top コラム推すぜ!ニコンFシステム第51回 可能なかぎり低予算にて、 栄光のニッコールレンズを使う写真表現者になりたいという人にオススメ!「ニコンFE10」

推すぜ!ニコンFシステム

第51回 可能なかぎり低予算にて、 栄光のニッコールレンズを使う写真表現者になりたいという人にオススメ!「ニコンFE10」

2023/08/31
赤城耕一

ニコンFE2の子分ですけど、全然違います

 

今回は1997年に登場したニコンFE10の話をします。FM10と同じように、ボディから長野産のリンゴの香りがいたします。おそらく本機もまずは輸出専用機だったんじゃないですかね。2年前に登場したニコンFM10は、現役当時の話ですがインドあたりでよく売れていると聞きました。「Nikon」のブランド力はとても強力なので、世界のあらゆるところで通用します。

 

FE10はさすがの筆者でも、持ち出す機会が多くはなく、一連のカメラローテーションから外れておりました。読者の中でも所有されている方とかいるのかなあ。よほどのもの好きしかかいませんよね。ええ、筆者はもの好きですから、お越しいただいております。

 


 ニコンFE2の子分ですけど、全然違います。ただ、この時代のニコンMF一眼レフで良いところは、とにかくAI方式のレンズなら何でもかんでも装着できること。AF一眼レフと異なり、機能的な互換性や制限を気にする必要はありません。SタイプがどうとかDタイプがどうとかあれこれ考えなくて良いですからねえ。シンプルなアイテムは大好きです。ペンタプリズム下のデザイン処理はFM10よりも良いんじゃないかなあ。

 

久しぶりに取り出したFE10は裏蓋や貼り革まわりがベッタベタで指に貼りつきます。気分悪いですねえ。経年による加水分解ですね。これ、使用頻度が高いと加水分解しないのかな、どうなんでしょうか。
 

手元にあるフィルムクリーナーをセーム革につけてボディ周りを拭いたところ、セーム革はびっくりするほど真っ黒になり、手も汚れました。まるで真っ黒いインクをこぼしたようにも見えます。
 

こうみえても意外に神経質なところがある筆者としては気持ちが少々萎えましたが、拭いたらベタベタはなくなり、気軽に使うことができるようになりました。でもね、つまらないことに時間をとられましたよ。ライカを磨くのとは違うしね。
 

そういえば以前、とあるカメラメーカーのエンジニアに、なぜ加水分解するような素材をボディ周りに使うのかを訊いたことがあるのですが、経年による変化が想像できなかったと言われました。加速劣化試験とかしてないんですかとぐちぐち言ったところ、試験していてもわからないこともあるのですよと開き直られたりしました。ま、ボディを拭けばいいことなんで、この件はそれでおしまいですね。

 


生意気にも最高シャッター速度は1/2000秒です。ところがシンクロ速度は1/60秒です。つまらないですね。多重露光レバーがあります。クリエイティブなココロをくすぐりますね。もちろん嘘です。

 

シャッター音はカメラの見た目よりもいいんじゃないかと思います

 

機能的にはフルマニュアルのFM10に絞り優先AEを載せたわけで、フォーカスはMFでありますね。外装は思い切りのよいプラスチックで、カラーはFM10とほぼ同じ色のシャンパンカラーです。ペンタプリズムの下部のデザインは筆者の好みですね。
 

それでも内部はアルミダイキャストフレームを採用しているので、強度を確保しています。高級感はないですけど、それでも小型軽量で嬉しいですね、どこにでも連れて歩くことができます。
 

電源ONは、フィルムを巻き上げたのちにシャッターボタンの半押しにするとONになります。兄貴分のFE2とはちょっと違います。うちにある個体だけなのかもしれませんが、シャッターのフィーリングが非常にデリケートで、慣れるまでは、無駄にシャッターを切ってしまうことがありました。フィルムはいま高いんですぜお願いしますよ。今からじゃ調整はできないですな。
 

シャッター音はカメラの見た目よりもいいんじゃないかと思います。モードラなどの拡張性はないですが、これはまあなくても大丈夫でしょう。
 

機構的にはプレビューレバーも多重露光レバーもあるから実用面では十分ですね。AEロックも用意されています。いずれのレバーのフィーリングもこのクラスのカメラとしては上質なほうです。セルフタイマーは電子式でピカピカ光るやつです。 

 

プレビューレバーです。絞り込んで被写界深度を確認しますが、このスクリーンできちんと確認できたらたいしたものです。でも、プレビューの有無でカメラの階級が違うのだと考える人もいます。使いもしないくせに。

 

ファインダー内表示も赤色のLEDの採用です。マニュアル測光では測光値が点滅、設定シャッタースピードが点灯するので、両者を一致させると適正露出になります。このクラスのカメラのマニュアル測光はいわゆる「適正露出読み取り方式」によるものが多いのですが、本機はかなり真面目だと思いますね。LEDはFE2の視認性よりもいいという人がいますけどね、指針式のほうが高級なイメージがします。これは間違いありません。

 


いちおう、AEロックボタンがあったりします。筆者はこれまで一度も使用したことありません。かなり思い切り押したままにしないと機能しません。使いづらいです。マニュアル露出にしちゃいましょう。

 

FE10のような廉価なカメラで自分の気に入った写真が撮れるとすごく嬉しい

 

測光はニコンらしく中央部重点です。フォーカーシングスクリーンはやや暗めで、F値の暗い標準ズームだとフォーカシングが厳しい感じがしますが、本機には単焦点レンズを装着するのが粋な使い方であります。
 

ま、フォーカシングは練習あるのみであります。
 

露出精度はふつうに良いですが、いちおうISO感度ダイヤル兼用の露光補正ダイヤルも装備しております。1/3段刻みなこともえらいですが、戻し忘れの危険が発生しますから、マニュアル露出に切り替えたほうがいいんじゃないかしら。

 


ISO感度・露出補正ダイヤルですね。これね、すごいのは指標側に補正の指標を入れてあること。つまりISO感度をズラしているだけなんだけどね。それらしく見えるじゃないですか。これも露光補正とかするより、マニュアル露出の方が早いと思うね。

 

不人気カメラですから、中古市場では評価されておらず、タマ数は多くはないのに、ものすごく廉価にて購入可能です。
 

ただ、2023年の8月現在で、FM10よりも生き残った個体が少ないように感じてしまうのは、製造台数が少なかったのか、それともこの時代のエントリーAE機の耐久力の乏しさからくるのでしょうか。この理由はわかりませんが、FE10の販売期間は短かったようです。
 

FE2の弟分というふれこみもあるのですが、そこはまったく関係がないわけで、FE10はとりあえず可能なかぎり低予算にて、栄光のニッコールレンズを使う写真表現者になりたいという人には向いているかもしれません。
 

いつも申し上げているのですが、FE10のような廉価なカメラで自分の気に入った写真が撮れるとすごく嬉しくないですか。勢いのある若者が本機を使いカラダをブツけるようにして撮ってきた写真を見たりする機会がありますが、おじいさんはもう降参するしかありません。

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