top コラム推すぜ!ニコンFシステム第32回 プレミアムな立ち位置としての高級感! チタン外装の「ニコンF3/T」

推すぜ!ニコンFシステム

第32回 プレミアムな立ち位置としての高級感!
チタン外装の「ニコンF3/T」

2023/04/20
赤城耕一

一般向けに販売されるも、富裕層のためのF3/T

 

「チタンカメラのすべて」、かつての『アサヒカメラ』でこんな特集を担当したことがあるくらいチタン外装のカメラ好きの筆者でした。最近は富士フイルムX-Pro3くらいでしたっけ? チタン外装のカメラは。これもディスコンになりましたね。
 

カメラ外装にチタンを使用したのは当初は本連載にも取り上げたニコンF2くらいだったように思います。ウエムラスペシャルとして、探検家の植村直己の記録用カメラとして開発されたといわれております。
 

チタンの特性は強く、軽く、耐食性に優れていることで、ガンガン使うプロのカメラであるF2の外装に採用されたようですが、当然のように素材の特性から往時では加工するのが大変という問題がありました。当然、手間もかかりますから、お値段も高くなります。
 

F2チタンにはかなり多くの都市伝説がありますね。加工するために使う旋盤の刃がすぐにダメになってしまうとか、携行している時にクルマにぶつけてしまったけど、F2チタンは凹まずにクルマのボディが凹んだとか、ハンマーがなかったので、F2チタンで釘を打ったとか。ここまでいくと、いずれも嘘くさいですが、真実を追及するのは野暮というものです。
 

そういやチタンカメラの決定打となった神話がありました。戦場で取材中に被弾したカメラマンの命を救ったのは、チタン外装のコンパクトカメラ、コンタックスT2という話もありましたねえ。こうなるとフルメタルジャケットですなあ。たしか新聞にも掲載されたような記憶があります。
 

でもね、T2の中身はプラスチックが多用されていて、確かに重たいけど弾丸を跳ね返すほど外装は厚くなさそうですぜ。

 

当初発売されたF3/Tチタンカラーですね。いわゆるシャンパンカラーですが、チタン素材はこんなに明るくないと思いますね。焼き付け塗装なのかな。塗装は少々弱めですね。素材は頑丈なのに。

 

前回のヘンタイF3/AFに続いて、今回のお題はF3/T(チタン)と、しました。これは限定モデルではなくて、一般に向けて発売されています。富裕層のためのF3であります。「普通の人と、私は少し違うぜ」ということを世間に知らしめたいあなたのために用意されました。

 

F3/Tチタンカラーは裏蓋のメモホルダー部分もチタンカラーですね。ブラックは黒いままです。色気がありません。裏蓋も頑丈なんですよ、と言いたかったのかもしれないですが、どこか裏蓋までチタンを採用していますよ自慢をしている感じもします。

 

チタンといえば前々回に取り上げましたF3Pにもファインダー上部カバーにチタンを採用したと書きましたが、F3/Tのチタンパーツの採用箇所は、左右のトップカバー、 ボトムカバー、裏蓋、ペンタカバーです。1982年にはチタンカラーのモデル、1984年にはブラックモデルが登場します。

 


F3/T チタンカラーとF3/Tブラックを並べてみます。はい、だからどうした。なんですが、どうも年齢を重ねてからはシルバーとか白いカメラが好きになりました。穏やかになったのかな。ブラックは陰湿なんじゃないかと(笑)若い人には意味不明ですね、すみません。

 

これって、しばらくは両者併売されていたように記憶していますが、最終的にはブラックモデルだけになりました。

 

お遊びでF3/TブラックのファインダーをF3/Tチタンカラーに装着してみました。かつてのニコンF2フォトミックみたいな感じで似合うんじゃないかなあと。そうでもないか。F3/Tのファインダーは単品で売られたんですかねえ。こういう遊びも楽しいのですが。

 

F3/Tはさらに、ノーマルモデルよりも防滴機能も強化しているといわれていますが、分解してノーマルモデルと比較したり耐久テストをしたわけじゃないので、本当のところはわかりませんけどね。詳しい方教えてください。ただ、ニコン関係者によれば、チタンモデルは落としたり、階段から転がしたり、耐久テストは行ったようです。筆者は見たくないなあ。

 


F3/T チタンカラーはシャッターダイヤルとか巻き上げレバーは黒のままです。このあたり徹底されてません。細かい部品までも同色にする方がコストがかかって大変なんでしょうが、どうも面白くはないですね。この写真を見たら、ライカM6のパンダモデルを思い出しました。

 

面白いのはカウンターの色がF3Pと同様に白色になっていますね。窓の形はノーマルモデルと同様の扇形のままですね。なにかこういうところを差別化したかったんでしょうね。

 


フィルカウンター数値表示は白色であります。F3Pと同じ。でもカウンター窓の形が扇形で同じです。F3Pは丸でしたね。数字は白の方が絶対的に見やすいはずですが、ノーマルのニコンは頑なに青のままでしたよね。

 

ニコンF3/Tのチタンカラーモデルは汚くなるのが早い?

 

チタンだから頑丈だというのは確かにそうなんでしょうが、たとえばうちにあるF3Pのファインダーはよく見るとチタンカバーにわずかな凹みがあります。ヘルメットの役くらいは果たすということなのかな。先のコンタックスT2のような神話はないけど、硬いというのもほどほどなんだと思います。実際のところどうなんでしょうね。
 

F3/Tの当初のチタンカラーモデルは、新しいうちはとてもキレイなんですが、少し使うだけですぐに薄汚れてきます。汚れも落ちづらい。これね、かなり悲しいですね。真鍮素材カメラのようにヤレの美学がないのは困ります。そもそもチタンカラーとか言いますけど、本当のチタン素材の色とはかなり違いますよね。本当のチタンの色はグレーっぽくて地味な印象です。
 

F3/Tの色をあえていうならシャンパンカラーです。でも通じないので本稿でも、「チタンカラー」で通しますね。この当時で似たチタンカラーの一眼レフには、オリンパスOM-4Tiがあったんじゃないかな。
 

それにしてもF3/Tのチタンカラーモデルは汚くなるのが早いんで、最後はブラックモデルだけにしたのかもしれませんね。ただね、このブラックも塗装が剥げやすいんです。変なグレーのチタン素材色が出てきます。日焼けした皮膚が剥けるみたいな感じです。ノーマルのF3はブラック塗装が剥げるとお馴染みの真鍮素材が出てきます。F3/Tブラックは経年変化を上手に表現しづらいカメラだなと思いました。

 


モータードライブMD-4を装着してみました。昨今はフィルムがあまりにも高価なので無駄打ちしないようにフィルムは手巻きで行うことが多い筆者なのですが、手持ちで低速のシャッターを使用ような撮影ではMD-4で連続撮影した方がブレが少ないよう思います。そんな撮影の機会はあまりないかもしれないけど。

 

当初のF3/Tのチタンカラーモデルは透明のプラケースに入っていたような記憶があります。色が綺麗なので使わないで飾っておけということなのでしょうか。このために元箱はまるでヘルメットが入るくらいの大きさになりました。


このあたりのも、プロが酷使するための質実剛健なカメラとしてはその精神に反するような販売方法、プレミアムな立ち位置として存在しています。もちろん、こうした価値観をどう考えるかはみなさんの自由ですけど。ブラックではこのプラケースはどうなったんだろう。当初はあったのかな。
 

植村直己さんは1984年にマッキンリーで行方知れずになってしまいましたが、その傍には、ニコンF3/Tが一緒にいるのかもしれませんね。

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