1977年にAI化されたカメラボディはニコマートFT3、ニコンEL2があり、フラッグシップ機であるニコンF2シリーズにも用意されます。
これがニコンF2フォトミックAです。これはフォトミックAファインダー(DP-11)を装着したF2ということでありまして、「ニコンのガチャガチャ」を不要としました。
カメラボディ本体に手を加えることなく、カメラを新型にしてゆくという手法は、ニコンFのフォトミックファインダーシリーズのそれと同じやり方なのですが、今回はメーターの小改良とは異なりますから、メカ連動そのものを変えなければなりません。これはかなり大変な印象です。
しかし、ニコンはフォトミックファインダー(DP-1)をうまく改良してこれに対応しました。さすがですね。新設計した方が早そうな印象ですが、あらかじめ考えられていたのでしょう。設けられたAI連動爪はAI方式のレンズの絞り環にダイレクトに繋がる位置に設けられました。
ニコマートFT3やニコンEL2ではマイナーチェンジの部類には入るとはいえ、AI方式を使うにはこれらに買い換えねばなりませんが、ニコンF2の場合はファインダーを買い替えればF2フォトミックからフォトミックAとなり、AI方式を使えるわけで、これはなかなか良い考え方だとは思いますし、そう費用はかかりませんね。ただね、ニコンのマニアの中にはうるさい人がいて、ボディのシリアル番号帯と、ファインダーの種類が合致していないとか酒場で騒ぐ人がいらっしゃいます。ええ、面倒ですね、無視するかブロックしましょう。
DP-11を購入すると、非AIレンズを1本無料でAI改造してくれるというサービスもありましたねえ。良い試みでしたねえ。
DP-11になっても受光素子はCdsのままで、このあたりに新鮮味はないですねえ。特性的に低輝度下では、反応が鈍くなったり、明暗差が大きい撮影状況では、指針が落ち着くまで待つ必要があります。これはCds受光素子を使用したカメラの共通点ですから仕方ありません。ファインダーだけの改良ですから、電源はF2ボディ側のものを使用します。SR44もしくはLR44を2個使用します。
指針表示部はDP-1と同じアナログ指針式となっていますが、デザインはフォトミックファインダーの後期型からと同一で、メーターのスイッチがOFFの時も収納指針が見えるように改良されています。このことにどういう意味があるのかは知りません。どなたかご存知な方解説してください。
フォトミックAファインダー上部のメーター指針窓です。顕微鏡撮影とかに使うんですかねえ。依然として存在しとりますね。電源を入れずとも、指針が見えるデザインになっていますが、どういう意味があるんですかね。
あと、確認していないのですが、DP-11の「Nikon」銘板はプラスチックになっているんじゃないかと想像いたします。上質な表面の仕上げですし、実際に削ったわけじゃないからわからないのですがそんな気がします。金属が好きな人、暴れないようにお願いします。
また、絞り値のファインダー内表示は光学式の読み取り方式となりました。AIニッコールやAI改造ニッコールにある、読み取り専用の絞り表記を映します。条件によっては、レンズのカニのハサミが影になり絞り数字が暗く表示される可能性もあるのですが、気になる人は取り外した方がいいかもしれません。でもね、ガチャガチャ必要なニコンボディをお持ちの方は外せないし、あと爪を取り外してしまうとデザイン的に面白くないですね。使わないものにせよ、元々あるものをなくすのは良くないんですよね(笑)。
フォトミックAファインダーに新たに設けられたAI方式の連動爪ですね。赤点がついているところです。これ、指で押し込むと引っ込んだままになり、非AIのニッコールオートレンズを装着する時に使います。再び爪を出したい場合は上のレバーをスライドさせると自動的に出てきます。
でもね、毎度言いますけど、カメラボディに装着レンズの開放F値を知らせるガチャガチャってのは、カメラ雑誌のレビューでは時代遅れのものだとか面倒だとか言われて不評なんですが、多くのニコンユーザーはそんなに気にしてないわけです。著しく不便だと考えている人も少ないんじゃないかなあと想像します。おそらくですが、最近の若い人たちなら逆にこうした非AIのガチャガチャは作法というか儀式として面白がるんじゃないですかねえ。
ニコマート系カメラの場合は、ボディ側の絞り連動ピンを目一杯右に回しておくとか、レンズの絞りをF5.6にセットするなど手間がかかりますが、F2フォトミックではそうした手間もかからず、絞り値がどこにあろうが関係ありませんし、絞り環を一往復させてボディのメーター連動ピンにカニのハサミが入っていればいいわけですからねえ。
F2フォトミックAでは、レンズ装着時に絞り環を往復させる必要がなくなったというだけです。筆者もF2フォトミックA使いですが、いまだにレンズ交換時に絞り環を往復させてしまいますね。F2フォトミックとフォトミックAはデザインもよく似ていますし、レンズ装着時の儀式はカラダが覚えているものですから、無理もないのです。
ニッコールHオート50mmF2の非AIのタイプを装着してみました。爪は引っ込めてあるので絞り環に干渉はしません。このあたりの新旧相互互換性というかフレキシビリティな対応はさすがです。
この当時、他のメーカーの一眼レフの多くは、レンズの開放F値は自動的に設定されるようになっていましたから、ニコンとしてはそれが手動であることにコンプレックスがあったのかもしれませんねえ。
例のごとく、カメラ雑誌の評価ではAI化したニコンF2フォトミックAに対して、「目新しいことはなくニコンもやっと普通のカメラになった」とか言われましてね、可哀想でしたけどね。あ、うちのニコンF2フォトミックAにはバッテリーが入っていることがあまりないので、AI化しても恩恵は少ないのですよ。
両優先AEを見すえねばならない時期でもあり、将来的な発展のためにはAI化への進化は必然というものですが、往時でも実用性という意味だけをみれば、さほどありがたみはなかったことは本当のところです。
でもAI改造対応なども含めて、ニコンは本当によくやったなあ、素晴らしいなあと思います。基本的には不変のFマウントを守り抜くわけです。気概を感じますね。これに敬意を表して、筆者もこの時から手持ちのニッコールオートやニューニッコールのAI改造を進め、フォトミックAの導入を決めたわけです。
余談としてアクセサリーをひとつ紹介しましょう。ニコンF2フォトミック、フォトミックA 用のメーター指針窓を照らす、イルミネーターDL-1です。低照度時にメーター指針を見るために使用します。そんなにまでして、TTLメーター使いたいんですかねー。電源はHD水銀電池です。ニコンフォトミックFTNにも使えるようです。ええ、使いもしないのに筆者は所有しとります。病気です。
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。