Nikomat FS+Micro-NIKKOR-P Auto 55mmF3.5(Ai改)
ニコマートではまだご紹介しておきたいカメラがありまして。その名も「ニコマートFS」と申します。1965年発売だそうですよ。市場ではあるようなないような、見かけることが割と少ないモデルであることは確かですね。と、いうことは、早い話が売れなかったわけです。
でもね、数が少ないから必ずしも珍品となるわけでもなく、ニコマートFSは少し目をつぶれば買えなくはない価格に収まっています、とはいえ前回紹介したニコマートFTと比べれば高価ではあります。ま、悩んでください。でも、筆者の見たところ、程度の悪いものばかりです。
で、このFSは「語るところのないカメラ」でありまして、それはなぜかと申しますれば、メーターが非内蔵だからであります。単純にいえば前回のニコマートFTからメーターを省略したカメラという言い方もできます。
好きですよね?あなた。メーター内蔵していない一眼レフカメラ。
メーターは非内蔵なんで、せっかくのニッコールオートレンズのカニの鋏が空席のまま遊んでおるのが印象的ですね。少し寂しいじゃないですかねえ。
ニコマートFSを持つ人はどこか自信があるんじゃないですかねえ。自身が人間露出計と化しているわけですから、TTLメーターよりも正確に露出当ててみせるぜ、なんて考えているのではないでしょうか。
実際はそうではなくて、ニコマート系のTTL露出計は、経年変化で精度的に怪しいものが多くて、動いてもデタラメな指示値が出たりします。毎度の繰り返しになりますが、筆者は一応動くようにできている装置は精度に関係なく動かないとイヤな人なので、メーターの指示値がデタラメでもそれほど気にしないのです。
それでも神経を集中したい撮影の場合はファインダー内の指針も邪魔くさくなります。とくにニコマートFT系の場合は視野内に針が突き出ているわけですからより気になります。
FSの場合はファインダー視野内は、指針でどころかシャッタースピード表示窓もないわけです。感覚的にはニコンFアイレベルと同じですね。うちにある2台のニコマートFSの個体は両方ともマイクロプリズムのスクリーンでありまして、スプリットイメージとか、他のスクリーンがあるというのは確認しておりません。
FSの製造台数は少ないのでしょうけど、シリアルナンバーはいけてますね。
あとですね、ミラーアップレバーもないですね。だからニッコール2.1cm F4みたいなミラーアップしないと取り付けられないレンズも使用不可ですね。エラいのはプレビューボタンが省略されていないことですね。みんな被写界深度を確認するのが好きだったのでしょうか?実際には大してアテになんかならんのに。
もともと縦走り金属製のコパルスクエアSはミラーがないと漏光の危険とかありそうですから、これはまあいいんじゃないかと思います。
全体的にいまふうにいえばエントリークラスなんだけど、FSの場合はアクセサリーとして外付けの外部測光メーターが用意されていないと思うわけ。たぶん。あ、調べるのが面倒なので一応そう書いておきますね。しつこく調べたい方はどうぞお願いします。
でもね、ニコレックスFには、看板みたいなセレン式のメーターありましたけどね、FSにこれが用意されていないのは謎ですよね。
何を言いたいかといえば、外付けのメーターの用意がないのであれば、ニコマートFSは写真の露出を熟知している人に向けたカメラという言い方をしてもいいのではないかと思うわけです。ただの普及機という位置づけではなくてね。メーターを使いたい人はセコニックのスタデラあたりを使いましょうってことかもしれません。
プレビューボタン。このクラスのカメラに必要なのかと言われると、さて、どうですかね。肉眼と出来上がりのボケ味がデカいですね。
フィルム給送関連の巻き上げレバーとかスプールとか、巻き戻しクランクとかはニコマートFTと同じですね。味気ないといえばそれまでですけどね。この巻き上げスプールにある乳白のプラスチックは割れやすいので取り扱い注意ですと中古カメラ屋さんに言われた記憶があるので、あえて書いておくことにしました。
冒頭に述べたようにニコマートFSは短命だったみたいですね。売れなかったのはやはり、Nikon FシステムにたいしてNikomat名にしたからでしょうかねえ。これがNikonだったらカッコよかったんじゃないのかなあ。ま、外部メーターもないのでは将来の拡張や発展も見込めませんから、これ一台で完結となるわけですね。
ね、「語るところのないカメラ」でしょ?ニコマートFS。ブラックボディがあればもうちょとプロ用機として引っ張れたかなあ。もしかすると試作機あたりでは存在していたりして。確認はしていないけど。誰も気にしてはないだろうなあ。
底蓋。これも当たり前だけど、バッテリー室は省略ではなくFS専用の底蓋ですねえ。ワインダーとかの用意はこの頃はありません。
シャッタースピードダイヤル。お世辞にもあまり使いやすくはないなあ。
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