CONTAX 139 Quartz。この通り、Tessar2.8/45を付けた時のしっくりした感じ、気に入っています。軽快にサクラストラップのハンドストラップをつけて歩くのが好きです。
ところで、カメラ修理――というと、素人が手を出して結局うまく直らず、ひどいことになっている個体も多くあるようで、プロ修理士の皆さんの嘆きのつぶやきを見かけることがあります。拙著「谷中レトロカメラ店の謎日和 フィルム、時を止める魔法」(二巻)でも、分解されて元に戻せなかったコンタックスの修理に難儀をするという話「その客は三度現れる」を書いたことがあります。
わたしは以前、日本カメラ博物館でやっていたワークショップ、「カメラ分解教室」に参加したことがあって、小さなネジをピン! と飛ばしまくり、磁石で必死になって探すことを二度ほど繰り返した上に、結局時間内に元に戻せず、(むいていない)とはっきりわかりました。カメラは精密機器ですものね、ここはいさぎよくプロに任せるのが一番です。
コンタックスには、大文字のCONTAXと、小文字のContaxがあります。少し前に小文字である、レンジファインダー機のContax Ⅱaを紹介しました→ https://photoandculture-tokyo.com/contents.php?i=2640。本日は、大文字の方のCONTAX、コンタックス139クォーツを紹介したいと思います。
上から。手になじみやすい大きさ、カメラらしいカメラですよね。
このコンタックス139クォーツには思い出があります。某カメラ雑誌編集部で大掃除をしたときに出てきたカメラで、それをいただいたものです。動作はきびきびしていましたが、もらった当時は貼り革がほとんどはがれていて、中のモルトもボロボロになっている状態でした。
モルトというのは、カメラ内部に光が入らないようにするために遮光する、黒いスポンジのようなもので、経年劣化すると触っただけでネトネトと溶けたり、ごっそり外れたりします。モルトがネトネトになったカメラは、まずカメラ店の店頭では見かけないと思いますが、どこかの家から出てきたようなカメラでは、中身のモルトがボロボロと崩れてくるといったことも多くあります。遮光ができないと、フィルムにも光が入ってしまって、写真がダメになるのです。
内部。この、光が入りそうなところ全体にモルトという、植毛されたシールのようなものを貼っていきます。ミラーのところにも貼りました。大きさがぴったり合うのはありがたい。
内部の機構の修理はさすがに無理でも、モルトや貼り革程度なら自分で貼れたりしないかと思いつきました。とはいえカメラの形は複雑ですから、貼り革を自分で切ってうまく貼れるような器用さはまったく持ち合わせておりません。
探してみたところ、カメラ貼り替え革専科Aki-Asahiというお店を見つけました。(→http://www.aki-asahi.com/)この店では、あらかじめカメラの形に合わせてカットしているモルトや貼り革を販売してくれています。こちらでコンタックス139クォーツ用のキットを購入しました。革もいろいろな色や素材があって楽しいので、今度はリザード調にしようかな、もっと明るい色にしてみようかな、などの楽しみもあると思います。わたしは紺にしましたが、やはり自分で貼り革を貼ると、カメラに特別な愛着が生まれるものですね。
ななめから。この紺の貼り革はわたくしが貼りました。
後ろから。丁寧に貼ったつもりが、やはりところどころずれていたりするので、プロの仕事とはすごいものだと改めて思いました。
こちらのコンタックス139クォーツ、1979年発売だそう。新聞社で記者として長年おつとめだったベテランの方も長らく処分せずに手元に残していたくらい、なかなか魅力的なカメラなのです。まずコンパクトなこと。わたしは毎回カメラの記事に「このカメラはコンパクトで~」「コンパクトで大変よろしいです」などと書いていますが、重い荷物が身体にこたえる今は、小さいカメラはそれだけで嬉しいものです。ちなみに大判カメラも持っていますが、持ち運ぶ元気は二年に一回くらいしか出ないです。
この小さいコンタックス139クォーツに、これまた薄型のテッサー2.8/45をつけると、もうそれだけで旅の相棒一眼レフとしてはもってこいなのです。露出計内蔵というのも嬉しい。AE機能によってシャッター速度が決まりますが、そのシャッタースピードはファインダー内のLEDのランプで確認できるようになっています。昨今のデジタルカメラの多彩な機能に慣れてしまっていると、あまりにもカメラとしての機能が少ないように思えるかもしれませんが、撮ると言うことに関しては、機能に過不足ありません。(本当、カメラってこういうのでいいんだよね)と思えるカメラではないでしょうか。
コンタックスと言えば一時、Ariaの人気がすさまじく、有名ブロガーの方がこぞって使っていた印象があります。そのため価格も高止まりといった影ですが、こちらの139クォーツもなかなか良いカメラである、ということはお伝えしたいですね。編集部の隅の部屋で忘れられながらも、いまなお故障なく使えていることも素晴らしい点です。まだまだ活躍してくれるだろうと思います。
大洗磯前神社、神磯の鳥居。(CONTAX 139 Quartz,Tessar2.8/45, f5.6, 1/500, KodakGold200)
大洗の漁港(CONTAX 139 Quartz,Tessar2.8/45, f5.6, 1/500, KodakGold200)
手持ちで頑張る雪の日。(CONTAX 139 Quartz,Tessar2.8/45, f2.8, 1/30 KodakGold200)
いちごがり(CONTAX 139 Quartz,Tessar2.8/45, f5.6, 1/500, KodakGold200)
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