ニコンFの交換ファインダーの中で、フォトミックファインダーに次いで、人気のものはなんでしょうか。筆者の想像では「アクションファインダー」あるいは「ウエストレベル」ではないかと思うのですが、どうでしょう。筆者的にはプリズムが入っているんだから「アクション」推しになりそうだけど。
いつだったか、カメラカタログをひっくり返していて、「ニコンFアクション」なる名称を発見して、驚いたことがあります。整理が悪いので今、この資料が手元に出てこないのですが、どうやら当初からアクションファインダーを装着して販売されたFらしいのですよ。
F用のアクションファインダーはアイポイントが長く、ファインダーから60mm目を少し話しても全視野が見られるというもの。また20mm後方に置いた場合には、目を上下に16mm、左右に24mmづらしても全視野の観察を確保できるとのことです。なるほど使い方によってはヤブ睨みでもイケそうですね。カメラを頭の上にささげ持ってノーファインダーで撮るような場合とかね。今のチルト式のLCDと同じような役割を光学ファインダーにも持たせようとしたのかしら。
Nikon F Action+NIKKOR-S Auto 35mm F2.8
ニコンFアクションを正面から見てみます。美しくないですね。少し角度をつけてみせてやらねばなりません。これくらいデカいファインダーならTTLメーター入りそうだけど、無理か。
スポーツ写真撮影などに便利なほか、撮影者がゴーグルやヘルメットをしているような場合、アイピースと目が離れてしまうような場合は全視野を見渡せるので使われたとかなんとかいうもっともらしい話も聞こえてくるのですが。ほんとかしら?
しかし、ファインダーから目を離すわけですから、当たり前ですが、ファインダー像は倍率は0.7倍と通常のアイレベルファインダーの0.8倍よりも小さくなり、全体像は小さくなるわけですから、これに従いフォーカシングの精度も劣ることになりませんか?
また手持ちだとカメラも不安定になるわけで、この時代は、手ブレ補正なんて便利なレンズはありませんでしたから不安ですよねえ。
カメラは手と腕と顔で支えるというのが基本なので。やはり広角系レンズを装着して使うのが筋なんじゃないのかなあ。アクションファインダーをバリバリ使用していました、なんてプロがいたら一度きちんとお話を聞いてみたいものでありますが、いらっしゃるのでしょうか。
ただ、ファインダーアイピースの大きさとか見ますと、当時の光学エンジニアとか製造現場のやる気みたいなものを強く感じますよね。とくにFのアクションファインダーは素晴らしく仕上げがよく美しいんですよ。
ファインダーアイピースのデカさがいいですねえ。たしか専用のキャップがあったと思いますが、見当たらんのです。視度補正レンズはないよね。
一番の謎は、筆者自身、アクションファインダーを装着したニコン(アクションファインダーはFからF5まで各機種に用意されていた)を撮影現場で見たことは数えるほどしかないことなんですよね。使用している人に訊いておけばよかったですね。個人的にはアクションファインダーのデザインは嫌いではありませんので、とりあえず所有はしておりますが、撮影現場に持ち出したことは数回しかないんじゃないかなあ。なんか恥ずかしいじゃないですか、そういうものに頼る感じが(笑)。
余談ですが、ニコンFEにニコンF2時代のものですかねえ、アクションファインダーを取り付けたモデルをどこかで見せられた記憶があるんです。
たしかナショジオかなんかの要望で少数作ったとか聞きましたが、ウラは取れていません。それとも報道用のモデルだったんでしょうね。あの姿を撮影しておけばよかったなあ。これもどのように使用がされたのかきちんと役立ったのかはわかりません。
こちらの角度をからみると、デカいファインダーでもなんとか見られます、個人の感想です。こちらからならメカメカしくて許される感じがしますがどうでしょうか。そうでもないか。
アタマがデカいって、顔がデカいということに通じるので、どうにも今ふうじゃないということなのかな。この角度からみると全体は美しくないですね。
そういえば以前のことですが、Mr.ニコンの後藤哲朗さんから、時代を経るごとに交換ファインダーは売れなくなっていったという話を聞きました。
理由はよくわかりません。だから最後のF6ではファインダーは固定式になってしまったし、キヤノンはEOSフラッグシップ、EOS−1シリーズでは交換ファインダーとは決別しているのはご存知の通りです。
あ、ここだけの話ですが、ニコンF5のアクションファインダーはすごく製造数が少なくて“珍品” らしいですぜ。価値があるのかどうかは知りませんが念のために書いておきます。筆者は所有していないけど、ちょっと欲しいような気がしましたが。ええ、気のせいでしょう。
筆者もアクションファインダーをつけたFを持ち歩いても恥ずかしくない年齢に到達いたました。これもまた年寄りになる利点であります。そろそろ本気入れて使ってやろうかなと思い始めており、現在思案中であります。このまま忘れてしまうかもしれませんけどね。
スーザン・ソンタグは、優れた写真家はシンプルな装備で仕事をすると書いておりました。
が、筆者の場合は優れた写真家ではないので、ニコンFのようなシンプルな一眼レフを使い、装飾的なファインダー遊びをしても許されてしまうわけであります。ええ、なんの問題もないでしょう。
真上から見た時のみ「F」文字を拝めることができるのですが、アイレベルファインダーを正面上から見た感じに似ています。こうしたどうでもいいことが気になります。
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