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本日のマイカメラ

第23話 コンタックスⅡa

2023/08/08
柊サナカ

コンタックスには、大文字のCONTAXと、小文字のContaxがあります。今日ご紹介するわたしのコンタックスは小文字の方、レンジファインダー機のContax Ⅱaです。シャッタースピードの目盛りがカラー表示のカラーダイヤルなので、1954年(昭和29年)ごろに作られたカメラということです。
 
コンタックスと言えば、かつてお兄様が満州国で記者をなさっていたという方に、カメラのお話を伺う機会がありました。その方によると、当時、ライカよりもコンタックスがよく写った――と言い、実際に記者のお兄様も、ゾナーを付けたコンタックスを愛用なさっていたようです。当時は超高級機だったので、そのカメラを持っていると、方々で特別な扱いを受けたのだとか。写りに関しては、あくまでもその記者の方個人の意見なので、どちらがいいなどを客観的に判断できるものではないとは思いますが、戦前コンタックスを実用機として使っていたのだなということがわかります。
 
とはいえわたし自身はコンタックスには縁が無いだろうと考えていました。なぜなら、すでにキエフⅡaを愛用していたからです。(→https://photoandculture-tokyo.com/contents.php?i=650
 

革のカバーも綺麗です。

 

ところがフィルムカメラを卒業なさるという方がいらして、縁あってコンタックスⅡaをわたしが引き継ぐこととなりました。

キエフがあるから、まあだいたい同じかなと考えていたのです。 

キエフⅡaはキエフⅡaで好きです。ちょっとミシミシしたり、ちょっと裏蓋が浮いているようなところがあるのですが、たまにすごい写りをするので愛用しています。趣や愛嬌があるような気がします。
 

ところがこのコンタックスⅡaを使ってみると……? やはりすごいなと思ったのです。
 

まず、重さから違います。キエフよりもだいぶ重い。みっしりとした金属の重みを感じます。どこもギシギシせずなめらかで、裏蓋もぴたっと閉まります。ライカに比べ、ボディが曲線ではなく、角張っているのはキエフも同じですが、このクロームの部分のマットな感触は、いつまでも触っていたくなるような高級感のある手触りです。
 

何よりわたしがいいな! と思ったのが、このカール・ツァイスのロゴのフォントです。このロゴを真似して、HIIRAGI SANAKAとロゴでも作ろうかと思いましたが、この味のあるフォントは真似できませんでした。

 

一番気に入っているのがこちらのキャップのロゴ。

 


斜め上から。角ばっているボディですが持ちやすいです。 


わたしはライカについても小説「谷中レトロカメラ店の謎日和」シリーズで書きましたが、このコンタックスに関しても書いたことがあります。二巻である「谷中レトロカメラ店の謎日和 フィルム、時を止める魔法」の第四章「その客は三度現れる」です。
 

「修理人が一番困るのが、バラバラに分解されて戻せなくなったカメラ」ということで、部品のひとつまですべて分解されて部品の山になったコンタックスⅡaが、まるごとガサリと中古カメラ店に「修理してほしい」と、持ち込まれます。客は、どうにかこのカメラを元に戻してくれ、と言うのです。店主がものすごく苦労してコンタックスⅡaを直したら、またそのコンタックスⅡaが分解され持ち込まれます。また直したら、また分解されてしまったコンタックスⅡaが持ち込まれて――

というストーリーです。そのカメラにどんな謎があったのかは、ぜひ「谷中レトロカメラ店の謎日和 フィルム、時を止める魔法」を読んでいただきたい。
 

この話を書くときに、分解されて持ち込まれたときに、修理人が嫌になってしまうカメラ、困り果ててしまうカメラは何か――と言うことで調べ、日本カメラ博物館の学芸員さんにも相談して、コンタックスⅡaにしました。
そのコンタックスⅡaを自分で使うことになるとは、と思うと感慨深いですね。

 


特徴的な鎧戸シャッター。いい音がします。 

 

コンタックスの内部で一番特徴的なのは、シャッターです。ライカが布の幕を横に巻き取っていくのに比べ、コンタックスのシャッターは鎧戸シャッターです。組み合わさった金属部品が、商店街のシャッターのように縦に開きます。

 

布幕が横に動いて光を通す仕組みはなんとなく理解できても、この鎧戸シャッターが、ゼンマイやギアを駆使して縦に開くしくみは、内部の機構の解説書を見ても、(すごいなあ……)と感心します。「うちはライカさんとことは、思想から何から違いますからねえ?」と京都弁で言わんばかりです。シャッタースピードも、1/1000秒かなと何となく思っていたら、1/1250秒なのにも驚きました。横長の長方形があるとして、横より縦の方が短いので、その分シャッタースピードを速くできたそうですね。

 


シャッタースピード部分がカラー表示です。 

 

ライカを使う時に心配なのが、布幕が太陽光で焼けてしまうことです。ちょっと西日の強い日などに、不用意にレンズを太陽の方へ向けたりすると、黒い布幕が虫眼鏡の実験みたいに焼けて穴が開いてしまうのです。現にわたしが手に入れたライカも、幕の隅っこに小さな穴が開いていて、初期不良対応で直してもらったことがあります。コンタックスの鎧戸シャッターは金属なので、その心配がありません。
 

キエフの方も同じ鎧戸シャッターですが、「チュイー!」とネズミのように鳴いて可愛いです。こちらのコンタックスは静かな音がします。

 

裏面。スッキリした中に型押しのロゴが渋い。

底面。しっかりとまってがたつきはありません。

 


裏蓋は完全に外れます。 

 

さっそくフィルムを装填してみます。裏蓋は全部お弁当箱のようにかぱっと外れます。

わたしのコンタックスⅡaのレンズはビオゴンです。気をつけることは、巻き上げ前にシャッター速度を変えること(巻き上げ後はシャッターに負担がかかり、壊れてしまうとか?)。
 

ピントは、右にあるギアで合わせます。二重像がぴたりと重なったら合っているということ。このギアもびっくりするくらいするする動いて気持ちが良いです。慣れていないと距離計窓を指で塞ぎがちなので、わたしがコンタックスⅡaを使う時には、指でお金マークを作っている人のように中指、薬指、小指がピンと立っているのでちょっと不自然です。
 
撮り終わると巻き戻しますが、コンタックスに関して言えば、フィルムの巻きはじめがしっかりセットされるので、巻き終わってもフィルムの先が自然とスプールから外れるということがなく、そのままはさまったままです。最初これでいいのか、もしかして故障したのかと焦りました。まあ、ベロの先まで巻き込んでしまって、あとでフィルムピッカーで出さなければならない……ということもないので、この形もいいですね。
 

写りを見て、コンタックスⅡa+ビオゴンをすっかり気に入りました。キエフやライカを使った後に、コンタックスⅡaを手に入れられたことで、それぞれの良さや設計思想の違いが実感でき、このタイミングで使うことができて良かったと思います。これからも愛用します!

 

街角(Contax Ⅱa,biogon35mm,f2.8,1/60,Kodak gold200)

 

空(Contax Ⅱa,biogon35mm,f8,1/1250,Kodak gold200)

 

地下鉄(Contax Ⅱa,biogon35mm,f2.8,1/60,Kodak gold200)

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