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推すぜ!ニコンFシステム

第19回 実用ニコン一眼レフの屋台骨を支えたロングセラー機「ニコマートFTN」

2023/01/20
赤城耕一

ニコマートFTN+ニッコールNCオート 24mm F2.8(Ai改)

 

平均測光から中央重点測光方式へ

 

ちょっと時代を戻してと。ニコマートFTNの話をするのを忘れておりました。
ニコマートFTNはニコマートFTのモデルチェンジ、つまりNewだからFTNというネーミングであると筆者は長いこと信じ込んでおりましたが、どうやら正解は「narrow」。英語で“狭い”という意味だそうで、中央部重点測光を採用したからNが加えられたということなのです。本当かなあ。本当なんだろうなあ。
 

ニコマートFTNはファインダー中央の12mmの円、ここで60パーセント、周囲から40パーセントの光を受けて、結果を出すみたいですね。どこを測光しているかわからない平均測光よりも明確です。主要被写体は常にセンターにあるんだぜという考え方でしょうか。登場したのは1967年。ニコンFシリーズのフォトミックTNと同じ年ですね。
ネーミングからみてフォトミックTNとニコマートFTNの共通項は中央部重点測光方式を採用していることでありましょう。

 

ニコマート初のガチャガチャ方式採用機

 

またニコマートFTNはニコマートシリーズで初めてガチャガチャ方式を搭載しております。そう、カメラ側のメーター連動ピンとニッコールオートレンズの絞り環にあるカニの鋏をカップリングさせることが必要な儀式です。

 

先に飛ばして書いてしまいましたが、ニコマートEL同様に、カメラにレンズを装着する前に、カメラ側のメーターのカップリングピンを右に回して固定し、レンズの絞り値をF5.6にすることでスムーズにコトは終わります。で装着したら絞り開放から最小絞りまで、往復させればよく、これで装着レンズの開放F値が、ボディ側に伝えられますね。何度となく書いておりますが「ガチャガチャ」ですね。
 

ちなみにニコンFシリーズでガチャガチャするモデルは1968年のニコンフォトミックFTNからですので、ガチャガチャに関してはニコマートの方が少し早かったのではという理屈が成り立ちますが、どうですか発売当時を知る人。画期的だったのでしょうか。

 

「N」の文字があればFTNだということなんでしょうね。FTと見分けるための記号みたいなもので。デザインはほとんど同じですし。

 

巻き上げレバー兼用のメータースイッチですが、巻き上げる前、巻き上げ後でも予備角まで引き出して固定できるように改良されてますね。指あてのプラスチックはニコンF2登場に合わせて加えられました。カウンター窓が必要以上にデカめ。

 

ファインダースクリーンの改良で明るくなったファンダー視野

 

ファインダーの視野はFTと似ていますが、粗めの同心円も気にならなくなり、だいぶ明るくなった印象です。マット部の目が細かくなったこともあるのでしょう。
うちにあるニコマートFTNくんは、スクリーンがJ型。すなわちマイクロプリズムです。A型、スプリットイメージのものもあったようですが、巻き上げレバーの上に「J」とか「A」とかシールが貼られていたこともあったようです。どちらの方が数が出たんでしょうかねえ。
 

もちろんベテラン勢はマット部において頑張ってフォーカシングしようとします。エラいですねえ。でもね、広角系の大口径レンズなどは、おとなしくスプリットでもマイクロプリズムでもいいから参考に使用してみた方が精度は高くなると思いますよ、経験的に。そうなると撮影効率は少し上がると思いますけどね。ええ、無理にそうしろというわけでもないけど。


 

なに? それではコサイン誤差があるから心配だ? いいんですよ、心配なら少し絞っておけばいいじゃないですか。そういう考え方をしているから筆者はダメなのかもしれませんけどね。レンズは開放絞りでしか撮影しないという方を筆者は尊敬しています。真似できないもん。
 

中央部重点測光とガチャガチャとファインダースクリーンの改良以外にニコマートFTNに何があるかといえば、1971年のニコンF2登場以降のニコマートFTNには、黒色のプラスチック製カバーがつけられて、大量の撮影をしても親指が痛くなるようなことがなくなりました。さらにセルフタイマーレバーにもF2に似た黒色プラスチック製カバーがつけられました。ま、ちょっとしたマイナーチェンジであります。

 

セルフタイマーレバーですが、ニコンF2と似たデザインです。本来は共用できないはずですが、ニコンFにこのレバーをつけられている個体を時々見ますね。

 

 

フィルム感度セットレバーです。結構重たいですね。力任せにぐりぐり動かします。摺動抵抗がマウント基部にあるのでしょうか。

 

 

頑丈な、いいカメラですよ、マジで。

 

あいかわらず、ペンタプリズム上部につけるアクセサリーシューは省略されており、後で別売りのシューを買って、ファインダーアイピースのネジを利用して装着する方法がとられています。頑なにデザイン守りますよね。
縦走り金属幕のコパル製シャッターはFTと同様にかなり大きな音で走行します。フィルム巻き上げも一作動で、小刻み巻き上げはできません。機構的には変わってないですもんねえ。
 

ニコマートFTNは1967-1975年まで販売されていたので、往時としてはそれなりのロングセラーカメラではないでしょうか。相当な台数が作られたのだと思います。稼ぎ頭だったんじゃないかなあ。
中古市場でも相当数見かけますが、冗談のような廉価な価格がつけられていることもあり。ジャンク箱に投げ込まれている個体も多く見かけますね。これも不憫でありますが、さすがに筆者が救出するのはもう限界であります。もう少し大切にしてあげるとちゃんと応えてくれるし、けっこう頑丈ですしね。いいカメラだと思いますよ、マジで。 

 

レンズのF No.表示指標です。設定レンズの開放F値を表示します。この場合はF2.8のレンズという意味ですね。

 

 

シャッタースピード指標です。今回始めたわかったのですが、これ銀色ですね。シャッタースピードの数値が映っております。意図的なものですかねえ。だからどうしたという世界ですけど。

 

 

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