンFシステム」連載は今回でおしまいということにします。デジタルまで行きつかない理由は冒頭で述べておりますが。いいですよね、やらなくて。
それともレンジファインダーのニコンS系とかやったほうがいいですかね?誰も関心なんかないですよね。そのそもニコンI型はどうするんだという話になると嫌だし(笑)。
またなんか考えますので、そのうちまたお会いしましょう。長らくのご愛読ありがとうございました。
とりあえずさようなら。
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