top コラム推すぜ!ニコンFシステム第27回 1978年に満を持して登場! 絞り優先AE一眼レフ「ニコンFE」

推すぜ!ニコンFシステム

第27回 1978年に満を持して登場!
絞り優先AE一眼レフ「ニコンFE」

2023/03/16
赤城耕一

絞り優先AE化により、ニコンFMとは異なるインパクトがあった

 

マニュアルのメカニカル一眼レフが最初に登場し、しばらくしてから似たフォルムのAE機が登場するというロードマップは当時のカメラメーカーでは当たり前のことでした。ニコンFMのAE化されたモデルはいつ登場するのかとカメラ雑誌などでは予測記事が流れたりしたものです。

 


ニコンFE(左)とFMですね。正面から見るとどちらか判別するのが難しいくらいです。兄弟機といわれる所以でもあります。外観は共通部品もあるようですが、そんなにコストダウンに貢献したという印象もないですね。

 

満を持して1978年4月に絞り優先AE一眼レフ、ニコンFEが登場します。FMとフォルムがよく似ており、モータードライブMD-11、12をはじめとするアクセサリーも共用することができますからFMとFEは兄弟機とされました。外見での大きな違いはペンタプリズム部のデザインくらいですね。だからデザイン的な新鮮味は薄いのですが、あらかじめ想定されていたとはいえ、絞り優先AE化によりFMとは異なる衝撃というかインパクトがあったことを覚えています。オリンパスOM-1とOM-2の関係みたいです。

 


バッテリーチェックレバーですね。当時の多くのAE機には採用されていました。容量が十分な場合は中央のLEDが点灯します。でもバッテリーって突然落ちるんですよねえ。バッテリーはSR(LR)44を2個使います。

 

危険なのはFE、FMともに揃えなければならないような気分にさせられることですね。FEはバッテリーの使用がマストですから、シャッター動作にバッテリーが不要なバックアップのフルメカニカルカメラしてFMも依然として必要な存在だと思わせるわけです。これはニコンの巧妙な作戦です。ええ、私たちは知っていながら引っかかるわけです。
 

FE(左)はペンタプリズムの額が広くなりまして、銘板の面積がわずかに広いようです。FMはちょっとだけ厳つい感じもあります。だからどうしたんだよ。の世界なんですけど。

 

 

個人的にFEを評価したいのはファインダー内のメーター表示に指針式が採用されたことです。LED表示から逆戻りしたというか、この当時でも指針式のメーターは少々レトロ感があったくらいですが、マニュアル露出の時は、シャッタースピード設定指針にメーター指針を合致させれば適正露出になるという理屈です。

 

AEの精度的な問題はどうでしょうか。現在のような多分割測光は採用されていないので、ニコン伝統の中央部重点平均測光が採用されています。ファインダー中央の円を頼りに測光範囲を見極めれば、十分に機能するでしょう。受光素子はSPDですし、反応は速いので実用上の不満も少なくなります。モータードライブを使用した場合とか撮影時の明るさが目まぐるしく変わる場合でも対応はできるでしょう。

 


フィルム感度ダイヤルですね。ASA(ISO)感度は4時方向のボタンを押してダイヤルを回して設定します。露出補正はダイヤルも周りを引き上げて設定します。なんか逆なイメージなんですけれど。

 

AE設定での露光補正を行うより、潔くマニュアル露出に切り替えた方が撮影は早くなる

 

ただ、TTLメーターですから、被写体の色や反射率にも露出値は影響されますが、マニュアル露出に設定すると、シャッタースピード設定指針とメーター指針の離れた幅を視覚的に「面積」として捉えることもできますから瞬時に絞りを開くのか絞るのか、あるいはシャッタースピードを高速に設定するのか低速に設定すればいいのか分かりやすくなるわけです。
 

逆光時には中央部重点測光を生かして、主要被写体をファインダー内で大きく捉えて測光し、露出値をそのまま固定しておけば主要被写体は間違いなく適正露出となります。露光補正を行わなければならないような撮影条件では、AE設定での露光補正を行うより、潔くマニュアル露出に切り替えた方が撮影は早くなるのではないでしょうか。

 

露出補正は戻し忘れの心配などもありますし、その補正量は光線状態や被写体の反射率によって変化しますから、結局は撮影者の経験則による“勘” に頼ることになりますし、今のデジタルカメラと異なり、露出補正量が正しかったのかどうかは現像してみないとわからないわけですから、これは“賭け” ということになります。
 

こうなると何のためのAE(自動露出)なのかわからなくなることがあります。もっとも、アサインメントの撮影では当時AEで撮影することはまずなかったわけですからあれこれ申し上げても仕方ないのですが。

 


ニコンFMにはできない、ファインダースクリーンが交換できます。マット式などと交換可能です。オリンパスOM-1とかペンタックスMXみたいなやり方です。不器用な筆者はイラつきます。上部のスクリーンのロック用のツメはモルトプレーンの間にあり、やりづらいんですよ。

 

FM、FE共に小刻みのフィルム巻き上げができればベストなカメラになるのではないか

 

FEのスペックを探ってみると、ニコンEL2とだいたい同じであり、どうもFEの中身はEL2ではないのかという説もどこからか聞こえてきたことがあります。
 

しかし、EL2とスペックは似ていてもFMと同じ大きさに凝縮されたフォルムですから全体に締まりがあり、小型軽量化されて、これも好感が持てるものでした。バッテリーも異なりますし、カルトクイズに使えそうなEL系一眼レフ伝統のバッテリー室の位置もFEでは通常の一眼レフカメラ同様にカメラ底部に位置しています。
 

金属縦走りシャッターの金属音は小さくはないですが一生懸命仕事している感じがあり、好感が持てます。

 


今なら撮影モードを「A」とするところですが、「AUTO」と略することなく書かれていて、律儀です。M90はバッテリーがダウンしてもメカニカルシャッターで1/90秒が切れますぜということです。シャッターボタンの外周リングのロック機構は無くなりました。

 

ご存知のように恐ろしくフィルムが高価な時代になりました。モータードライブなんか使わずに、FM、FEは単体ボディの手巻きで撮影いたしましょう。
 

個人的には、FM、FE共に小刻みのフィルム巻き上げができればベストなカメラになるのではないかと思いました。この当時、縦走り金属シャッターを採用したものに小刻み巻き上げができるカメラはほとんどなかったように思います。素人には分かりませんが機構的に何か面倒なことがあったのでしょうか。それとも単なるコストダウンのためなのでしょうか。

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