本日のマイカメラ

第15話 キエフ60

2022/12/20
柊サナカ

ものすごく重くて、肩にあとが付くくらい。大きくて、首にかけると前のめりに傾きそう。
そんなカメラなのに、帰省のたびに関西まで持っていくカメラがあります。
何だと思いますか?
わたしのお気に入り、キエフ60です。

 

愛してやまないキエフ60。アルサットC 80mm F2.8を付けました。 

 

この前の「柊サナカのカメラ沼 第15話」で書いた謎のカメラ店で購入したのが、このキエフ60なのですが、そんなに大きくて取り回しが大変なカメラなのに、なぜ帰省に持っていくのだろうと思いますよね。わたしは、このキエフ60のレンズ群がとにかく大好きなのです。
最初に使ったのは、アルサットC 80mm F2.8というレンズでしたが、このアルサットC、カラーで撮ると、色鉛筆で細密画を描いたような、独特な感じに仕上がります。最初に使ってから、もうとりこになってしまって、ここ一番のときには使いたく、キャンプなどにも持参するカメラとなりました。

 

マウントはP6マウント、ペンタコン6マウントです。こちらのペンタコン6も、愛用しているプロの方の写真が素敵で、興味はありましたが、もとよりロシアカメラ好きなわたしは、やはりキエフの方に縁がありました。
巻き上げは妙な感触で、ぐるーりん、としか言いようのないような動きをします。シャッターはゴム引き幕です。バコッ! というような、特徴のある音がします。慌て者のわたくし、いつも忘れそうになりますが、キエフ60のときは、ゆっくり丁寧に最後まで巻き上げるようにしています。丁寧に巻き上げせずに、コマ間が隣同士、くっついてしまったことがあります。

 

上から見たところ。巻き上げレバーがぐるりん、と動きます。 

 

キエフ60は全体的に大きくて重いのですが、特に重いのがTTL露出計付きのアイレベルファインダー部分ではないでしょうか。中のプリズムが重いのでしょう、人を軽く撲殺できそうなほどに重い。露光が正常だと、爆発マーク(としか言いようのないもの)がピカッと点くところも面白い。こちら、シャッターや絞りとは連動していないので、表示を見ながら、数値を自分で合わせます。
TTL露出計付きのアイレベルファインダーは、現在は電池も専用のものを準備できないので、以前はアルミホイルで現行の電池を無理矢理通電させていました。今はさすがに重さがつらいので、ウエストレベルファインダーに換えています。プリズムがない分、軽くなりました。
ちなみにウエストレベルファインダーは、単体で売っていることはなく、カメラ店に行くたび、カメラ市のたびに探しに探して、どこにもなかったところ、知り合いに「そんなときこそeBayですよ」と見つけてもらったものです。上からのぞき込む、二眼レフのような雰囲気で撮影ができます。

 

大きさ比較で缶詰と一緒に。 

 

さっきから重い重いばかり言って恐縮なのですが、重いカメラが好きそうな人に、どのストラップがいいか聞きまわって、ウレタンが入った幅広のオプテックのストラップをつけています。このストラップにより、重みが多少は分散されるような気がします。
6×6で12枚撮影が可能ですが、コマ間の関係か、たまに一枚多く13枚撮れたりすることもあり、そういうところも含めて好きです。
手持ちのレンズはアルサットC 80mm F2.8、これが一番使用頻度も高く、気に入っているレンズです。そのほか、ミール65mm F3.5も。これはアルサットよりも重く、長いレンズなので、気合いの入ったときに。先日の、ギャラリーニエプスで開催された「キエフ展」にもこちらのミールを使いました。中判を辞める方から、フレクトゴン65mm F2.8もいただいたので、今度使ってみようと思います。

 

あと、ゾディアック30mm F3.5も持っています。このゾディアック、名前が気に入っていますが、魚眼レンズのようで、わたしにはあまりに広角すぎて使いどころが難しく、いまだに会心の出来が一枚もないというレンズです。しかしながら、6×6の中判でこのくらいの広角ってまず見かけないですし、ハッセル用のディスタゴン30mmなど、わたしにはとても買えない値段なので、このゾディアックを何とか使いこなしたいところです。例えば歩道橋とか、建物の中とか、森とか、いろいろ使いどころはあると思うのですが、いつも日の丸構図で花を撮るか、謎にものが膨れた、妙な写真になっています。

 

レンズ群、奥からアルサットC 80mm F2.8、左がミール65mm F3.5、右がゾディアック30mm F3.5。

 

正直に言ってしまえば、キエフ60は修理不可能な部分の、致命的な故障もあるらしく、そのためカメラ店によっては、保証が付けられず、現状渡しだったりするので、「キエフ60いいですよ~、どうですか?」とは、大きな声でおすすめしにくいカメラです。

それでもこのカメラには妙な魅力があります。人でもそんな人いますよね? 万能な優等生じゃないけど人気がある人。そんなわけで、ついつい休みになると手が伸びるカメラですね。

 

アルサットC 80mm F2.8で撮った写真。

 

ミール65mm F3.5で撮った写真。

 

ゾディアック30mm F3.5で撮った写真。

 

ゾディアック30mm F3.5で撮った写真、難しいです……。

 

 

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