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推すぜ!ニコンFシステム

第15回 ”ニコンのガチャガチャ”ができる最後のフラッグシップ機「ニコンF2フォトミックSB」

2022/12/22
赤城耕一

かつてのニコンフラッグシップ機が泣いている

 

こうやってニコンF2について今回もつらつら書きますが、自分でもF2は手元に何台あるのか掌握しづらくなっている昨今であります。千手観音じゃないんだから、いっぺんには使えないですよね。それは重々わかっているつもりでありますよ。
でもね、台数が増えたいいわけを少しだけしておきますと、うちにあるF2フォトミックの購入価格で最も低い記録を調べてみますと1年ほど前に7,500円というのがありました。こうなるとあまりにも不憫で不憫で、筆者が救わないで誰が救うのだと保護に走るわけです。
 

ジャンクじゃないのか?と思われるかもしれませんが、外観はスレがあるだけで、問題なく動作していました。それほど人気がないわけです。

F2はかつてのニコンフラッグシップですよ。中古の富士フイルムのクラッセとか10万円とか出して買うならこちらの方が良くないですか?そういうものじゃないのか。比べてはいけないのですが、どうにも納得できません。
 

ニコンF2フォトミックSB+ニッコールS オート35mm F2.8(Ai改)

フォトミックファインダーDP-1と大して変わらない大きさになりました。なんでもっと早く改良しなかったんでしょうか。この一年後にはニコンフォトミックSBファインダーもAi化されフォトミックASファインダーとなります。これに伴いガチャガチャが不要になります。ニコン好きは別にガチャガチャは嫌いじゃないですけどね。

 

発売期間1年ほどの短命カメラ。

 

でもね、F2の中でも人気があるんだかないんだかわかりませんが、今回取り上げるニコンF2フォトミックSBはちょびっと中古相場は高いようですね。なぜだと思います?
単純です。生産台数が2万台そこそこと言われているからです。発売は1976年で一年ほどの発売期間しかない短命のカメラでした。フォトミックSBは「ニコンのガチャガチャ」をすることができる最後のフラッグシップ機となったのです。
1977年に行われたAI(Automatic Maximum Aperture Indexing・開放F値自動補正)方式への移行はまたのちにお話をしますが、ニコンF2フォトミックはファインダーの改良のみだけで乗り越えて、息を繋いだわけです。 
 

フォトミックSBは前機種フォトミックSの改良型になります。フォトミックSBファインダーにはDP-3の記号があります。フォトミックSは露出表示こそLEDでしたが受光素子は応答速度の遅いCdsを採用していたことはすでに述べました。
そこでSBは受光素子を応答速度の速いSPDに、しかも3個も搭載しました。そして10秒までの低輝度での測光も可能にしたのです。ファインダーのデザインもF2ベースモデルのフォトミックに酷似しています。小さくてかっちょいいですね。

 

ファインダー上部です。採光するための乳白の窓です。右のレバーを手前に押すとLEDが発光して、ファインダー内の表示シャッター速度とか絞り値を照らしますが、だからどうしたという感じです。外部から見れば設定わかるじゃないですか。

 

いじくるところが多いカメラの方が尊い

 

はい。ここで質問が来そうですね。AI方式を採用したフォトミックASの方が、ガチャガチャの必要がないから便利に使えるのではないかと?はい。まったくもってそのとおりです。うちにはフォトミックASもあるので、またこの連載で話をしますが、フォトミックSBはASがあれば本来は不要なはずです。
が、私のような達人級のニコンF2使いになると、たまにガチャガチャしないと禁断症状が出て指が震えるわけです。違います。アルコール依存症ではありません。怪しいですけど。フィルムカメラを使うのはこのF2に限らずですが、便利とか不便とかで判断できる問題ではありませんから、いじくるところが多いカメラの方が尊い場合があります。
 

うちにあるMFのニッコールレンズのほとんどにはカニの鋏が残されたままなので、対応ボディならばガチャガチャすることができます。こういう駄文を書いているときも、文章に詰まることがあるのですが、ガチャガチャを手慰みに行うと、閃きがあったりします。ええ、嘘です。いじくりまわしたいだけです。単に使われていないカニの鋏にもたまにはボディ側の連動ピンを入れてみたくなるわけです。そう変態ですから仕方ありません。まずは自覚することが重要です。
 

レンズを装着してガチャガチャをしますと、レンズの開放F値が現われます。一応確認しておいた方がいいでしょうね。見づらいけど。

 

ダイエットに成功し美しさをその手に

 

それにしても、このF2フォトミックSB、ファインダーの姿がキレイなんですよね。フォトミックSをダイエットさせたわけです。ライザップに行ったのでしょうか。
随所にピンだのレバーだのが存在し、一部はシャッター速度優先AEを可能にする「EEコントロールユニットDS-1/DS-2」を装着するための連動用ですが、フォトミックSよりもSBの方がファインダー全体が小さいためか、その存在感が強いように思います。
 

信じ難いのはアイピースシャッターまで装備していることです。これはAE設定時にセルフタイマー撮影する場合に使うことが多く、アイピースからの逆入光によるメーターへの影響を避けるために閉じるわけです。はたしてEEサーボのAEでセルフタイマー撮影する人などいるのでしょうか。ほとんどの人は使わないと思いますが、用意してくるところが偉いですね。あるいは無人撮影用なのかもしれませんが。

 

上部のレバーを操作してアイピースシャッターを閉じてみました。いや、この撮影のために初めて閉じたのですが、固着寸前でした。おそらく購入してから触れたことがなかったからでしょう。触ってよかったです(笑)


 

バッテリーチェックレバーONで広がる夜の愉しみ

 

興味深いのはファインダー内のメーターのLED表示はのちに登場するニコンFM(77年)と同様に+○ーの表示であることです。ベースモデルのF2フォトミックの指針表示と比較すると、露出のズレ量はわかりづらいですね。  

 

F2フォトミックSBでは外部のメーター表示窓からLEDによる露出合わせを諦めています。フォトミックS同様に周りが明るいとLED表示の視認性が悪いと判断されたのでしょう。
ただ、フォトミックSBにはオマケみたいな機能があります。バッテリーチェックレバーをオンにすると、LEDがほのかに灯り、同時にファインダー内の絞りとシャッター速度を照らすイルミネーターとなります。もっとも、実際に撮影する時は、表示なんか見ることはありませんね。
 

一杯やりながら赤いLEDに照らされたシャッター速度と絞り数値を鑑賞するという行為が尊いんですよね。

 

 

カメラ全体の外観では、機種名がわからないんですよ。だから、確認にはファインダー裏のシリアルの書いてある銘板を確認します。「フォトミックSBファインダー DP-3」というのが正式名称です。

 

 

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