top コラム推すぜ!ニコンFシステム第23回 ニコマートじゃなくニコン!? 外観は似ても中身は非なる二階級特進カメラ「ニコンEL2」

推すぜ!ニコンFシステム

第23回 ニコマートじゃなくニコン!? 外観は似ても中身は非なる二階級特進カメラ「ニコンEL2」

2023/02/17
赤城耕一

外観を変えずに中身を近代化。宇宙戦艦ヤマト一眼レフ Nikon EL2

 

えーと、この後に及んで、自分がニコマートを引きずっているというわけではないのですが、今回取り上げるカメラはニコンEL2です、ニコマートじゃないです。ニ・コ・ン、NikonのEL2です。1977年のAI化と同時に登場しました。
 

1972年発売のニコマートELが登場して、1976年にマイナーチェンジのワインダー装着可能な ニコマートELWが出まして、さらに翌年にニコン名になったEL2が登場しますので、もし往時の筆者がELWのオーナーだったら暴れていたかもしれないですね。ざけんなよって。
 

それにこいつはニコマートEL3じゃねえのか。という意見が出てきてもおかしくないわけですよ。
 

でもELWのことはなかったことにしたかったのかしらね。これはわかりません。

でも前回お伝えしたAI化に合わせて、ニコマートFT2がFT3になったみたいに、ニコマートELWもニコマートEL3になってもおかしくないんじゃないかと。だって、どう見ても本機は基本的な金型は同一で、ELWをAI化したとしか見えないわけです。

 

でもね、外観は似ていても、中身がまったく違うわけです。宇宙戦艦ヤマトみたいですね。中身は最新ですぜ。

 

しかし、ニコマートからニコンへ出世はしねえだろうよ、普通はよ。と考えてもおかしくないわけ。だってさ、ニコン名のついた一眼レフカメラはこれまでFとF2しかなかったんだから、いきなりニコマートEL(っぽい)カメラに「ニコン」て冠を授けるんじゃねえよって感じしません?出世魚なのかお前は。なんか二階級特進くらいの感じですね。
 

長く見つめているとNikonエンブレムもそう不自然ではないような気がしますけども。

この銘板は補修パーツでニコンELWにも取り付けできるみたいです。

が、微妙に形が違うので専用に銘板を加工したという都市伝説があります。

 

でね、なんでこんなに出世をしたのかといえば、何度も言いますが外観はクリソツだけど、中身が違うからです。でも、もちろん素人は中身を見てもよくわかりません。
 

まずは外観からわかるのは、何度も言いますがAI化による違いですね。外観ではレンズのカニのハサミに入る露出計連動ピンがなくなってしまいます。セルフタイマーレバーの形状も指がかりがいいように改良されています。ボディ側にレバーを倒すとAEロックがかかるわけですので、指がかりを良くするためですね。こんなの使うのかねえ。あとね、露光補正ダイヤルじゃない指標が追加されてますね。これはフィルム感度ダイヤルのところにありますが、フィルム感度設定はロックボタンを使うのに、露光補正はダイヤルを持ち上げてセットします。しかも1/2刻みですぜ。フツーは逆じゃねえのかよ、と暴れたくなる仕様ですね。 

 


AI連動爪です。これも跳ね上げることで非AIレンズ装着可能です。往時のニコンはとても面倒見が良いわけですよ。

 

で、決定的な大きな違いは受光素子がCdsからSPDに進化したことですね。ELもELWもカメラ雑誌などのメディアではCdsであることがとてもいじめられました。このことは書いていますね。
 

応答速度が遅いから、暗いところから明るいところにカメラを向ける、あるいはその逆でも、適正露出が得られないとされるからですね。あと低輝度では応答が遅いとかね。ったく、面倒ですね、メディアってのは。だったら、明暗差のあるところでAEで撮らねばいいわけじゃないですかね。
 

そのカメラのウィークポイントをカバーし、「お前がダメならオレがやってやるぜ」みたいな気骨を持って使わねえのかよ、って感じがするわけです。これね、けっこうカメラの使いこなしに通じるわけですよ。
 

この解決方法は簡単です。マニュアル露出に切り替えて対応すりゃいいんですよ。なんでもかんでもAEでやろうとするから人間が堕落するわけです。ろくなもんじゃないですね。

せっかくだからAI連動爪を跳ね上げて、非AIのニッコールHオート50mmF2を装着しました。

そういやニコンDfもAI連動爪はあるけど、はね上げる時のロック機構はないよね。

 

あ、しまった、進化したEL2の話でしたね。すみません、ですのでEL2は急激な輝度の変化にAEでも対応できるわけです。おお、よくやったぜ。ちなみに激遅のワインダーAW-1はELWに引き続きEL2でも使用できるんですが、これもすでに申し上げたとおり、シャッターボタンから指を離さないと巻き上がらない機構を採用しています。つまりは連続撮影できないわけです。だから、Cdsでも問題はないんですけどね。
 

うるさいんですよ、この当時のカメラ雑誌レビューワーは。筆者はご覧の通り寛容です。ホトケのアカギと言って、この界隈じゃ有名です。モットーとしては「カメラに甘く、自分にも甘く生きる」であります。
 

EL2にワインダーAW-1と初期のAIズームニッコール35-70mm F3.5を装着してみましたが、グリップ感が弱く、より重く感じます。サードパーティでグリップとかあったのかしら。ご存じの方は一報ください。

 

あ、EL2の話でしたね。で、どこかで聞き齧った話をすると、このEL2の中身はのちに登場するニコンFEとそんなに変わらないという話を聞きました。
 

でもね、バッテリー室とかはELの伝統である、ミラーボックスの床ですしねえ。UIは大して変わらないんですわ。だから新鮮味がないんです。筆者はAEロックも使わないしさ。露光補正するなら、マニュアル露出に切り替えた方が早いわけね。SPDの素早い応答速度とかいうけど、EL2においても、まーこんなもんじゃね、くらいの感覚です。
 

あ、そうだ、ニコマートELWで確認できなかったシルバークロームボディはニコンEL2にはございますね。ブラックボディばかりに固執していると陰湿で暗いカメラヲタクになる可能性があります。これはいいことですね。

 

ニコマートELW(左)とニコンEL2シルバークロームボディ(右)です。

シルバークローム、仕上げはきめ細かく上質です。年寄りなんで白も好きになりました。

 

メインスイッチはELWと同様に巻き上げレバーとシャッターボタン基部の2ヶ所にあります。後者はAW-1使用時のためですね。巻き上げレバーを引き出さなくても大丈夫。これは使いづらいという意見からでありましょう。でもスイッチを切り忘れると、ダイジダイジなLR-44バッテリーは放電してしまいます。どうぞご注意くださいまし。

 

 

巻き戻しクランク周辺。EL2は露光補正の指標を新設したんですが、露光補正は感度設定ダイヤル周囲を持ち上げて設定します。フィルム感度はロックボタンを押して回します。ふつー逆だろう。ま、筆者はどちらも使いません。

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