top コラム推すぜ!ニコンFシステム第11回 ペンタプリズムの三角屋根のまま、TTLメーターを内蔵できなかった摩訶不思議さ「ニコンF2フォトミック」

推すぜ!ニコンFシステム

第11回 ペンタプリズムの三角屋根のまま、TTLメーターを内蔵できなかった摩訶不思議さ「ニコンF2フォトミック」

2022/11/26
赤城耕一

早熟な写真少年だった私。

 

自分がトシ食ったなあと強く認識するのはニコンF2フォトミックが新品で売られていたことと、ニコンFの製造中止のニュースが出たことをリアルに知っていることなのです。
 

早熟な写真少年であった私はすでに1970年代の前半には『カメラ毎日』が愛読書でしたから、雑誌後半の中古カメラ店の広告から前半のグラビアまでを丹念に見ていた(カメラ雑誌を見る順番としてはこれが正しいと言われていた)わけで、ニコンF2の広告の訴求力の強さはなかなかのものでした。

 

いずれも何も偉くはありません。

ニコンFではフォトミックファインダー装着のものは初期の段階では少し特別な扱いになっていましたが、最終機のフォトミックFTNにて、世間に認知されたようなところがあります。
ニコンF2ではTTLメーターを内蔵したフォトミックファインダーを装着したものがベーシックモデルであり、アイレベルファインダーのF2は特別な扱いのようにもみえました。

 

F2フォトミックに合うレンズは何かと探していたら、出てきましたよ、ニッコールオート35mmF1.4。もうね、ガラスがアンバーに変色してファインダー覗くと鼻血出そうです。コダックの81EFフィルターを思い出します。このレンズ装着すると、死ぬほど重いですね。名玉なんでしょう。

 

メーター内蔵カメラが正義だった時代。

 

この当時、世の中はカラー時代に突入したのだから、より正確に露光を考えることが重要、だからTTLメーター内蔵は一眼レフカメラにとって当たり前という考え方かもしれません。
でもどうなのでしょうねえ、当時でもアマチュアが使うカラーネガフィルムはラチチュード広いしね、プロはTTLメーターなど参考程度にしか見ていなかったんじゃないかなあ。でも往時の海外では、ポジフィルムの方が多く使われていたという話もありますから正確な露出を簡易的に得ることが重要だったのかも。これは印刷原稿にするというより、鑑賞の形態が違うからという話を読んだことあります。スライド上映会みたいなことを頻繁にするんでしょうかねえ。
 

カメラは重要な輸出製品だったから、海外からのTTLメーター内蔵カメラの要求が強かったのかも知れません。少なくとも私が仕事を始めた1980年代当初でも、TTLメーターを使用していたプロカメラマンは少なかったと思いますよ。
これは被写体の反射率に露出値が左右されてしまうので、このまますべてを信用するとは考えていないからではないでしょうか。
 

まあでも露出のろの字も知らなくてもファインダー内に表示されるメーター指針が切り欠きの中央にくるようにシャッタースピードと絞りをセットすれば良いということを最低限知れば、写真は普通に写りますね。
F2フォトミックは言うまでもなくニコンのフラッグシップだったけど、決してプロのものだけではなくて、アマチュアの皆様にたくさんお買い求めいただかないと商売にならないわけです。
 

屁理屈を最初に言いましたけど、要は売れる、売れないの話ですね。時代的にTTLメーターを内蔵する状態のモデル、すなわちF2フォトミックを基本モデルとすることが重要だったのでしょうね。機能的にもその時代で最も信頼できるカメラにならねばなりません。これはニコンに限ったことではないわけですが。
 

ニコマートFTN同様に巻き上げレバーにTTLメータースイッチの赤点があります。F2フォトミックがベーシックモデルですよという報告みたいなものですね。アイレベルファインダーを使うと意味はないですが、予備角なんでそのことを知らしめるという趣旨のためにあるのでは。

 

最大のライバル、キヤノンF-1に負けた!

 

でもね、筆者はもうひとつ疑問に思ったわけです。一眼レフの基本フォルムである、ペンタプリズムの三角屋根のデザインのまま、TTLメーターを内蔵させることはできなかったのかと。ニコマートFTNなどはこれを可能にしていたわけですから、F2においても同様な方式は可能になると考えてもおかしくありません。
 

ニコンFの場合はTTLメーターを内蔵させるために、後から無理やりフォトミックファインダーを用意したようなところがあるのに、新開発、新設計のF2で同じことをする必要はないのではとも思います。
なんせ、ニコンF2にはボディ側にバッテリー室がありますからね、フォトミックファインダーを載せることがデフォルト仕様の設計だったわけです。
 

同時代に登場する、ニコンF2フォトミック最大のライバルであるキヤノンF-1は一眼レフの基本フィルムを踏襲しつつTTLメーター内蔵に成功しました。しかもニコンFやF2と同様にファインダー交換式を採用しており、スポーツファインダーに交換してもTTLメーターを使用することができます。これはね、正直、少し負けた感ありますね。
 

おいおいF2編の最初からディスるんじゃねえよという声が届いてしまうかも知れませんが、このあたりの往時のフラッグシップ一眼レフにおいてのTTLメーターに関する考え方って、明確にしておくべきではないかとも思いますし、登場から半世紀を経るのですから話題にしても誰も怒らないんじゃないかなあ。そうでもないのかな。
ということでニコンF2編始まりましたが、まったりやりますね。こう見えても忙しいんですよね。

 

興味深いのは「ニコンF2フォトミック」なのにボディに「F2」と入っているのはシリアルナンバーの前だけということになります。謙虚さにもほどがあるのではと思います。「F」はもうちょい自己主張が強かったですよね。ちなみにF2の文字は化粧箱にデカく書いてあったような。どうだったかな。暇な人調べてください。私は面倒だからイヤです。

 

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