明けましておめでとうございます。今年もPCTのコラムをどうぞよろしくお願いします。
2025年の今年はライカ100周年、コラムの始まりはライカA型からお送りします。
いただいたものの、長年そのままにしていた不遇のライカA型。
もう8年ほど前になると思いますが、ある方から不動品のライカA型をいただきました。それは貼り革がなく、部品をセロハンテープで留めてある状態で、幕も中で切れているようでした。ありがたくいただいたのですが、当時ライカを持っていなかったわたしにはどうにもできず、さすがにこの状態からは動かないだろうと、かっこいいオブジェとして眺めていました。
内部の部品はセロハンテープで留めている状態でした。
そこから時は流れ、その間、わたしはライカⅢf、M3、M4と、購入したり譲っていただいたりして、ライカを使うようになりました。その間も不動品のライカA型は、相変わらず防湿庫の隅で眠らせていました。
上部はこのような状態でした。
ある日、無理だろうなあと思いつつ、知り合いの修理師の方に見てもらうと、なんとこの状態からでも動くようになるとか。驚きました。ライカなら修理の部品もあるし、修理の手立てもあるそう。ライカなら大抵直る――と教えてもらい、さすがライカだなと思ったものです。
残念ながらエルマー50mmも曇っています。
2025年の今年はライカ100周年、それに合わせて直してもらうというのは、この手元にあるA型にとっても良いことだろうと思って、修理をお願いすることにしました。重修理となるので、いつものオーバーホールよりも少し料金はかかりますが、それでもこの状態から動くようになるなら大助かりです。かっこいい文鎮からかっこいいカメラへ。
ありがたいことに、PCTでこのA型の修理のことを記事にしたいと言ったら、修理中にもいろいろ写真を撮ってくださったので、その写真も合わせて掲載したいと思います。
ライカA型修理のはじまりはじまり。
(ちなみに、わたしは機械の内部を見たり、分解の様子を眺めるのが大好きで、いろんなものの分解をするDVDも買って持っています。美しいですよね!)
これが修理前の様子です。貼り革がない状態です。
レンズも残念ながら曇っている様子。
部品はこんな感じで、セロハンテープで留めてありました。
ファインダーにご注目、なんだか斜めになっているようですね。
だんだん外れていきますよ……。
カメラの中って、けっこう汚れているものなのですね。見たことがなかったので新鮮です。”シャッターボタンがもげてしまったようで、瞬間接着剤で付けた跡があるが、それでも再び折れている”との修理士の方のコメント。瞬間接着剤って、なんとなくわたしはものすごく丈夫なものと思っていて、一度付けたらもう折れないものと思い込んでいましたが、そうでもないのですね。
こちら、”もげてしまったシャッターボタンを溶接したところ”とのコメント。部品の溶接もするんですね! カメラ修理は大変です。
全部品一覧。記事にするということで、部品を並べてくださったところ。壮観です。これだけの部品がきちんと組み合わさってカメラになっているのですね。美しい……。(自分で直せる気はまったくしないです!)
シャッターの仕組み。これで1/500秒を出せるのは、やっぱりすごいなあと思います。
貼り革もこのとおり、綺麗に直してもらいました。
中のシャッター幕が劣化していたため、新しくシャッター幕を作っていただきました。これが中でシャッ!と動いているのだなあと思うと、感慨深いです。
ご覧ください。お風呂の曇りガラスより曇っていたレンズも、中から全部綺麗に。
できあがり! 2024年に再び蘇ったライカA型、いままでこのA型はどんな歴史を歩んできたのでしょう。これからはわたしが大事に使います!
単なる部品の集まり、という感じがしていた不動品が、いまやキビキビ動くように。ファインダーも、どこもかしこもピカピカになって、貼り革も巻いてもらってすっかり完動品になりました。その場でフィルムの入れ方を教えてもらって、さっそく撮り回ってみました。目測ですが、わたしはローライ35などの目測カメラで慣れていたので、それほど困りません。なんという軽快な使い心地!
美しい佇まい。修理をお願いして本当に良かったです。
やっぱり、カメラにはいつ出会うかというタイミングがあって、もし最初にこのA型の完動品と出会っていたら、その良さがあまりわからなかったかもしれません。目測にもある程度慣れて、Ⅲf、M3、M4と使ってライカに慣れてきた今、我ながらベストなタイミングで修理してもらったなと思います。
上部も美しく。ファインダーもとても見やすくなっています。
ライカA型には、レンズとしてエルマー50mmがついており、取り外しはできません。沈胴させたらとても薄くなります。ストラップをつける金具はないのですが、小さなカメラポーチからすっと出し、またしまう感じで使ってみると、とても使いやすいことに驚きました。
A型ができてから百年。使う前は、百年前のカメラって、多分、そんなに使い心地が良くないだろうし、半分オブジェみたいなものかもしれないな、と身構えていましたが、これなら毎日撮り歩いてみたい。新しい相棒として末永く愛用したいと思います。今日も撮っていますよ。
修理という仕事は尊い。これであと二百年は大丈夫そう。未来に託していきましょう
フイルム一本目の写真はこちらです。好きな写りです。写真とA型を使用してみた感想に関しては、来月に詳しくお伝えします。
街角。(LeicaA ,elmar50mm ,f5.6, 1/500, Kodakgold200)
ワインの瓶。(LeicaA ,elmar50mm ,f5.6, 1/500, Kodakgold200)
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