ニコンFは視野率約100パーセントが大きな特徴だと前回書きましたがファインダー交換式であるからして、少し疑問に思うところもなきにしもあらず。
それはファインダーを装着した時の遊びですね。手元にニコンFのオーソドックなアイレベルファインダー装着タイプのものがあれば試していただきたいのですが、装着したファインダーを持って、左右に軽くゆすると、ファインダーが少し動きませんか。ファインダー像を確認しながら動かしてみると像も少し動くわけです。あたりまえですけどね。
たぶん個体によっても少し違うかもしれませんが、多少は遊びはあるというか、装着がスムーズにいくようにマージンをとっているというか。これ、素人の筆者にもわかります。でもね、これで視野率約100パーセントとか言うなよって感じはしなくもありませんけど、実際のところどうなんですかね。撮影した写真の水平を出すのも怪しい感じがしますが、発売当時はおおらかだったんのでしょうか。まあ、そうはいえども撮影を始めてしまうとこんなことも忘れてしまうわけで、正直どうでもいいんですけれども。
ニコンFフォトミックが正式名称ですが、「F」名を強く打ち出している感じがします。この後のフォトミック系ファインダーはすべてTTL測光になります。アイレベルファインダーのFと比較すると、すげーカッコ悪いですね。
Fって、メーターをどう選ぶか的な歴史でもあるのですが、商店の看板みたいなセレンタイプのメーターって、デザイン的にはFのフォルムを台無しにしちゃうわけです。
このメーターを装着するとカメラ全体がものすごくカッコ悪くなりますから、私は今もまだ購入してません。けれど、シャッタースピードと絞りの両連動タイプですから、素晴らしく整合感があることは想像できます。他のメーカーにはあまり見られなかったようですね。
最初のフォトミックファインダーは外光式のCdsを内蔵した「フォトミックファインダー」です。このファインダーを装着したモデルは「ニコンFフォトミック」と呼ばれます。シャッタースピードとレンズの絞りの両方に連動します。前期と後期がありますね。後期型になって電源スイッチが入りました。写真の個体は後期型です。
測光範囲はスクリーン中央の円を目安にします。長焦点レンズを使用時には周囲の光の影響を防ぐため、「アクセプタンスコンバーター」と舌を噛みそうな絶対に覚えられない名前の筒を装着します。すると正確な露光値を得ることができるとのこと。マジかよ。
でもねえ、実用上は仕方ないのかもしれませんが、こんなボールペンのフタみたいな筒を受光部の前につけると、カッコ悪くて死にたくなります。死なないけど。
筒はねじこみタイプなので、使用しない時は紛失しないようにファインダーの脇に装着しておくことができますが、その姿もまた何とも例えようのない醜さです。個性的でいいですけどね。筆者は許容範囲が広いので、時おりブス好きに寝返るのです。無理してないです、ホントです。いや、飽きやすいという話もあります。
一連の操作方法は単純です。
ファインダーの絞り連動ピンを右端に移動させて装着レンズの絞りをF16などの最小絞りにセットします。そしてカニのハサミのあるレンズをこの連動ピンにカップリングさせます。のちのTTLを内蔵したフォトミックファインダーのために、絞り環を往復(ガチャガチャ)させて、レンズの開放F値をフォトミックファインダーに記憶させる必要はありません。電源はHDの水銀乾電池の仕様なのでアダプターでSR44などを用意する必要があります。
ファインダー視野の下に露出計表示窓を置いたのは良かったですね。指針が中央になれば適正露出です。ファインダーアイピースを覗きながら、絞りとシャッタースピードを選んで露出を合わせることができるからです。外部にも窓があり、カメラから目を離して撮影する場合はこれを見ながら測光して設定できます。
アクセプタンスコンバーターを受光素子の前にねじ込むと狭角での測光になるようです。望遠レンズなどには便利である。って書いてしまいたいですが、難しいですね。装着レンズは登場時と整合しないAi ニッコール105mm F2.5です。怒らないでください。装着して測光できればいいんですよ。
Fのカメラ本体にはメーター内蔵を考えずに交換ファインダーをリファインすることで新型カメラにしてゆこうと考える姿勢もすごいです。それにしても当時は、露出決定は相当に難易度が高かったんですかねえ、どうなんですかねえ。
メーターの機能はもちろん発展しましたが、露出値の設定に関しては昔も今も変わらないと思うんだけどね。
ただ、メーターを内蔵したことでビギナーにも気軽に使うことができ、撮影のハードルが低くなったことは確かで、これは褒められるべきでしょうね。ただ、ベテランやハイアマチュアのみなさまって、このメーターが示した値を信じたんですかねえ。どうなんだろう。
フォトミックファインダー各種の利点としてはアイレベルファインダーに対して、プリズムの腐食が気になる個体は皆無とは言いませんけど、アイレベルのそれと比較してすこしだけですが少ないように感じることです。うちにあるFの個体を基準としておりますが。
プリズムの腐食の多くは、カメラ内にあるプリズム本体をモルトが押さえて固定していることが要因と聞いています。ニコンFのファインダーをスッキリ観察したい場合は全体が少し大きくなるのですが、フォトミック系のファインダーを使用した方がいいのかもしれないですね。
もうひとつ、ファインダーの進展に伴い、ファインダースクリーンも次第に改良されていったことも見逃せないですね。マット面の同心円なんか、初期タイプのものなど、ピッチが粗すぎて目障りでしたが、次第に目立たなく、同時に明るくなります。もし古いFを購入した時にスクリーンの同心円が気になるようなら、新しいタイプのものを見つけるのも良い方法かと思います。ファインダースクリーンは後継のF2とも同じもので互換性があります。
ISO感度ダイヤルは小さい数字で、老眼の筆者には何も見えません。年寄りに厳しい表示です。マクロレンズで拡大して撮影したら自分で設定したつもりのISO(ASA)400から少しズレておりました。
フォトミックファインダーのアイピースの上にある絞り値表示窓。フォトミックファインダーを装着すると、レンズの絞り環が見えなくなるのでそのための措置なのでしょう。筆者はメーターの針が動いてもあまりアテにしていないのでこの数値表示は重要です(笑)。
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