「ニコンF2を取り上げるのはいつですかー?」という質問を先日読者の方から直接受けました。
ほら、ものすごくありがたいと思うくせに、そういうふうに言われると、なるべく後に送りたくなるわけです。筆者のヘソは背中側にあるので仕方ありません。
で、今回も行きますよ、ニコマートFTです。1965年登場です。ええ、1967年の大売れしたFTNじゃありません。理由なんかどうでもいいんですが、筆者はニコマートシリーズをコンプリートしておりますゆえ、それをどこかで見せびらかしたい、いや見せびらかしてもなんの意味もないからこそ、こういう機会にて取り上げたくなるわけです。
かなり真面目なようでいて、この時点で、筆者のヘソは元の位置に収まります。貧乏カメラマンはヒマなんでロクなことを考えないですねえ。みなさんご存じのとおり、今やニコマートFTは中古カメラ屋さんのショーケースには存在せず、ジャンク箱の中に転がっていることの方が多そうですね。カメラ博愛主義の筆者はこれだけで悔しくて落涙寸前であります。
ニコマートFT+ニッコール-S オート 50mm F1.4
マウント位置がボディ左寄りの偏心位置にあるのは正解です。正面から見るとASA(ISO)感度指標がゴテゴテ見えてしまうのはデザイン的にペナルティですね。
では粛々と今回も進めますが、お題のニコマートFT、これ、コパル製の金属縦走りシャッターをコパルスクエアSを採用。
日本光学の自社工場で組み立て製造されているようであります。ようでありますと言うのは、ウラ取るのが面倒なものですからそう書いているだけでたぶんそうです。真実を追求するジャーナリストは調べものをするのが面倒な時はこう書いておけばセーフになります。
当然のことながらニコンFマウント互換ですね。ニコレックスFよりはスマートなデザインです。シャッターダイヤルがマウントの基部にあるので、オリンパスOM-1の元祖みたいですね。でもね、TTL開放測光方式のメーターを内蔵しながら、FTはガチャガチャする必要はありません。代わって、装着レンズの開放F値をカメラボディ前にあるシャッタースピードダイヤルのASA(ISO)指標に入力します。
いや、入力というと最新のニコンデジタルカメラに、古いニッコールオートレンズのレンズ情報をメニュー画面から入れるような感じを想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではなくて、指標を使い設定せねばなりません。設定用のレバーがあるのですが、ものすごく設定しづらいですね、これ。指が痛いです。
シャッタースピードダイヤル位置にあるASA感度指標に使用レンズの開放F値の書いてある数値を合わせます。老眼にはツライ作業ですが、メーターを使わないのなら放っておいても大勢に影響なし。
TTLメーターは平均測光でありますね。スイッチはフィルム巻上げレバーの引き出しと連動しますが、巻き上げを行わないと電源がオンになっていることを示す赤指標の予備角でレバーを固定できません。つまりメーターを動かすには必ずフィルムを巻き上げねばならないわけです。こういうのはヤメてほしいですよね。その昔も不評だったのでしょう。FTNでは改良され、フィルムを巻き上げなくても測光は可能です。
今となっては正常に動いているニコマートFTの個体がどれだけあるかわかりませんが、うちにある個体はなんとかゆらゆらと指針が振れます。
ええ、受光素子Cdsの鈍い反応のためか、経年変化による劣化かもしれませんが、精度なんぞどうでもいいのです。針が振れることが重要なのであります。本来動くものが動かないとイヤなわけです。
だって、指針がファインダー内の視野にせり出しており目立つわけですから、動く方がいいじゃないですか。邪魔くさいか。バッテリーはHDの水銀電池なので、代替え品か、アダプターが必要ですね。
精度の低いメーターを使いたくないという人は、電池を抜いて、単体露出計を使えば済むことですからこれ以上は申し上げません。
軍艦部左にあるTTLメーターの指標です。シンプルですね。指針が向かって左に動けばオーバー露光になるのです。ファインダー内では指針が下にいくほどオーバー露光になるので生理的に逆で使いづらいんですよね。ま、バッテリーなんか入れなくていいです。
フィルム巻上げは一作動式で、小刻み巻上げはできません。巻上げレバーは金属剥き出しなので、親指が痛いです。これはよろしくありませんが写真撮影は緊張が必要なのだということ伝えるために肉体の痛みを利用して写真家に認識させているのかもしれません。
コパルの縦走り金属シャッター搭載のニコン一眼レフで小刻み巻き上げができる機種は少数です。これは機構的に連携が面倒なことが理由なんですかねえ、素人にはどうだかよくわかりませんが。
ファインダー視野率は公式には92パーセントなんですかね、実際はもっと低そうです。経験的に。ニコンFとの差異は個人的にはこの視野率の差が割と大きな比重を占めている感じがします。
シャッター動作音は金属シャッターのためか大きめです。でも最高シンクロ速度は最高1/125秒ですから、日中シンクロではニコンFより少し優位になりますでしょうか。当時、そのことを強く喧伝していたのかしら。
軍艦部右ですね。フィルムを巻き上げないと、巻き上げレバーを予備角位置で止めるメータースイッチを入れることができません。また小刻み巻き上げもできません。一動作で潔く巻き上げましょう。
今でいえばニコマートFTはミドルクラスなんでしょうけど、図体はそれなりにデカいし、重たいので少し生意気な存在という感じはしますが、フォトミックファインダーみたいにアタマをデカくしなくてもTTLメーターを内蔵させることが可能なことを世間に知らしめたわけです。それが今後に生かされたのかどうか。このあたりの問題は後に譲りますね。
背面ですが、とくにコメントないけど、色気もないですね。富士山マークもないですしね。
マウント部。マイナスビスなのはエラい。けれどこの時代は表に出るビスはマイナスだもんなあ。11時方向にある白いレバーはレンズ開放F値設定用のレバー。押し込みながら使用します。ものすごくやりづらいですね。老眼つーこともあるけどね。フレネルの円は綺麗な印象です。
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