top コラム推すぜ!ニコンFシステム第12回 ニコンFの皮を纏ったF2「ニコンF2フォトミック 710万台ボディ」

推すぜ!ニコンFシステム

第12回 ニコンFの皮を纏ったF2「ニコンF2フォトミック 710万台ボディ」

2022/12/03
赤城耕一

ニコンF2の「F革」を見てみる。 

 

ニコンF2も10年近く製造販売されたので、時代ごとに製造されたモデルをみるとかなり細かい変化があることがわかります。
カメラは精密機械なんだから初期型で不具合見つかったら後期型では治してあるんじゃねえのか、というのは当然でありますし、実際にパーツのデザインなど細かい改良もあるのですが、とくに問題はない機種の場合は、多くの改良はコストダウンのためだったりします。
つまり初期のモデルではかなり気を使って製造された金属パーツが後期では大丈夫だろうということでなぜか簡易的なプラスチック製になっていたりします。カメラ内部の見えないところですし、コストダウンがわかるとがっかりすることもありますね。実際にパーツの材質により不具合が出るのでしょうか。不具合が出るかどうかはまた別の話です。

 

私はこうした同一機種のカメラ遍歴の研究者ではありませんので、手に入れた初期のニコンF2ボディに、後期型のフォトミックAファインダー(連載の後半でお話をしますね)を平気で装着して使っています。
こういうモデルをぶら下げて撮影していて、街でニコン研究一筋23年。みたいな方に見つかってしまい、うっかり本モデルを見せようものなら大変なことになります。

 

「(ファインダーとカメラボディの)時代が合っていませんね」と、厳しく罵倒されることがあります。もうね、謝るしかないですけどね。もちろん本人は1mmも悪いと思ってませんけどね。
いや、本当に研究者ではないので、F2の変化もほんの上っ面だけしか知りませんが、覚書的に今回うちにある一番古いと思われる製造番号710万台のF2フォトミックと比較し暗い過去を思い出してしまうような作られたモデルを取り上げてみようかと。

 

“F革” 製造番号710万台の初期モデルのみだと思いますが、ニコンFの皮を纏ったF2です。個性的な艶と感触を感じるのがいいですね。

 

ニコンFの残り香を強く感じるF2初期時代

 

まず、外装の革を見てみましょう。これくらいは私も知っていますが全体に「F革」というやつを纏っておりますね。
つまりニコンFと同じ貼り革が使われています。という意味のようです。

巻き戻しクランクのシャフトは細めで華奢です。F2ではクランクを引き上げてフィルム巻き戻しをすることが提唱されておりますが、シャフトが細くて回しづらいんです。後期では太くなっていますね。太くなったからといって回しやすいかといえばそうでもないんですけど。
これは想像ですが巻き戻しクランクは「アサヒカメラ」の『ニューフェース診断室』で指摘されたことが気になって改良されたんじゃないかと思いますけどね、ちなみにこの診断室では1/2000秒が出ていないとか、漏光があったんじゃないかとかボロクソでしたね。
ニコンFが診断されたときもかなりの辛口でしたが、またもや日本光学の青年将校がF2の記事を気に入らずアサヒカメラ編集部を襲撃するなんてことにはならなかったみたいですけども。

 

左は710万台のF2の革、右はニコンFです。確かに革シボのデザインは両者ほぼ同じですね。

 

巻き戻しノブとクランクです。製造番号710万台と780万台のものとを並べました。初期のものは貧弱です。というかFのデザインに近いのかな。のちに太くなりますね。だからといって、クランクを回すのが容易になったわけでもなく。

 

続けて、ミラーアップ用のノブにはロックがなく、そのまま回りますね、のちにこのノブはボディ側に押さないと回らないようロック方式になりました。マウントの座金のネジはマイナスです、当然ですが、後にはプラスネジになります。 

裏蓋を開けると、目につくのは巻き上げスプールの溝ですね、初期のものは溝がたくさんありますが、後期のものになると少なくなります。確か、溝がたくさんあることはF2の特徴の一つだったと、カタログで読んだ記憶があります。この理由はわかりませんが、溝がたくさんあるものは、フィルムが小さくちぎれてしまうような現象が経験的にありました。

 

左が710万台、右は780万台です。マウントの座金のネジは前者がマイナス、後者がプラスですね。よく目につく場所はマイナスにしておけというのが年配カメラエンジニアの矜持だったのかもしれませんが、製造現場では面倒なんですよねマイナスネジ。


 

フィルム巻上げスプールです。710万台の方がスリットがたくさんあります。つまり、スプールを回さなくても常にスリットが見える位置にあるからフィルムのリーダー部を差し込みやすいぜということなんでしょう。いつからかこれは廃止となりスリットの数が減りました。

 

フォトミックファインダーにも施された「F革」

 

フォトミックファインダーも「F革」ですね。しかもアイピースの上まで貼り革があります。ミラーアップした時に見える、ミラーを受ける軸も初期のものと後期のものでは違いますね。なんの意味があるのかはわかりません。
何にせよ、だからどうしたということなんですが、先のウルサ方のコレクターさんなどから見ると、だらしない感じがしたのかもしれませんが、今さらボディのシリアルを見て、それに時代合うがごとくファインダーを組み合わせるなんて私には無理であります。今回はたまさか購入してデフォルトのままだったF2フォトミックを見つけて軽く報告しただけです。色々ご存じの方はご自身のSNSなどをお使いになり発信された方が良いかと。情報お待ちします。

 

フォトミックファインダーDP-1の新旧違いですね。左は710万台、右は独自に仕入れた中期タイプかな。710万台に装着されていたものはアイピースの上まで「F革」で覆われています。

 

左が710万台のF2の革シボ、右が780万台の革シボです。F革の方がカッコよくないですか、そうでもないのか。

 

 

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