カメラのP(プログラムAE)モードって、読者のみなさまはお使いになるのでしょうか。筆者が本気でPモードを使い始めたのは割と最近のこと、というか、デジタル時代になってだいぶ経ってからで、その本質というか、使いこなしがわかってからであります。
ええ、おじいさんは意固地であります。昔からの撮影手順が狂うと不安になるというか。もっともPモードは手順を省くことになるモードでありましたから、撮影者はピントを合わす以外やることがありません。非常と感じてしまいます。
今回紹介するニコンFGはニコン一眼レフで初のPモード、すなわちプログラムAEが搭載されたものです。もうね、往時はバカにしてましたね、Pモードは写真の基本を知らないビギナーが使うものだってね。
ニコンレンズシリーズE 36-72mm F3.5を装着しています。整合性高いし真面目な感じしませんか。廉価なレンズだけど結構よく写ります。でも最短撮影距離が1.2mなんで実際に使うと暴れたくなります。
コンパクトカメラではPモード搭載は珍しくないというか普通のことだけど、一応は本格的に写真をやりたい人が使う一眼レフにPモードを搭載するとは何事か、という機運がなきにしもあらずでしたよ。しかも天下のニコンの一眼レフがPモードを載せるとは何事的な(笑)。
FGのベース機って、EMなんですよね。EMって考えてみれば、絞り優先AEオンリーなわけだからFGより割り切りをはっきりさせたビギナー機なわけですよね。なんせシャッターダイヤルすら省略してましたからねえ、手にしてもいじくるところはないわけです。
まあ、でもニコンFGってなかなかカッコいいというか、可愛いヤツであります。小型軽量だし、ボディ外装はエンジニアリングプラスチックなんだろうけど、高級感はそこそこにあります。シャッターボタンとシャッタースピードダイヤルは同軸にありますね。このこともボディの長さを縮めることができたわけですね。フィルム巻き上げレバーは中折れ式というやつで恐ろしく軽いですね。フィルム装填時に、きちんと巻き上げっているか確認したほうがいいですぜ。フィルム装填しても軽いもん。縦走りシャッターのカメラにしてはめずらしく小刻み巻き上げを可能にしています。ワインダーとかモータードライブも使えますが、どこかにお隠れになっており、現在試せませんが、いらないですねそんなものは。
中折れ式のフィルム巻き上げレバー。ものすごくトルクが軽いですね。縦走りのフォーカルプレーンシャッターですが、小刻み巻き上げもできてしまいます。ニコマートとかFMとかできねえんですぜ。
惜しいのはプレビューレバーがないことですね。いや、あってもどうせ使わないんだけどね、でもさ、これがあると、一応装着レンズの被写界深度を確認する真面目なオレを気取ることができるわけです。ああ、実際の被写界深度なんかアテにはなりませんが。
FGの露出機能を簡単にいえばEMにシャッターダイヤルを搭載して、A(絞り優先AE)とM(マニュアル露出)を可能にしました。マルチモード機の走りみたいなものです。
Pモードで撮る時はシャッターダイヤルをPに設定し、装着レンズの絞りを最小絞りに設定するだけですね。これでFGは自動的にシャッタースピードと絞りを決めてくれるというわけです。撮影者は何も設定する必要はなく。
露出補正は前面の逆光補正ボタンを使うか、フィルム感度ダイヤル部分にある露出補正ダイヤルを使います。例によって、補正量は撮影条件で変わりますから、撮影者の経験則による設定になります。つまりテキトーです。
逆光露出補正ボタンですね。何段補正されるんでしたっけ?調べてください。こんなもの使わないで適正露出に追い込めるように頑張りましょう。
基本的にPの機構は、T(シャッタースピード優先AE)モードを応用したものではないかと思うわけです。Tモードは設定したシャッタースピードの対して絞りを動かして適正露出に導くのですが、絞りの範囲内で収まらない時にはシャッタースピードも動かさねばならない。つまり絞りもシャッタースピードも両者ともに適正露出になるように動かしてしまえというのがPモードですね。
ニコンの場合はFマウントの基本規格を変えることなくこのPモードに対応させようというのだからエンジニアの苦労がわかります。
マウント内5時方向にある、開放F値連動ガイドとカップリングするバー。ここからのレンズの種類をカメラボディに伝えようというわけですね。電子接点の頼らずに頑張っています。健気ですね。
この連載で述べてきましたが、ニコンは開放F値の自動設定を行うために1977年にAI(Automatic Maximum Aperture Indexing)化を達成しました。絞り環にAI連動ガイドを設けて、ボディ側に連動するレバーを新たに用意、通称「ニコンのガチャガチャ」を廃止しました。
さらにAIニッコールには、ニッコールオートやNew ニッコールにはない、開放F値連動ガイドをレンズ底部に設けていますが、このレンズの底部の位置なのでマウントの規格を変更する必要はありません。
開放F値連動ガイドはこのFGから使われていますが、レンズの焦点距離によってもプログラムAE時のラインが変わります。長焦点レンズでは自動的に高速シャッタースピードでプログラムラインがシフトしますが、これは手ブレの危険を減らすためでしょう。
基本的にPモードでは、ボディから絞りを制御する必要がありますので専用レンズが必要になります。絞り作動ピンとレンズ側の絞り連動ピンの段数を確実に合わせるためのようです。ミノルタでは両優先AE機のXDを出すにあたり、MCからMDロッコールになりました。最小絞りはグリーンですね。グリーンに合わせておけば、どんな状態でも適正露出になります的な宣伝してました。本当かよ。
はい、Pモード使うときは最小絞り値に設定しますよー。なんか、カニのハサミのあるレンズの場合はボディ正面からみるとハサミの位置がボディ側から見て右方向に寄っており美しくないんだよなあ。
ニッコールレンズもニコンレンズシリーズEやAIニッコールSタイプになってからは、最小絞りがオレンジになります。これもMDロッコール同様にボディ側から絞りを制御しても正確な動作になるように改良したわけです。基本はオレンジ色の数字に合わせてPで撮影すればOK、大丈夫ですからね、ということのようです。
でもニコンFGは、Sタイプ以外のMFニッコールも装着して、Pで撮影できるようです。AIニッコールではSタイプと変わらないシーケンスをみせます。これはエラいですね。
New ニッコールやニッコールオートのAI改造レンズの場合もPモードで撮れそうです。動作を見てみるとどうやら問題はないですね。
これは瞬間絞り込み測光を採用しているからだと思われます。つまり、ボディ側から絞りを制御して、万が一絞りの狂いが生じた場合はシャッタースピードも同時に変化させて、適正露出に追い込もうという試みです。絞りが実際に動いた後に瞬時に測光、制御するわけですが、これに伴いタイムラグが若干大きいですね。
おそらくニコンFGがT(シャッタースピード優先AE)モードではなくてPモードを最初に搭載したのは、シャッタースピードが設定値と異なるスピードで走行することがあるために、やむなしとしたのではないかと。古いレンズが装着できちゃうし、これ面倒みないとまずいと思ったんだろうなあ。真面目だよね。
ファインダー内は赤色のLED表示ですが、Mでは定点合致式として使用できます。またAIとAI-Sニッコールレンズの場合は、Pモード撮影時に絞りが最小絞りから外れるとLEDが点滅してエラーを知らせます。
最小絞りにはロック機構がないので、この機能があるようですが、大きなお世話な感じもします。NewニッコールやニッコールオートのAI改造レンズは、警告が出ないで普通に使えますからねえ。最小絞り値から外れていても瞬間絞り込み測光で追い込むことができるからあまり神経質になる必要はないんじゃないかなあ。
ま、でもAIとAI-Sニッコール以外のニッコールレンズを使う場合はA(絞り優先AE)ないしはM(マニュアル露出)を使ったほうが無難かもしれないですね。きっとニコンもこれらのレンズではPモードを推奨していないと思われます。
ニコンFGを安っぽく見せるのは、アイピース窓が四角いことかなあ。これはいただけないですね。スペース的に高さを抑えたかったのでしょうか。
あと、そうだ、FGはTTL自動調光可能ですね。ニコンの専用スピードライトで。F3のそれとは互換性はありませんのでご注意くださいませ。正確なのかどうかは使ったことがないのでコメントを避けます。
なお、FGはMモード撮影の場合でもすごいのです。この時のシャッタースピードはクォーツ制御ですからね、機能的にはニコンF3譲りといわれておりますね。だからどうしたんだよ。って言われると困るんだけど精度が高いんじゃないかな。
こだわりのあなたはMだけで撮影しましょうね。ポジフィルムを使い自分露出で攻める人にはバッチリじゃないかなあ。
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