“Jr.” いや“ジュニア” でいいんだけど、F5発売から2年後の1998年にいきなり登場してきたニコンF100のニックネームは「F5ジュニア」でした。何度も書きますけど、フィルムカメラの場合はフィルムとレンズが同じならば、同じ写りとなるわけで、両者のスペックを差別するとしたら、ファインダーが交換できるとか、コマ速度の違いくらいですかねえ。いや耐久性とかもあるのかな。ファインダーの視野率もかな。
カメラのヒエラルキーって、たしかにあるんだけどデジタル時代になってからはどうなんですかねえ、先の2つの要素に加え、画素数の違いとかがありますが、デジタルカメラでもフラッグシップ機イコール最高画素数ということにはならないですね。
ほとんどの読者のみなさんは画素数の違いで、写真の内容が大幅に異なるという体験はされていないと思いますし、仮に再現性が思い切り違ったとしても極端に写真が良くなるとは考えていないと思います。
筆者の浅薄な考えよりも、カメラマニアのみなさまのほうが、上手にフラッグシップ、ミドルクラス、エントリー機と、うまく区別してみているようです。
F100って、年末に出てきたような記憶があるのですが、予期せぬ登場でしたので、驚きました。いや、実際に驚いたのはその中身でした。ファインダー交換ができないとかコマ速が違いなどがあるのですが、なんかね、不思議な充実感があるわけです。
本稿を書くために引っ張り出したら、張り革が加水分解でベタベタで絶望的。F100登場当時は加水分解の予想がつかなかったという話を聞きましたけど。電源は単三アルカリ乾電池を4本使います。良い子には縦グリとかいらないと思うぞ。
いま考えても、これは謎なのですが、F5よりも明らかに小さくて軽いけど、スペックが低いわけではありません。だから凝縮した充実感を感じたのかもしれないですね。マッチョなF5に対してF100は少し細めで走るのが速そうな感じ。見た目の印象評です。
個人的に評価したいのはAFのエリアの表示方法です。F5では選択したフォーカスエリアが黒く、太くなり示したのに対して、F100では赤色LEDの点灯にて、選択フォーカスエリアを示すようになっていたことです。当時のAF一眼レフとしてもフツーの方式ですが、正直F5よりもF100ではエリアが暗い場所とか黒い被写体に重なっても選択位置を特定しやすいわけです。これね、時間のない撮影現場などでは、安心感が高まりましたね。
AFセレクターですね。背面にあります。今ふうにいうとAFのグリグリですね。F5より使いやすいかも。
F100の小型軽量さは魅力でしたね。ファインダーはどうせ交換しないわけですしね。購入していないし。F100はファインダースクリーンのみ交換はできます。
筆者はF5やF100登場時はまだ40代の半ばでしたから、今よりは当然体力も気力もあったと思うのですが、それでもカメラが小型軽量であることは魅力であると考えていて、もっとも使った時期は、たしか3-4台のF100を使いまわしておりました。
ブラケット、ISO設定とかフィルムの途中巻き戻しボタンとか。フィルム巻き戻しノブを立ち退かせ再開発したわけです。フツーに便利に使用しております。
いわゆる“縦グリ” を使用しちゃうとF5とあまり変わらない大きさと重さになりそうですが、それでも筆者の場合はわりと縦グリを装着していたんじゃないかなあ。やはりフォーカスエリアのLED表示が便利になったことでアサインメントでも、積極的に使用していたのだと思います。
F5の作り込みがあまりにもよく、気合いが入っていたのでF100のマグネシウム合金ではいささか物足りなかったのも事実ですが、F90系のプラスチッキー感は払拭され、高級感が増しましたし、これは多くの人に歓迎されたと思います。
マニュアル露出モードにして、最小絞りに設定し、ボディ側のコマンドダイヤルで絞りをF5.6に選びました。
以降、ミドルクラスの一眼レフはマグネシウム合金の使用が増えますね。感覚的には「なんちゃって金属」なんですが、プラよりはマシでありますね。F100は筆者としてはめずらしく、仕事と私事を交互に行き来できるカメラとなったのです。
シャッター音とか動作関連は、F5よりもちょっとだけ軽〜い印象になりましたかねえ。
でも騒ぐほど安っぽいというわけではありません。しいて音の印象を擬音で述べてみると「シャカシャカ」しているというか。もっともこのあたりは個人の好みですからあまり気にしないでください。
CPU内蔵のニッコールを装着した場合、絞り環が最小絞りからズレるとFEEというエラーが表示されます。
外観的のデザインとしてはファインダー交換できないこと、巻き戻しノブがなくなったことが大きいとは思いますが全体によくまとまっておりますね。ペンタプリズムあたりの処理も良かったと思います。
あと、前回F5のUIのことでぐずぐず言いましたCPU内蔵のニッコールレンズを装着した時の最小絞り値設定時のトラブルの話ですが、F100ではこのトラブルはなくなりました。レンズの絞り環を使うか使わないかをあらかじめ設定することで、きっちりとUIを分けたのです。
カスタムファンクションボタンは独立し、ボディ背面左の結構良い位置にあるんですが、それぞれの機能を忘れてしまうと怖くて触れません。
このこともF100への信頼が強まった理由になりました。実際にはCPU内蔵のニッコールレンズの場合は、絞りをボディ側のコマンドダイヤルで設定するのが、F100のデフォルトの使い方になったのだなあと思いました。これは時代的に当然といえば当然ですし、F5以上に、時代の変わり目も感じることになりました。
手があまり大きくない筆者としてはグリップのサイズ感もちょうどよい感じで、理想のAF一眼レフという印象が強かったですね。
F100は完成度が高かったので相当なヒット作になりました。筆者もフラッグシップ機を用意しなくても十分に仕事ができるぜ、という気分になりましたし。
F100は「F5ジュニア」というよりも「F5キラー」だったのかも。F5のネガな部分をまじめにツブしたことでも、信頼が増したのではないかと思うわけです。いま使用しても何ら問題を感じさせない完成度の高さも魅力であります。
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