35mm一眼レフカメラにフィルムワインダー(自動巻き上げ)を採用した機種は1979年発売のコニカFS-1でしたかね。登場時は人気があったような記憶がありますが、そのあとが続きませんねえ。FT-1モーター(1983年)ってのも出たか。あ、うちにはFT-1ハーフってのがあります。
余計なことを言いました。
ニコン一眼レフで最初にワインダーを内蔵したのは、今回紹介する1985年に登場したF-301になりますね。ずいぶん遅れての登場ですよね。
全体としてみると、モーター内蔵機とは思えない雰囲気あります。スマートですしね。デジタル一眼レフなんかよりもボディの厚みがなく、健康そうな感じがします。
フィルム装填もイージーローディング方式を採用していますので、カメラやフィルムを触ったことのない人でも装填できるんじゃないかというくらい簡単でした。リーダー部分を巻き上げ部のローラーのところの赤線にフィルム先端を置くだけですから、しくじりようがないわけです。
フィルムの先端を赤のラインに置きます。裏蓋を閉めたら、自動的に「1」が出るまで巻き上がりますね。もしかすると「0」コマ目が使えるかもしれないから余計なお世話です。
フィルム給送の自動化は露出の自動化と並びフィルムカメラの目指す道でありましたから、遅かれ早かれF-301のようなワインダー内蔵機種は登場してくるのはあらかじめ予想されました。でもフィルム巻き上げが自動化されたけど、フィルムはクランクによる手動巻き戻しってのが、なんか最後のツメの甘さも感じます。
すっきりとしたレイアウトでいいんじゃないでしょうか。最もダイヤルのオペレーションが主ですから、違和感もないわけですね。
巻き戻しクランクですね。撮影終わりましたらRレバーをずらして、手動で巻き戻します。この時代だとまだフィルム巻き戻しモーターを内蔵するのは大変だったのでしょうか。それともスペースや大きさの関係か。
フィルムが正常に急送されると、この裏蓋のラインが動くわけですね。でも巻き戻しクランクがあるからいらないように思うのですが、どうなんだろう。
F-301って、なんだか思い出すことが少ないカメラのような気がします。目前に迫るAF化の直前ということもありましたが、F-301がのちに登場する本格派のAF一眼レフ初号機のベースモデルになろうとは思いませんでした。でもAF化と自動巻き上げはきわめて強い整合性がありますから、まず先にカメラボディにワインダーを内蔵させ、AF化への道の地慣らしをしておけという意味からF-301は開発されたのかもしれません。個人的には整ったカメラというイメージを持っています。
電源は単三アルカリ電池4本を使います。撮影モードはA(絞り優先AE)とM(マニュアル)そして二種類のプログラムAE(P標準・PHI高速)を選ぶことができます。
単三乾電池4本がバッテリーです。どこでも入手できるから、災害に強いフィルムAE一眼レフかもしれません。ウソですが。カメラ本体に単三電池を入れると、当時は電化製品に近づいてゆく感を思いました。
ただ、ニコンFAではプログラムラインの切り替えはAiニッコールを使うことで自動的に行われたのですが、本機では標準・高速プログラムの切り替えは手動ですね。筆者はPモードは本機では使わないからいいんですけども。
Pモードはプログラムラインに応じて、2種選べます。HIってのはシャッタースピードをできる限り高速側を選んでシフトするのかも。よくわかってないけど、本機も瞬間絞り込み測光ですから後で絞りの誤差の帳尻を合わせようとします。
ワインダーのコマ速は2.5コマ/秒とのこと。この程度ならワインダーなんかイラネっていう考え方もあるのですが、ファインダーアイピースから目を離さずにフィルム巻き上げができることから手持ち撮影では、フレーミングを大きく変えることなく連続して撮影できるというメリットがあります。
動作音は、どうですかねえ。好みありますが、シャカシャカ動く感じで重厚感はないけどそんなに嫌いじゃないですね。ただ、なんか知人に撮影しているところを見られたくないというか。フィルムくらい手で負けよとか罵られそうです。
スピーカーのON/OFFの切り替えスイッチです。こんなに場所とっていいのでしょうか。低速シャッターになると警告音が鳴ります。これも余計なお世話です。ニコンEMあたりから踏襲しているのでしょうか。
たしかに街中でこのシャッター音を響かせて撮るのは今ひとつですね。スナップしづらいというほど大きな音でもないのですが、使っていて気分があまり上がらないのは音質のせいなのかなあ。ニコンF2のMD-2のようにデカくやかましい騒音クラスの動作音だけどクリエイティブな思考を刺激してくれそうな気がします。F-301には、そういう意識はまったくありません。これはカメラのクラスからすれば求めてはいけないところなのでしょうけれど。
シャッターボタンです。ケーブルレリーズ用の穴がありません。どこかにリモコンつけるんでしょう。Sは1コマ撮り、Cは連続撮影の意味で、AFの切り替えじゃありません。
重厚感、高級感という意味ではF-301は真逆の志向のカメラです。ボディ全体の印象から感じるのは“チープ” さですね。プラスチッキー感が強いのです。シャッターボタンの押下感もキレ心地が今ひとつな感じがありますが、これは求めちゃいけないところなのでしょう。もちろん実用としては問題はありません。
プレビューボタンは省略されています。使用しても大してアテにはならないし、あっても使わないけど、存在しないとちょっとイヤですね、一眼レフとしてはね。
レンズ前面にボタンとレバーありました。初めて触りましたが、ボタンを押すとセルフタイマーに、レバーを倒すとAEロックになるようですね。AEロック使うと指がつりそうです。
かなり好みは分れる機種だとは思います。でもパンケーキレンズなんかを装着して、さりげなくバッグから取り出したりすると、周りから尊敬はされないまでも、少しだけの間は驚かせることができるかもしれませんね。筆者も高価なカメラではなくても、これだけの写真が撮れるんだぜと言いたい方なので、エントリー機は積極的に使いたい方なのです。
正直言って、見境のないカメラ好きだと、世間的には評価の低い機種も手元に置いておきたくなるわけです。運が良ければ、F-301のおかげで本日のランチよりも廉価に入手することができますから物好きな方にはお勧めしときますよ、でも最近は見かけないね、どうしたんだろ。
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