top コラム推すぜ!ニコンFシステム第38回 これが「チタン沼」の入り口か!? 「ニコンNew FM2/T」

推すぜ!ニコンFシステム

第38回 これが「チタン沼」の入り口か!?
「ニコンNew FM2/T」

2023/06/02
赤城耕一

「チタンは硬いというけど、うちじゃ豆腐を切るように加工できる」

 

前回に引き続き、今回も中身の薄い話をしますね。ニコンNew FM2/Tについてであります。
 

早い話が、本機はベースカメラとなっているNew FM2の上下カバーをチタン製にしたというだけなわけです。けれど、今のデジタルカメラではどうなんですかね、こういうミドルクラスのカメラにチタンをまとわせるということが現実的に可能なのかどうか。最近では富士フイルムX-Pro3がそうでしたっけ。

 


Aiマイクロニッコール55mm F2.8Sを装着してみます。意味はありません。机の角にあっただけです。なかなかスリムでいいじゃないですかね。

 

New FM2の時代はチタンの取り扱いが容易くなって、いろいろな製品に使いたくなったのかもしれないですね。高級コンパクトカメラの外装にもチタンが使われてましたが、あれはファッションのためですね。

 


チタンカラーって、シャンパンカラーに似ているんじゃないかと思っていたのですが、New FM2/Tでは当てはまらないように思えます。なんだか鈍臭い感じしません?

 

チタンカメラの種類がまだそう多くはなかった頃、金属素材の加工業者の人の話を聞きに行ったことがありますが、出てきた職人肌の人に「チタンは硬いというけど、うちじゃ豆腐を切るように加工できる」と自慢されたり。豆腐とチタンじゃ硬度はものすごく違うわけですが、加工がやりやすくなればコストは当然下げることができるわけです。

 

New FM2にチタンが採用されたのは、フルメカニカルでシンプルなので、ニコンが考える以上にプロに受け入れられたのかもしれないですね、というのは建前で、何度も申し上げているようにシンクロ速度が1/250秒という理由が主で、プロも使用したのであります。

 

プロが使うならば、質実剛健なカメラとしてNew FM2にチタンをまとわせれば地球上のあらゆる過酷な条件も乗り越えて撮影ができるカメラになるということで売り出せると、思ったのかも。これは企画的にはわからないでもないですが、ハードな使用に耐えるというイメージよりもファッション重視ですね。

 

本音を言うなら、New FM2はシンプルでいいんだけど、その姿を眺めたり、撫で回したり、いじくりまわすにはもう一声なんか要素が必要なんじゃないかということでチタンモデルが採用されたのかもしれません。カラーリングはいわゆるチタンカラーしかないですね。ただ、表面の仕上げとカラーに色気がないのがいただけません。

 


今回カメラを撮影していて、シルバーのNew FM2の巻き上げレバーがブラックであったということに気づいたり。これはブラックと同じ色にして、コストダウンを図ろうということだろうね。New FM2/Tはボディカラーに合わせてあるから真面目ですね。

 

ファッションのためのチタンカバー、カラーリング

 

なぜF3/Tのチタンカラーモデルに合わせなかったのか、これは謎ですな。正直に言えばかなり地味です。ボディカラーはウ○コ色な感じもしますのであまり好ましくないですな。
 

チタンをまとったカメラは目立ってはいけないと企画上での方針変更があったのかな。ならばブラックにすればとも思うけど、それも違うのか。塗装が大変ですし。
 

遠くから見て、お、あの人はチタン外装のNew FM2を使用しているのだと思わせたかったとか。それじゃ、目立たないようにすることとは逆の話になってしまいますね。
 

どうでもいいようなことを書いていますけど、いや実際にどうでもいいんだけど、New FM2/TはNew FM2と機能は同じですからね。
 

F3/Tみたいにカウンターの色が違うとかいうこともないです。すぐに飽きますね。というか、チタンであることを忘れてしまうわけです。もしかするとそれがいいのかもしれませんな。だから見せびらかし効果に積極的にならない。真面目な写真表現者のためのチタンカメラというわけです。と、書いても嘘っぽいなあどうもね。

 


フィルム巻き戻しクランク。New FM2/Tの方は、ボディカラーに合わせてシャフトのメッキを変えているのでしょうか。気のせいかもしれんけど。

 

それでもFMやFE系シリーズでチタン外装を採用したものはNew FM2‏/Tしかないわけですから、もう少し評価されてもいいと思います。中古価格ではNew FM2のブラックより少し高いくらいじゃないですか、どうだろう。人気なさそうですが。これもカラーリングの問題じゃないのかなあ。

 

New FM2/Tを手にした印象なんですが、筆者の思い過ごしかもしれませんが、少し角張っているような気もします。手のひらの抵抗感が大きいというか。やはり外装のエッジの加工が真鍮とは違うのかもしれないですね。
 

シリアルナンバーの前には「T」刻印があり、フツーのNew FM2じゃなくて特別なチタンモデルであることを世間に知らしめているなあ。差別化に繋がるよね。んなことはないか。

 

同業者の中でもチタンだからよかったぜ、みたいな話も聞こえてはきません。ブツけても凹みづらいとかあるんですかねえ。試してませんけどね。実際にNew FM2/Tをハードに使って、チタンでよかったぜというユーザーの体験談を聞いてみたいところですね。世の中は広いからそういう写真家もいらっしゃるかもしれません。 
 

結論としてはファッションのためのチタンカバー、カラーリングということでいいと思います。そういう意味では高級コンパクトカメラのチタン外装の意味と大して変わりません。
 

ノーマルのNew FM2を所持している方には必要のないカメラです。でも、気持ちがチタンによって上がることで、良い写真が撮れるかもしれないと妄想が持てる人にはいいのかもしれませんね。なんかね「チタン沼」の入り口っぽい感じもするんだよね。

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