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推すぜ!ニコンFシステム

第22回 ニコマートシリーズ最終モデルにして、ついに”ガチャガチャ”から卒業!「ニコマートFT3」

2023/02/10
赤城耕一

同じマウント形状を維持しながらAI化を実現

 

毎度お楽しみいただきましたニコマート物語も、惜しまれつつ今回で最終回となります。はい、誰も惜しんでいないので自分で言いました。みなさんこんにちは。ニコマート一筋のアカギでございます。今日もマウント基部にあるシャッターダイヤルを回すところから本編をスタートしたいと思います。
 

ニコマート最後ですからFT3でございます。FTシリーズでは3代めになります。FSはメーターのない亜種としてシリーズには入れてもらえないのでしょうか。よくわかりませんが。
 

で、このFT3でニコンは変わりました。そうです。AI(Automatic Maximum Aperture Indexing)化でありますね。装着レンズの開放F値を絞り環を回すことでボディに伝える必要がなくなりました。つまりガチャガチャがしたくてもできないのです。FT3にはレンズ側のカニの爪に入る連動ピンがもう存在しません。寂しいですね。ニコンはレンズ側の絞り環の形状を変え、ボディに絞り情報を伝えるための連動ガイドを新たに絞り環に設けることでボディ側に、装着レンズの開放F値を伝えることを可能にしました。
 

キャッチフレーズは「ニコンを変えずにニコンを変えた」といわれていたような記憶があります。Fマウント形状は同じですから、新旧レンズの相互互換性があります。AIタイプのものはもちろんそのまま装着し、ガチャガチャしないで開放測光ができます。ニッコールオートなど旧レンズの場合は、FT3マウントにある、AI連動爪を倒立させて装着し、かつプレビューボタンを押し、絞り込み測光をすれば使えます。ちなみに新しく発売された「AIニッコール」にもカニの爪は残されました。これは旧ニコマートやF2フォトミックで、開放測光を行うことができるように配慮されたわけです。
 

AIニッコールの絞り環には、カメラボディ側でファインダー内の絞り表示のため、光学式に読み取るための絞り数値が新たに小さく刻印されたので、爪の影で数値が陰らないように穴開けされ、配慮されています。ただ、一部にはこの形状を称して豚の鼻だと悪口をいう人がいました。
 

ボディ上部のメーター指針窓。もうFTから連綿と続いております.
FT3の刻印が打たれることになろうとは、当初の基本設計が良いカメラなのでしょう。

 

なんと旧方式のニッコールレンズもAI化!

 

ニコンの凄さはこれだけではありませんでした。一部に制限があるものの、それまでの旧方式のニッコールオートレンズとかNew ニッコールをAI化する改造サービスをはじめたのです。これはレンズごとの絞り環をガイドつきのAIタイプのものに交換することで対応しますが、驚きなのは、この絞り環は新たに個々のニッコールレンズに合わせて製造したものなのであります。正直、このコストのかけ方は正気の沙汰ではない感じがしますが、本当にやってしまったわけです。大丈夫なのか。いや大丈夫ですから今があるのですからこの面倒見の良さは、若かったカメラ少年の私にも響きました。「ニコンに一生ついてゆくぞ」と。ええ、今となっては大嘘をついてしまいました。
 

旧タイプレンズからAIタイプへの改造は有料ですが、ニコマートFT3のようなAIタイプのボディやF2用のAI化したフォトミックAファインダーを購入すると1本が無償になりました。エラいですよねえ。
 

ニッコールオートレンズは、中古市場ではあまり人気ないみたいですが、このAI改造されたものは、ちょっぴり価格が高めですね。ただ、世の中には変わった人がいて、このAI化したレンズを、「オリジナルが損なわれたもの」として評価しない人たちも一部にはいるのです。
 

もちろんそれも否定はしません。頑張って、オリジナルを未来に継承するように頑張っていただきたいですね。
 

そういえばかつて、某大新聞社のカメラマンだった人に話を聞く機会がありました。
 

彼は大のニコンファン(新聞社のカメラマンにカメラ好きは珍しいのです)で、当時会社に出入りしていたニコンのメンテナンスサービスが自分の使うレンズを勝手にAI改造をしたとして、怒りまくり、絞り環を元に戻させたという話を自慢げにしていました。
 

そういえばこのカメラマンさん、ニコンFやニコマートFTNの巻き上げレバーやセルフタイマーレバーの先にプラスチックがつけられた時も新しいパーツに付け替える改造を拒否したと威張って話をしていました。
 

筆者はこの新聞社は得意先でしたが、この話を聞いた途端に密かにこの社の新聞購読をやめて他の新聞に変えました(笑)。

 


レンズ側のメーター連動ガイドとカップリングさせるための爪。跳ね上げ方式なので、未改造のニッコールオートレンズを装着するときは跳ね上げる(左)、爪の右にあるのはロックボタン。

 

ホント、ニコンの粋を感じました

 

余計な話をしましたが、メーターの連動方式を変えるだけで、これだけの手当をした当時のニコンの粋を筆者は感じますね。普通なら「旧レンズを持っている人は新しいカメラにつくことはつくけど、絞り込み測光になってしまいます我慢してね」で済ませてしまうに違いないからです。
 

筆者は意地悪ですから、このAI改造のレンズを見るたびに、今のFTZアダプターの仕様はこれでいいのかと暴れそうになりますが、話がまた逸れてしまいますし、またしても嫌われてしまいそうですから、このへんでヤメておくことにします。
 

ニコマートFT3の基本スペックに関してはFT2とはほとんど変わりませんから割愛しますが、製造台数の少なさから一時はプレミアがつくほどでした。コレクターの中には探している人が多かったのです。これもニコンマニアの心理というやつでありましょう。もちろんニコマートFT2よりもFT3のほうがよく写ることは世間では知られていないようです。

 

あ、そこの人、本気にしないでください。

 

AIズームニッコール35-70mm F3.5を装着。絞り環にある連動ガイドと、ボディ側の爪がカップリングしていることが必要だ。 

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