top コラム推すぜ!ニコンFシステム第8回 ニコンらしさを感じない、これぞ、Fマウント一眼レフの黒歴史「二コレックスF」

推すぜ!ニコンFシステム

第8回 ニコンらしさを感じない、これぞ、Fマウント一眼レフの黒歴史「二コレックスF」

2022/11/04
赤城耕一

外観、使用感からも、粗さを感じる稀有なカメラ、ニコレックスF

 

いきなりですが、ニコンF話の次なのですが、サブ機的な扱いのニコレックスFの話をしようかと思うのです。なぜかとか、どうしてとか聞かないでください。うちの仕事場で防湿庫にも入れてもらえず、この一年ほど床の隅で転がっていた不憫なニコレックスFくんのことを思い出したこともあります。
 

どうしてニコレックスFがそんなに可哀想な、不当な扱いをされてしまうのかといえば、なんだか本機そのものが全体から雑駁な印象を受けるからかもしれません。実際に外観からも、使用感からも粗さを感じさせる稀有なカメラです。防湿庫の中に入れると、他の愛機にそういう粗雑な精神が感染るのもよくないじゃないですか。

 

二コレックスF+NIKKOR-H Auto 50mm F2
全体に野暮ったく、ニコンFと一緒に連れて歩きたくないというイメージはあります。ブスだしね。作り込みはさほど悪くはないのですが、メッキにお金をかけていないのか経年変化で変質しとります。けれどFマウントなんだから同じフィルムとレンズを使えば撮れる写真は同じ。あまり売れなかったらしく、当時のニコンの人たちは、本機のことを知らん顔します。

 

若い女の子を惹き付けるどういう魅力があるのか!?

 

まずはニコレックスFの入手経緯をお話しします。
世の中は広いなあと思ったのは、3年くらい前の今頃の季節でしたか、都内の某所でニコレックスFを見たのです。
しかも、それは大学生くらいの若い女性の手に握られていました。知人ではありません。そこそこデカいシャッター音を響かせながら道端に落ちていた空き缶(に見えた)を撮影しているように見えましたが、こちらも移動を急いでいたので、じっくり観察はしていたわけではありません。
 

しかし、若い女性には似つかわしくないニコレックスFに筆者はかなり強い興味を持ちました。こうなると俄然自分でも使用したくなるものですから、中古カメラ店でもさりげなく観察はしておったわけです。
ところが、意外にブツが少ないのです。店員さんにニコレックスFの中古動向とかを訊くと、おまえそんなものが欲しいのかよという顔をして「最近入ってきませんねえ」と、とぼけた声で、「ニコマートの方が実用的ですしね」と冷たい答えが返ってきました。
ええ、そんなことはわかっていますが、こちらもねジジイなんでね。実用はともかく若い女の子が使っていたニコレックスFのどこに、どういう魅力があるのか探りたいわけです、マジで。

 

やたらとトルクが大きなフィルム巻き上げレバー。細身だから指が痛いわけですね。シャッタースピードダイヤルの仕上げも今ひとつですねえ。なんでこんなことになってしまったんでしょうか。一応1/125秒でストロボ同調しますが、だからどうしたみたいな感じですか。

 

絶望的に廉価。しかもカッコ悪くて、不当に重い

 

で、それから程なくして見つけてしまいましたよニコレックスF。なんだか絶望的に廉価です。いや絶望はしません、懐の痛み具合がさほどでもないという意味では。でもね、もうね、これからの人生を投げ出したくなるほどカッコ悪いですね。ブスです。それでね、不当に重たいのですが、これはまあ、仕方ないのかな。
 

ニコレックスFはどうやらOEMらしく、古き時代を知る、ニコン関係者に聞くといい顔をしません。ニコンFマウント一眼レフの黒歴史なんでしょうか。
入手したニコレックスFのファインダーを覗いてみます。明るいとはいえません。フレネルの同心円も盛大に確認できます。中央のスプリットイメージがやたらデカい。

 

富士山マークでしたっけか。NIKKOREX名はあれど、裏側に「日本光学」と銘打ってなければ本機の存在感がかなり厳しいものになりそうです。実際はマミヤ製なんだからどうしようもないけど。

 

マミヤのOEM機

 

巻き上げのトルクはお世辞にもスムーズとは言い難く、巻き上げレバーの軸が先にいくに従って細くなることもあり、連続して巻き上げると指が痛くなりますね。本当にギリギリーと巻き上げ音がします。この個体の油が切れているのかもしれませんけど。それに小刻み巻き上げができません。
間違いなくニコンFマウント互換の一眼レフですが、いわゆるニコンらしさを感じないのは、本機はOEM機だったからですね。製造はマミヤだったと言われています。
 

裏蓋は蝶番式ですからニコンFよりは便利ですな。シャッター幕が汚れているなーと思ったら、よく見るとシャッター幕の襷のような位置に「Copal Square」と堂々と書いてあります。どこか既視感があるなあと思って思い出しました。コニカFSがそうだったかなあ。シャッター音がデカいです。X接点は1/125秒以下ですね。

 

フィルムインジケーターは今ふうというか。銘柄じゃなくて感度で覚えておけみたいなイメージでしょうかねえ。デザインはカッコ悪いですね。メモホルダーの方が便利だと思いますけどね。その頃はそういうアイディアはなかったのかしら。

 

魅力が「なし」。被写体に対峙する時の精神性が異なるから??

 

先にどこがニコレックスFの魅力なのかと書いたのですが、「ない」んですよね。いや、同じフィルムを装填すれば、ニコンFと同じ写真が撮れる理屈だが、被写体に向かう時の精神性が異なることかもしれません。
このことを確かめるべく、ぜひ冒頭に書いたニコレックスFをお持ちの若きお嬢さま、もしこれを読んでいたら編集部までご一報いただきたく。一緒に呑みに、じゃないインタビューさせてください。どうぞよろしくお願いします。

 

コパルスクエアをそこまで強調するかって感じの印字がシャッター幕のタスキにあります。コパルスクエア搭載は開発から早い段階での搭載だったはずです。ユニットだから、組み立てるというより、購入したものをはめ込むというイメージでしょうか。

 

 

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