みなさま2023年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。年が明けても、なんだかパッとしないのは、三が日全て酔っ払っていたからではありませんので念のため。
貧しい筆者は、正月だろうが冬休みだろうが原稿を書いているので、さすがに疲労を感じているからかもしれません。ま、これはいつものことですので、どうぞ昨年に引き続いて、おつきあいくださいませ。
さて、人が所有しているカメラとは異なる珍しいモデルが欲しいという欲望は、マニアのコレクション魂から来るものでありましょう。
個人がカスタマイズしたものではなくて、メーカーが一部のプロのために改造した、あるいは製造した特注とか限定仕様モデルでかつ一般には販売されていないとなれば、その価値は当然高くなります。一般発売された通常モデルよりも製造台数は少なくて、入手も難しいわけですから熱いマニアやコレクターさん垂涎のものとなり、色めき立つわけであります。
ニコンF2チタン+Ai-Sニッコール28mm F2.8
市販モデルのF2チタン。通称ノーネームチタンと呼ばれるプロ、報道モデルでは「Titan」刻印はありませんでした。それじゃつまらないじゃないですか。ノーネームだと誰もチタンだと気づいてくれないから自分から告白するくせに。
「ニコンF2チタン」というモデルがあります。1978-1979年に製造されたもので、これはF2の晩年に当たるでしょうか。ニコンF2の外装パーツの一部をチタンにしたモデルのことです。往時はチタンは真鍮外装と比較すると、頑強であるとされましたから、ガンガン使うプロの現場においては適していると考えられたのでしょう。
当時、このモデルを入手できたのは「報道機材課」(現在のニコンプロサービス)に登録したプロカメラマンや新聞社や通信社の報道機関のみが注文できる段取りになっていました。
筆者がF2チタンに本気度を感じたのは、ベースモデルになったのはF2 アイレベル、すなわちTTLメーター非内蔵のオーソドックスというか地味なモデルだったことです。
F2のベースモデルはF2フォトミックであることはすでにお話しました。だからフォトミック系のファインダーも同時にチタン外装にするのがスジなようにも思えますが、ニコンが選んだのはアイレベルであり、ここがまた、F2の存在感と思想的要素をくすぐられるところなわけですね。
もっともプロはTTLメーターなんか使わないぜ、ということからのアイレベルを選択したわけではなくて、単にフォトミックファインダー外装をチタンにするのは面倒だぜというところから選択されているように思えます。
ボディはマットブラックの縮緬塗装でした。そういえばと思い立って、フォトミックSBファインダーを装着してみることにしました。こちらも外装は縮緬っぽい塗装だから相性がいいわけです。でもF2チタンユーザーは便利であることを嫌う傾向があります。つまらない見栄です。
F2チタンの基本仕様は通常のF2アイレベルと同じですから、バッテリーを入れて、いずれかのフォトミックファインダーを装着すれば普通に機能します。でもまあ、プロは見栄っぱりだからF2チタンボディにフォトミックファインダーを装着して使用する人は少なかったんじゃないでしょうかねえ。知らんけど(使い方あってますか?)。
F2チタンは、実は報道モデルのほかに、のちに一般に限定発売されたモデルもありました。「Titan」刻印があり、誰でも入手は可能ですし、この刻印の有無で報道モデルと区別されています。
一般販売されたモデルは製造数が2000台(実際にはさらに多く製造されたという話もあります)とされているので、流通数が少ないモデルの方が、価値が高いという中古市場の原理原則に照らし合わせると、報道モデルよりも高価になってしかるべきですが、報道モデルは一般販売されていないので、中古市場では、存在がエラく価値があるとされているようです。
市販モデルのF2チタンはシリアルナンバーは通常モデルの続きにあるようです。報道モデルのシリアルナンバーは9から始まるんですよね。
筆者もF2チタンは複数台所有していたことがあるのですが、いま手元にあるのは一般発売のTitan刻印のあるものです。「お前、一応プロなんだからそれで恥ずかしくないのか?」と言われそうだけど、まったくそんなことはありませんぜ。だってTitanと書いてある方が遠くから判別できるから、遠くにいる人にも見せびらかせるじゃないですか。
F2チタンは、いずれも外装が黒のマット仕上げの縮緬塗装で、なかなか渋い存在でした。
ところが製造初期の段階で数台の白仕上げのF2チタンモデルがあるとされ、これは幻のカメラとされていました。
じつはF2チタン発売が発表された時にカメラ雑誌の新製品情報など、メディアに公開された製品写真はこのF2白チタンが多かったように記憶しています。このF2白チタンは、数年前に品川の「ニコンミュージアム」にて「F2チタン試作品」として公開されました。
私もこの時に実物を拝見しまして感激しましたが、この時に写真を撮るのを忘れてしまいましたので、ここに載せることはできません。ごめんなさい。ちなみにこのF2白チタンは30年くらい前に秋葉原の某カメラ店で中身を見せずに販売されていたことを記憶しています。つまり、試作品ではなくて、製品版が数台市場に出ていたのかもしれませんね。
この時の価格は現在のライカM11くらいではなかったかと記憶しています。今、これが市場に出ると億のコースではないかと囁かれておりますが、実際のところどうなんでしょうか。
ボディ底面です。通常のF2と同じ。ただし、底板もチタンです。ボディで釘が打てるというふれ込みもありましたが、都市伝説じゃないのかなあ。実際に行った人はいないでしょ?
私自身はカメラの時代遍歴など細かいところには強い興味がないので色々と語る資格もないのですが、F2チタンにも、裏蓋の材質の違いなど、バリエーションがあるそうです。研究したい人は調べて報告してください。
きわめて重要なことは、ノーマルのニコンF2アイレベルとF2チタンでは写真の出来上がりが違うということです。
ええ、大嘘です。
そうでも思わないとF2チタンを導入する意味はないのではと、そうでもないのかしら。なぜあなたはF2チタンが欲しいのですか?
アイレベルファインダーDE-1です。通常のアイレベルファインダーと製品名は同じでチタン刻印はありません。チタンのDE-1ファインダーは単体でも販売されていました。元箱に花丸みたいなTitanシールが貼られていたことを記憶しております。通常のF2に装着しアタマだけでもチタンにして頑丈にしようとしたのでしょうか。
写真では分かりづらいと思いますが、チタンのアイレベルファインダーDE-1は右側面後部がごくわずかに窪んでいます。ブツけたのではなくて、最初からこの仕様です。ボディ側のシャッタースピード距離指標を見やすくするためではないかという推測がありますが、どうでしょう。
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。