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推すぜ!ニコンFシステム

第29回 ロングセラーの名機!電子シャッター搭載の絞り優先AE機「ニコンF3」

2023/03/30
赤城耕一

筆者とF3との40年に渡る印象を記してみよう

 

ニコンF3は20年もの間、販売されたカメラですから、ユーザーも膨大な人数がいると思います。今日に至るまでさまざまな場所、条件で活躍し、そして多くの逸話が生まれました。誕生日は1980年3月25日でありますから、今年で43歳になります。ニコンEMも当初はすでに述べましたように海外で先行発売されましたが、国内発売はF3と同日のようです。
 

それと前回、ニコンEMを取り上げた時、同時に登場したニコンレンズシリーズEはOEM製品ではないかと書きましたが、実際にはニコンで設計されたものを協力会社において生産委託したものがあるというのが正しいところであると関係者から指摘がありました。こちらで訂正し、お詫びします。
 

さて、ニコンF3に対して一言、何か言わせろという論文でも公募したら、たくさんの応募が来そうですし、浅学非才な筆者が何か申し上げたところで、読者のみなさまには面白くはないとは思いますが、F3はニコンFシステムの中では絶対に避けては通れない機種であります。今後数回に渡り、F3の話をしようと考えていますが、今さらスペック表に並ぶようなことをつらつらと羅列してお話ししても意味はないでしょう。資料によらずして、これまでの筆者自身の体験から論を進めてみようかと思います。つまり、これまでの本連載で書いてきた通りのニュアンス、すなわち、筆者とニコンF3の戯れ、じゃない実際に今日まで使用してきた関係性を考えながら、展開したいと考えております。早い話が筆者とF3との40年に渡る印象を記してみようというわけです。

 

筆者の元に数台あるF3のうち、最も古いニコンF3です。ノーマルのアイレベルファインダーつきがデザイン的にも一番魅力があります。ボディ右の赤ラインはジュージアーロのアイデアだと思いますが、象徴的な意味がありますね。この個体は長く使用していなかったのですが、バッテリーを入れたら、眠りから醒め、何の問題もなく動作しました。
 

それにしても同じカメラが20年売られたということは、ずーっと需要があり続けたということの証明であり、これは驚きであると同時に名機であることは間違いありません。それでもF3登場時の当初の印象は筆者の周りの先達同業者の間では歓迎されるものではありませんでした。
 

理由は単純です、F3は絞り優先AE機能を搭載したこと、往時の言い方をすれば、「電気カメラ」になったからですね。電子シャッターを搭載したため電池がなければカメラとして機能しないとはけしからんという声が一部に挙がったわけです。

 

ボディ上部、シャッターボタン下のレバーを回すと赤点が現れ、電源がオンになります。右はシャッタースピードダイヤルの下にあるセルフタイマーレバーを動かした時に出現する赤点です。電源はオンのままでもさほどバッテリーの消耗に影響はない印象ですが、間違えてバックの中でシャッターが切れて長時間露光になるような事態を防ぐ意味もあったのでは。

 

建前ではありますが、プロが使う過酷な撮影条件で、果たして電気カメラで大丈夫なのか、という不安からきているのですが、プロカメラマン全員が過酷な撮影条件の下で撮ることなどありえません。往時でもSR(LR)44バッテリーなど、カメラ店以外でも入手しやすくなっていましたし、それこそ今やコンビニやドラッグストアや100円ショップでも販売されているくらい世界のどこででも入手可能ですから不安はなくなりました。

 

あとは、耐久性の問題ですが、これまでのニコンフラッグシップだったFやF2と比較して大丈夫なのかという話も当然出てきました。これもフルメカニカルのカメラは頑丈だという都市伝説に基づいていますが、実際はある程度年月を経なければ耐久性などわかるわけもなく。ニコンは真面目な会社ですから、F3だって発売にこぎつけるまでに過酷な耐久力テストも行なっているはずですし、結果的には間違いのないカメラに仕上がっていたはずです。というか20年現役であり続けたわけですからこれは耐久性に関しても評判が高かった証だと思います。

 

AI連動レバーは跳ね上げることができますのでニッコールオートレンズもそのまま装着が可能ですね。このあたりのフォローは万全です。というかニコンフラッグシップの気概でもあります。

 

写りとは関係ないところにお金がかけられている

 

筆者はF3発売当時はまだ駆け出しの頃で35mm一眼レフを使うような依頼仕事はほとんどなく、実際のところ現場での評判をすぐに聞くことはできませんでした。したがってF3導入は必然とはしていなかったのですが、カメラ好きとしては、気になる機種でありました。F3発売当時のカメラ雑誌の記事などを見ると、評判は良いことはわかりました。

 

デザインは有名なデザイナーのジュージアーロの手によるもの、発売時にはブラックボディしかないというのも、キヤノンF-1みたいな立ち位置に近い超高級機路線なわけです。
 

写りとは関係ないところにお金がかけられていることは、筆者にもわかりました。いくらニコンがプロ用のカメラであるとうたっても、最大のお客様はアマチュアのみなさまです。筆者は今も、カメラメーカーのエンジニアに会う機会がある時に、「プロの意見を聞いて、カメラに反映させる必要はない」という話を繰り返ししておりますが、これは真剣にそう思っています。

 

フィルムカウンター窓は大きく扇形ですね。数字は青というのは変わっています。綺麗な色ですが、暗いところは数字が見にくいというリスクもありました。これは筆者が老眼になってから特に思うところであります。
 

AEで撮影した記憶がありません

 

F3は電子シャッター搭載の絞り優先AE機でありますから、一般的な使用においては便利なことは間違いありません。絞り優先AEは、すでにニコマートELシリーズで搭載されており、ニコンユーザーとしては慣れているわけで、機能はとても受け入れやすいと思われた方もたくさんいると思います。

 

ただ、先に述べたように筆者の場合はこの当時、仕事で使用するメインカメラは大判か中判でしたので、正直35mmカメラのことを軽んじて見ていました。プライベートな撮影には35mm一眼レフも使用しましたが、F3もアマチュアが主に使用するカメラであろうからフラッグシップという立ち位置でもF2の後継機ならば絞り優先AE機構を搭載するのは当然だと思いました。保守的なプロはこれに反発するのは当然であると言えるでしょう。

 

筆者がF3を入手するのは発売からずいぶん後、グラフ誌とか週刊誌のグラビアにおいて仕事をするようになってからのこと。被写体は森羅万象となり。カメラにも機動力を求められるようになったからですね。

 

実際にF3を使用し始めても露出はAEに任せきりという撮影はなかったと思います。というかAEで撮影した記憶がありません。

 

巻き戻しクランク部の下に露光補正ダイヤルがありますが、とても操作しづらいのです。まるで使ってくれるなと言っているようでした。だからマニュアル露出に切り替えた方が便利ですし、露光補正の戻し忘れなどのトラブルも防ぐことができます。

 

同じく巻き戻しクランク下にあるISO感度設定ダイヤルです。数字が小さいので老眼には厳しい。パトローネのDXコード対応ではないので、使用フィルムの感度は正確に合わせる必要があります。

 

とくにカラーポジフィルムでは1/3絞りの違いでも印象の変化や結果が変わります。印刷原稿用のポジフィルムは一般的には多少露出をアンダーめに抑え、印刷段階で明るさを調整して上げてゆくというやり方もよく取られていました。週刊誌のグラビアやグラフ誌の印刷オペレーターの間では阿吽の呼吸みたいなところもあったわけです。
 

F3は専用スピードライトにおいてもTTL自動調光制御を行っていましたから、露出に関してはとにかくあらゆる条件で自動化を行うことが目標だったのでしょう。でも、正直このTTL調光も、怖くて使うことができませんでした。定常光撮影と同様に被写体の反射率や色で露出が変化してしまうからです。もちろん適宜に露出補正を行うという手もありますが、補正量は勘の世界。こうなると単体露出計を使用した方が確実となるわけです。やはりプロの間では「何のためのAEか」という疑問があったわけですね。

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